↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親方、空からゴーレムがっ⁉︎ ―人類史における天空宮に関する記述の抜粋―  作者: 笠本


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/30

14 終戦『五大陸釣り紀行 ~ロット・マクレガー回顧録~』

『ヴァルデン帝国陸軍 第7軍団 作戦命令書 第114号』AE1241年3月7日 発令


「白鷲の翼(シュヴィンゲ)作戦」発動命令


1、状況および企図

 白鷲の通過に伴う敵軍の警戒弛緩を利用し、ハルツ平原北部戦線において決定的打撃を与え、膠着せる戦況を打開する。



2、各部隊の任務および実施要領


第3航空隊:

 1241.03.07/12:10をもってゴルダJu-2爆撃機6機を指定空域(座標X-42〜X-46)へ進出させよ。座標X-40を白鷲の影下で通過することで機体を欺瞞し敵の対空監視網を突破すること。しかるのち指定空域で敵第一線陣地を爆撃せよ。


第11重砲兵大隊:

 白鷲が東側進行境界線座標F-30ラインを越えた時点で直ちに砲の偽装を解除せよ。第3航空隊の爆撃開始に呼応し、敵後方支援陣地(座標X-48一帯)に対する砲撃を開始すること白鷲の影の境界線を射撃諸元の基準として算出し、敵陣地を制圧せよ。


第1歩兵師団および第2機甲大隊:

 砲撃部隊が形成する弾幕に追随してただちに前進し、混乱状態にある敵縦深部を蹂躙・突破せよ。



3、総括

 敵は白鷲通過時の本攻撃を完全に想定していない。奇襲効果は絶対であり、本作戦の成功をもって北部戦線における我が軍の勝利は確実なものとなる。各員、帝国のために奮迅せよ。


   第7軍団司令官

   中将ハインリヒ・フォン・グラウ


(以下、命令書の余白に残されていた鉛筆の走り書き)


コードネームは白鷲か、お笑いだな。

有史以来の神の眼差しの下の不戦の禁忌を破り、神の影を砲撃の目盛りに使い、爆撃機の隠蔽にする。

今更名前を取り繕ってどうする。心配せずとも天上の神は雲の下には関心などないさ。


勝てるだろう。この作戦は間違いなく成功する。だがヴァルデンはこれで終わりだ。

私がこの作戦にサインをしたせいで。


神が見ていないのなら後世が見ていてくれ。


(アネニス合衆国国立公文書館収蔵)

※余白の文字は筆跡鑑定により、ヴァルデン帝国陸軍第7軍団司令官ハインリヒ中将本人のものと確定している。ハインリヒ中将は当作戦において負傷し、後にアネニス軍捕虜収容所にて死亡。





『五大陸釣り紀行 ~ロット・マクレガー回顧録~』


 マクレガー家の男は軍隊に入るものだという父との対立は、最終的に私が海軍に入ることで妥協へと至った。


 その最初の赴任地が大洋の真ん中のカルタ島であったのは間違いなく魚の精霊のもたらした至上の幸運であった。

 カルタ島での軍の任務は高度に政治的な状況によって、端的に言えばただそこにいるだけというものであった。


 当然、私は溢れんばかりの愛国心からこの重大な任務に腰を据えて取り組むべく、毎日のように波止場に通い釣りに精を出した。


 赤道直下の透明な海に潜む連中は色鮮やかに宝石のようであるのに、その駆け引きの様はあまりに暴力的で獣の本能を思わせるほどであった。釣り竿ごと海中に引きずり込まれたのも一度や二度ではなく、補給の乏しい島であるのでこれには難儀した。


 ともあれ私はそうして釣り生活を漫喫していたわけだが、傍らにはよく一人の少年が座っていた。いつの頃にかゴルディス大陸から下働きとして連れてこられたマルノという子供だった。

 彼はよく私の真似をして手製の仕掛けを海に投げ入れていたが、釣りの才能は絶望的なまでに無かった。十回投げれば八回は海底の岩に針を引っ掛け、べそをかきながら糸を切っていた。

 だが彼には神に与えられた別の才能があった。島に自生する、口が曲がるほど酸っぱくて不味い果実を集めて酒に醸すという御業が。


 そんなわけで私の釣果の多くは結局はマルノの物になっていたわけだが、ある日その彼が走り寄って私を呼んだ。

 波止場の小屋に置いてある軍用ラジオから人の声がするというのだ。


 本土はもとよりゴルディス大陸からも他の島からすらもはるかに離れてるこの島でラジオが音を拾うのは夏の風物詩であった。

 それはラジオノイズという現象であって、発せられた電波が上空の電離層で反射して遠距離まで届くという理屈である。自然界では偶然に偶然が重ならねばならないが、間に挟まるのが天柱雲であればシイツフィッシュが回遊するのと同じくらいに季節ごとに起こる現象である。


