新しき大地の詩
最終話です。
七神は告げる
人の世を創りし者を
人の世に必用な物を
七神は告げる
最も尊ぶべき想いを
最も憎むべき想いを
七神は告げる
彼等の罪への罰を
彼等の償いの道を
七神は告げる
あの国の末路を
この国の新しき歩みを
七神は告げる
七神は告げる
~神々の叙事詩り
信託の詩
神官宿舎から都へ向かった神々を、兵士達が出迎えた。剣を持ち、対峙しようとしている輩に、神々に仕える精霊騎士達が答える。
他の精霊騎士の纏め役の彼等、八人に適う人間はいない。
闇の騎士と光の騎士、焔の騎士と水の騎士、空の騎士と風の騎士、時の騎士と大地の騎士。
それぞれ違う属性なれど、彼等の結束とその力は強かった。特に、闇の騎士と光の騎士の剣技は、兵士達の剣技等、足元にも及ばない。
「…何か、凄いな。ルシナリスもそうだけど、闇の騎士って奴も凄い。」
独り言を言っているリュナンへ、他の精霊騎士から声が掛った。
「アレストは精霊騎士の中でも、1・2を争う、担い手ですから。
大地の騎士殿は、初めてお会いになったのですか?」
青色の髪の騎士…水の騎士に声を掛けられ、頷きながら、敵を制して行く。
ウォーレと名乗った水の騎士の腕も相当なもので、話しながらもリュナンと同じく、敵を伸す事を止めない。
他の精霊騎士も、何かと話しながら、余裕で敵を倒している。
人間と精霊の剣技の差は、かなりの物であると、辺りに知らしめていた。
彼等が開いた血路を、七神が歩いて行く。倒れている兵士には、目もくれず、彼等は王宮へと歩みを進めるが、その姿を都の住人は、遠目で見ていた。
先頭を行くのは、金髪の男性。あの広場で詠っていた吟遊詩人だったが、その手にはあの竪琴、そして、右腰には竪琴と同じ色の剣を帯びている。
光の竪琴と剣と気付いた者は、その場で神に捧げる敬礼をし、あの吟遊詩人が無事であった事に安堵していた。
その左傍に寄り添うように、大地の女神が歩いている。
怪我をし、道端に倒れている人間を見ては、悲しげな表情を浮かべる。そんな彼女に気が付いたジェスクは、手を差し伸べた。
その手に誘われ、リュースは彼の腕に絡みつく。悲しみを押し殺す様に、強く腕をからませる彼女に、ジェスクは囁いた。
「リュー、我慢しなくて良い。辛いのなら、目を伏せても良いのだから。」
その言葉にリュースは首を振り、断言をする。
「これは、私が不甲斐無いが故に、起こった事です。目を逸らす訳にはいきません。」
「なら、私が支えになろう。リューが、しっかり見つめられる様に…。」
掛けられた優しい言葉に、リュースは微笑んだ。自分の夫として選んだ光の神が、傲慢で無く、優しい心と、思いやれる心を持つ者と確信出来た。
彼女自身を理解し、尊重してくれる。その心が嬉しかった。
「…リューとジェスの奴…またやってやがる…。」
頭を抱えるクリフラールに、アークリダが話しかける。
「ラール、妻を支えるのは、夫の役目ですよ。
まあ、傍目から見れば、いちゃついているようにしか、見えませんがね。」
「本当にジェスなら、リューを大切にしてくれそうですね。」
「ほんと、リューとジェスって、お似合いね♪」
殺伐としている中、小声で囁かれている事は場違いで、仄々とした物である。
ウェーニスとフレィリーの止に、クリフラールも苦笑した。確かにジェスクなら、リュースを大事にする保証は出来る。
アークリダと同じく、慈しみの心を持つ者であるジェスクを、彼は良く知っている。
曲がった事は大嫌いで、真っ直ぐな弟。
悪戯好きで、堅苦しい事が苦手。
強制される事が大嫌いで、常に自由を求める者。
それがクリフラールとアークリダの、ジェスク認識であった。
目の前の光と大地の神々の姿で、溜息を吐くクリフラールの腕に、細い腕が絡みつく。
「羨ましいのですか?なら、こうしましょうか?」
悪戯っぽく笑って、彼の腕に寄り添う、アークリダ。その様子に、ウェーニスは気が付いた。
「…ラール、水臭いですよ。
リダと婚姻を結んだのなら、言ってくれればいいじゃないですか。」
「…………まだだ………、口説いてもいない。」
「そうよね、私が口説いている最中なのよ。
全く、何時も無視して、そっぽを向くんだから。」
アークリダの暴露に、ウェーニスは納得し、覚悟を決める様に意見していた。後ろでは、何かしら知たり顔の、フェーニスが忍び笑いをしていた。
