七神の降臨の詩
彼等は知る
彼等の王が招いた崩壊を
彼等の将が招いた厄災を
彼等は知る
大地の神の憂いを
光の神の怒りを
彼等は知る
初めの七神の存在を
初めの七神の断罪を
彼等は知る
王宮に招いた者の正体を
王宮で起こっていた真実を
彼等は知る
~神々の叙事詩より
真実の詩
神官住居の周りの、草むらにいる人々と精霊は、大きな神の気が集まるのを感じた。
大地と光は元より、闇、空、水、炎…ともう一つ、神の気だとは判るのだが、その正体の知れない気があった。集まった気は、徐々に怪我人達の許に近付き、その姿を現す。
闇を纏う者、昼と夜を具現化したような者、水を纏う者と炎を纏う者、白き羽根を持つ者、そして、大地を纏う者と光を纏う者…。
大地の女神の傍に、あの吟遊詩人がいたが、その纏う気は人間では無く、神の気…光の物だった。
彼の髪は先程までと違い、光の精霊と同じ…いや、それ以上に、金色の輝きを放っている。
服装はそのままであったが、腰には光の剣、その腕には光の竪琴が、ここぞとばかりに、白き輝きを増していた。そして、未だ光の精霊達は、跪いている。それもその筈、彼等の主である神の御前で、最敬礼しない者はいない。
彼等の傍にいる大地の騎士達は、見知った吟遊詩人の変貌に、驚きを隠せなかった。
光の神と同じ名前の吟遊詩人では無く、本人である神自身。
その事実を目の当たりにし、彼等と共に戦った光の精霊騎士の言葉を思い出した。
大地の女神が再び、囚われようとしていた事態を何故、光の神が知ったのか、その質問を戦が終ってから、彼等の主に聞けと言ったのか、理解した。
リュースを救った吟遊詩人のジェスクが、彼等の主であり、光の神である事…
それが全ての答えだったのだ。
近付く神々に、大地の騎士達も跪いた。
彼等の主である大地の女神も、そこに居た為に……。
七神がそこに着くと、神の降臨に気が付いたラムゼ神官以下、大地の騎士達が出迎えていた。
彼等はリュースに向かい敬礼をし、彼女の言葉を待った。リュースは彼等に向かい、言葉を掛ける。
「この度の騒動で、ここに初めの七神が集いました。
これから罪深き人々に、我等からの罰を与えます。…心して聞く様に。」
ジェスクの傍らで、何時の間にか手を離したリュースの言葉に、他の七神も頷く。
初めに口を開いたのは、昼と夜を具現化したような神…クリフラールだった。
「其処で怪我を追っている者、お前達の仕出かした事は、己で理解出来ているか?」
指摘された事柄に、彼等は無言になり、頷く者と下を向くばかりの者に別れる。
反応を見たクリフラールは、続けた。
「大体は、理解出来ている様で結構だ。
大地を育み、実らせる者…お前達の言葉でいう大地の女神を拉致し、強制的に婚姻をさせようなど、愚かしい真似をした事は理解したみたいだな。
ついでに、擬態しているからとは言え、光の神を葬ろうなどと、愚かな行いをした事も判っているだろう?」
告げられた言葉に彼等は頭を上げ、大地の女神の傍らにいる人物を見つめた。
腕にあるのは、あの吟遊詩人と同じ竪琴だった。
白く光る竪琴は、容易に真似を出来る作りでは無かった為、件の吟遊詩人の物が、光の神の腕にあると判る。
然も、吟遊詩人と目の前の光の神は、同じ顔…青い瞳は厳しい光を宿しているが、その作りは全く同じであった。只…頭を覆う髪は、その光を増していたが…。
更に無言になる彼等に、今度はジェスクが声を掛ける。
「判っている様だな。将たる者が、己の邪悪なる闇に身を落とした者だとしても、そなた達の犯した罪は変わらぬ。
そなた達の王が、他の罪の無い、吟遊詩人の命を奪った罪も理解しているか?」
彼の言葉で王宮の裏口から、帰って行ったという吟遊詩人の末路を彼等は悟った。生きて帰ったのでは無く、命を失って出て行ったのだと。
慈悲を乞う声は、彼等から上がらなかった。
罪を意識しながら、従わざる負えなかった彼等に、七神の恩恵は期待出来無い。
人質を取られている者もいただろうが、これを覆す方法は有ったのだから……。
彼等の様子に七神は、罪の意識がある事を確信した。
それを知った上での処罰…、彼等の償う事柄を告げる。
「そなた達は全て、剣を捨てて、神殿の神官として、一から学ぶが良い。
何、場所は我等が提供する故、心配するな。」
騎士として、剣士として一番苦しい選択を、ジェスクは彼等に言い放つ。
二度と剣を持てないと判ると、彼等は落胆した。
剣を持つ事を誇りに思っている輩には、一番の罰である事を、剣を振るうジェスクとクリフラールは知っていた。だからこそ、敢えて、この罰を言い渡した。
「ああ、そうだ、剣を持とうとすると、それなりの痛みがあるから、覚悟するように。
護られる側の気持ちを知る事も、大切だからな。
それを知らない者が剣を振るうなんて…烏滸がましい。」
怒りを込めて、言い放つクリフラールに、周りの騎士達も頷いた。
彼等もまた、護る者の為に剣を振るう者。
光の騎士や大地の騎士とて、神々の創った世界を護りたいが為、邪悪なモノと戦う意思を示している。王宮の騎士の中にも、多少は同じ考えの者もいた様で、彼等も頷いていた。
彼等が護りたかったのは、都の人々。
だが、出来無かった事実と、今、その手段を剥奪された事は痛手だった。
「畏れ多くも、七神様に申し上げたい事があります。」
先程の、クリフラールの意見に頷いた騎士の中から、声が上がった。その声に、意見の述べる様、クリフラールは促した。
「何か、言いたい事があるのなら、聞くが…無駄な言い訳なら、この場で切り捨てるが…良いか?」
左腰にある空の剣に手を掛けながら、脅しにも似た返事を返すかの神へ、恐れる事無くその者は告げた。
「我等の中には、仕方無く従った者もいます。都の者達を護りたい、その一心で王宮に仕えた者達…彼等が剣を失えば、どうやって、都の者達を護れば良いのでしょうか?
我等がした事を思えば、御慈悲をとは言い難いのですが、如何か、都の者達を護る事の出来る者を…。」
「それに関しては、心配は無い。我等が新たに選出した者を、当たらせる。
剣を失った者は、神官として彼等を護れば良い。…出来る事だと思うが…。」
暗に、神官として、神を頼れとも取れるクリフラールの言葉に、声を上げた者は深々と頭を垂れた。
剣士では無く、神官として民人を護れと命じられたのだ。
剣を持たなくとも、民人を護れる…その方法は、後に、他の神官から教えられる事となる。
怪我を負った王宮の騎士達は、彼ら七神が呼び寄せた精霊騎士達によって、七神がこの神官宿舎に帰るまで、監視される事となった。
水と炎、空と風、闇と時の精霊騎士達が集い、神官宿舎は一層、賑やかになる。
その様子を跡目に、この地を襲った者達の処罰を終えた七神は、最終の目的…王宮のそれに向かう事にした。
風は、七神の行く方を導き、神を蔑にした巣窟へ、破滅の知らせを届けているかの様に強く、吹き荒れていた。