 私がマルノに請われてラジオを調整してやれば、流れてきたのは終戦を伝えるニュースであった。

 アナウンサーは嗚咽で言葉を何度も途切らせながら、ヴァルデン帝国が降伏した、戦争が終わったと繰り返していた。ついに平和が訪れたのですと。


 戦争のことすら知らなかったらしいマルノは「いったいどういうことなの?」と聞くので、私は「次の釣り場が待っているということさ」と答えた。


 果たして三ヶ月後に我々を迎えに輸送船がやってきた。

 私はヴァルデン帝国への駐留部隊配属との辞令を受け取り、カルタ島を後にした。


 航海の数日後、西の空から天柱雲が姿を見せた。

 ゴルディス大陸に送還されるため同じ船に乗り込んでいたマルノが声をあげた。

 天柱雲を初めて間近に見たという彼は興奮して甲板を走り回っていた。


 私は彼から買い取った最後の果実酒を飲みながら輸送船から伸びる白波を眺めていた。そこにはいくつものシイツフィッシュの特徴的な鰭が飛び出ていた。


 私はカップを掲げて三年間を過ごした南国の魚たちに別れを告げ、ヴァルデンで待ち受ける北海の魚との出会いに想いをはせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
analyze

【長編】
『バイト先は異世界転生斡旋業 ~えっ、スタッフにはチートも魔法も無いんですか!?~』
『めざせ9999pt! 冒険者はなろうランキングを登る ~よーし皆! 今日は『パーティー追放』に挑戦するぞ!!~』

【短編・中編】
『さめ!サメ!鮫!? -魚類最強は異世界でも最強だった-』
『乙女ゲーの主人公になりました/ていうか押しつけられました』
『勇者パーティーから追放されたうえ幼馴染に奪われた話(NTRフリー作品:安心してお読み頂けます)』
『外れスキル『努力』はひらめき一つでチートへと昇華する!』
『不遇職『ニート』になった俺は家族から罵倒され追放されたが辺境の地でチートに目覚めてスローライフを満喫中……だから、今さら戻ってこいと言われてももう遅い……遅いからな!』
『クラス召喚された僕らは魔力判定オーブに挑む』
『ゲーム風な異世界に鍛え上げた最強軍団でやってきた ※ただし全員俺(複アカ)』
『この泉に落ちた幼馴染は『お姉さんぶってあなたを甘やかしちゃう世話焼き系』ですか? それとも『無自覚装って密着してきちゃう からかい系』ですか?』
『魔王です。勇者に倒されたはずが決戦前に戻ってて、勇者パーティーが内紛中。なんでもクリア後に結ばれるヒロインを全員分制覇しようとしたのがバレたとか。お前も隠しヒロインだと言われ私も参戦。悪は倒された。』
『クククッ、勇者よ。ヤツは我らの中で(あみだくじ)最弱よ ~魔王と四天王のサバイバル戦略~』
『ギャルゲーの主人公の親友キャラに転生したら、俺がヒロインとして狙われていた』
『このデスゲームはR18に指定されました ~冒頭でモニターにA◯を放送事故ったせいで全員がエッチなスキルを取得してしまった!~』
『無実の断罪婚約破棄からの追放ルートにのった私は最高の修道院を用意しました』
『スマホを落としたメリーさん』
『同人ゲーム(R18)の悪徳貴族に転生したのでジャンルを純愛に変更しました ※なお原作は大好評につき新ヒロイン追加でシリーズ化してる模様』
『男女爵カール・ホイスラーは町娘の結婚式で初夜権を行使さる』
『僕たちの愛する恋人がスーパーハッカーにNTRていたなんて……【VR版】』
『そちらの王子様ならご自由にお持ちください ~悪役令嬢に転生した私はサブキャラの義弟をハイスペ王子に育てることにしました~』
『親方、空からゴーレムがっ⁉︎ ―人類史における天空宮に関する記述の抜粋―』

【他サイト掲載・R18作品】
・異世ばと! ※スーパーなろう大戦に作者オリキャラが参戦する話です(ハーメルン掲載)
・皇帝ハルトの理想都市 ~大陸統一のご褒美に全種族をあつめて街まるごとハーレム築いてみた~(ノクターン掲載)
・デスです! — フルダイブ型VR・RPGでデスゲームに巻き込まれたので実況配信しちゃいます! なおR18タイトルなのですでに社会的に死亡Death —(カクヨム掲載)
・男女比1:30世界でパパ活男子やってます(ノクターン・カクヨム)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。