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このアイドル、どこかおかしい。一人だけ、笑っていない。  作者: Nagiousen


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98/113

第98話 終わりのはじまり

——次の曲へ移った。




「はじまりの続き」。




新体制七人の——決意を歌う曲だった。




大阪城ホール——本編、そしてこのアンコールで。


最も——重要な意味を持つ、一曲だった。




イントロが——流れ始めた。




苺が——最初のフレーズを、歌った。




「ここから——始まる」




サビの——歌詞。




これまでの——七人の物語を、次のステージへ繋ぐための言葉。


全国ツアーへ——武道館へ——向かう決意を乗せたフレーズ。




客席が——それに、応えるように、光を、揺らした。




桃霞も——歌っていた。


声は——出ていた。


音程も——外れていなかった。


体は——振り付け通りに、動いていた。




だが——桃霞の心の中では。


まったく——違う言葉が、響いていた。




(ここから——始まる)




七人の——声がそう、歌うその真下で。




(終わりが——始まった)




桃霞の——心だけが、そう叫んでいた。




(私は——これからも)


(みんなと一緒に——いられるの、だろうか)




さっきまで——自分は、六人を守ったと思っていた。


だが——今、自分がしたことの正体が、少しずつはっきりしてきていた。




八百年——受け継がれてきた力。


それを——初めて使った。




その——代償として。


自分の中の何かが——確かに変わってしまった。




(この力は——なんだろう)


(私は——なんなんだろう)




歌詞が——続いていく。




「未来へ——向かって」


「七色の——光と一緒に」




美しい——言葉だった。


希望に——満ちたフレーズだった。




だが——桃霞の中では。


その——言葉一つ一つが、遠い他人事のように響いていた。




(未来——私に、それがあるのだろうか)


(七色の——中に私はまだ、いられるのだろうか)




歌いながら——桃霞は、両手を見た。


振り付けの——一部として。




観客からは——ダンスの一環にしか見えなかった。




だが——桃霞自身には。


その手の中に——まだ残る感触が。


すべての意味を——塗り替えていた。




骨の——軋む音。


呻き声。




自分が——引き受けた痛み。


そして——自分が与えた痛み。




(守るために——始めたはずなのに)


(今私は——何を、守れているんだろう)




歌が——サビへ戻った。


七人の——声が重なった。


美しい——ハーモニーだった。




客席は——歓喜していた。


七色の——光が大きく揺れていた。




誰もが——この瞬間の輝きを、疑っていなかった。




ただ——桃霞だけが。


その輝きの——真ん中で。


静かに——沈んでいた。




(始まりの——歌なのに)


(私だけ——終わりを感じてる)




その対比だけが——桃霞の中で、鮮明になっていった。




誰にも——気づかれないまま。


誰にも——言えないまま。




歌は——最後のサビへ、向かっていった。


桃霞の——声は、途切れなかった。


体も——止まらなかった。




だが——その内側で。


一人の——少女が、静かに迷子になっていた。





つづく…




▼登場人物のイラストをpixivで公開中


https://www.pixiv.net/artworks/144793121

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