王宮前の広場に着いた彼等は、そこで王宮に仕える者達の出迎えにあった。
精鋭らしい騎士達を従えた彼等は、ジェスクの姿を見つけ、声を上げる。
「我等の王を葬りし、罪人よ。速やかに罪を認め、投獄せよ。」
彼等の言い草に、精霊騎士達は元より、七神までも眉を潜めた。
目の前の光の神を、罪人と称した愚か者。
己の利益しか求めない馬鹿者共に、七神の瞳は冷たい物となる。特に罪人と称された光の神の目は、制裁者のそれとなる。
神々の纏う気が、冷たく厳しい物へ変った事を悟った精霊騎士達は、剣を携えたまま、その後ろへ控える。
「我を罪人とは…愚かな人間よな。」
低く冷たい光の神の声が響く。
吟遊詩人の時とは格段に違う、口調と態度。纏う気も人間のそれで無く、神の物。
服装は敢えて、そのままにしているジェスクだったが、余りの愚かさで溜息を吐き、一瞬にして変る。白地に、金と銀の装飾…金色の太陽と銀色の月が飾る騎士服。
右腰に帯びるは、白き光の輝石で出来た、銀の月と金の太陽が装飾された光の剣。
手には光の精霊の竪琴と偽っていたが、本来剣と同じ輝石で出来ている、間違う事の無い輝きを取り戻した光の竪琴。
額と耳にも太陽と月の装飾、長靴にも同じ装飾…
光の神・ジェスク神としての装いに、王宮の者達は目を見張った。
まさか、自分達の王を葬った吟遊詩人が、光の神とは思わなかったのだ。
言葉を失くす彼等に、ジェスクは追い打ちを掛ける。
「大地の女神を攫い、無理矢理、婚姻に持ち込もうとした王を止めもせず、只、見ているだけだったそなた達に、我等の慈悲は無いと思え。
罪無き吟遊詩人を葬り去った事も、止めなかった様だな。
彼等は、神殿の預かり。故に、罪の無き彼等を葬る事は、神々に牙を向ける事と同じだ。」
怒気を交えた神気に、王宮の者達は動けなくなった。
怒りの矛先を向けられている彼等に、逃げ道は無い。
ましてや、目の前の神々に逆らう事すら、出来無い。抑える事の無い、七神の怒気を受けては、彼等に創られし者である人間など、身動き一つ出来無いのだ。
「さてと、お前達への罰だが…ジェス、リュー、当事者の意見が聞きたい。何が良い♪」
鼻歌が聞こえて来そうな声の、クリフラールに、ジェスクは楽しげに答えた。
「そうだな……繰り返す転生の中に、罰を加えるか、永遠の命を与え、周りが変わっても自分だけ変わらずに、生き続けるか…だな。
身内や知り合いが誰もいなくなって、一人だけになって生き続ける…か、生まれ変わる度、己の罪を自覚し、その償いを義務付けられる…か。」
二択の選択に、彼等は震え上がった。
どちらも、神々が施す、最大の罰と言われる物。それが己の身に、降りかかろうとしている。
蒼褪めて慈悲を乞おうとも、それを許さないかの様に、身動き出来無い。
いや、許していないのだと気付く。
二人の神の言葉を受けた他の神、時の神と闇の神が口を開いた。
「では、彼等の半数を、転生の罰を枷ましょう。残りの半数は、永遠の苦しみを。」
「ついでに、安息からの永遠の追放とします。闇は、貴方々から安らぎを奪います。
…ジェス、リュー、それで良いかしら?」
頷く二人に、時の神・フェーニスは自分の神子であるキャナサを呼び寄せ、彼等に転生の罰を与え、自らも時の罰を与えた。
闇の神・アークリダは、彼等全てに、闇の安息を奪う罰を与えた。
眠むる休息、闇の安らぎを許されない罰…闇の罰で最も重い物。
そして、七神は、この国を解体した。
新しい国として、生まれ変わる事を促す為、今までの支配階級は追放し、新しい指導者が出るまでは、神殿の預かりとした。この事は、一時的だが、七神が直接支配する国となる事を意味する。
だがそれは、この国を纏められる者が生まれ、育つまでの間だけ。
王宮を失った都は、衰退するかの様に見えたが、神殿と神々の恩恵で昔より更に賑わいをみせた。
廃れてしまった大地の神を祀る神殿は、新たな大地の聖地をその地に抱き、光の神と大地の神の婚姻の地として、再発展して行く。
新しい指導者を待つばかりの国は、今まだ神々の懐で眠っている。
国を治め、導く者が生まれるのは、また別の話。
それまで、この国は神殿が護り、神々の繋がりを深めていく………。
この話で、完結となります。短い間でしたが、読んで頂いた方、有難うございます。




