表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

第37話 選ばないという選択

 ――本当の排除が始まる。


 その予感は、すぐに現実になった。


「――整合不能領域 再構築」


 声が、静かに響く。


 先ほどの削除とは違う。


 今度は。


 “作り直している”。


「……」


 私は動かない。


 ただ、見る。


 空間が、歪む。


 消えた壁が、別の形で現れる。


 廊下ではない。


 もっと単純な。


 無機質な空間。


「……変わりましたね」


 黒服の男が言う。


「ええ」


 私は頷く。


「排除できないなら、適合させるつもりです」


 その言葉の意味。


 それは単純だ。


 ――こちらを、変える。


「……っ」


 ノクスが、わずかに後ずさる。


 輪郭が、再び揺れる。


 だが今度は。


 消えるのではない。


 “整えられている”。


「……何か、変」


 ノクスが呟く。


「引っ張られる」


「ええ」


 私は答える。


「形を、決められています」


 その瞬間。


 ノクスの足元に、線が走る。


 細い。


 だが。


 確実な。


 “定義”。


「――対象 再設定」


 声が言う。


 そして。


 ノクスの輪郭が、固定されていく。


 曖昧さが消える。


 均一になる。


「……」


 ノクスが、止まる。


 完全に。


 その目が、変わる。


 揺れが消える。


「……ノクス」


 私は呼ぶ。


 返事はない。


 その代わり。


 ゆっくりと。


 こちらを見る。


「――適合完了」


 その声。


 それだけで。


 理解する。


 “奪われた”。


「……お嬢様!」


 ルークが動く。


 だが。


 私は手で制する。


「……まだです」


 静かに言う。


 そして。


 ノクスを見る。


 目は、こちらを見ている。


 だが。


 違う。


 そこに、“選択”がない。


「……ノクス」


 私は、もう一度呼ぶ。


 今度は。


 少しだけ強く。


 ノクスが、口を開く。


「……安定」


 一言。


 それだけ。


「……」


 私は何も言わない。


 だが。


 理解する。


 これは。


 “楽”な状態だ。


 曖昧でなく。


 揺れもなく。


 ただ。


 決められた形で存在する。


「……それでいいのですか」


 私は言う。


 静かに。


 だが。


 確実に届く声で。


「……」


 ノクスは、答えない。


 揺れない。


 安定している。


 それが。


 答えだ。


「……」


 私は、一歩近づく。


 距離を詰める。


 そして。


 言う。


「あなたは、それでいい」


 一拍。


「でも」


 さらに一歩。


「私は、違う」


 その言葉。


 それだけで。


 空気が変わる。


「……」


 ノクスの目が、わずかに揺れる。


 本当に、わずかに。


「……決められた形でいるのは、楽です」


 私は続ける。


「消されることもない」


「揺れることもない」


「苦しむこともない」


 一拍。


「でも」


 そこで。


 止める。


 あえて。


 言葉を切る。


「……」


 ノクスが、こちらを見る。


 ほんの少しだけ。


 深く。


「……それは、“あなた”ですか」


 その瞬間。


 空気が、止まる。


 完全に。


「――干渉」


 声が割り込む。


 だが。


 遅い。


 すでに。


 届いている。


「……」


 ノクスの輪郭が、揺れる。


 今度は。


 内側から。


「……わからない」


 小さく。


 ノクスが言う。


 初めて。


 明確に。


「……」


 私は、何も言わない。


 ただ。


 待つ。


 選ばせる。


「……でも」


 ノクスが、ゆっくりと手を上げる。


 自分の胸に触れる。


「……これ、違う」


 その一言。


 それだけで。


 すべてが崩れる。


「――整合崩壊」


 声が、初めて乱れる。


 ノクスの輪郭が、大きく揺れる。


 固定された形が、崩れる。


「……っ!」


 ルークが息を呑む。


 黒服の男が笑う。


「いいな」


 低く。


 楽しそうに。


「自分で否定した」


「ええ」


 私は答える。


 静かに。


 だが。


 確信して。


「それが、“選ばない”という選択です」


 定義を受け入れない。


 決められた形を拒否する。


 それが。


 この世界で、最も強い行動。


「……」


 ノクスが、こちらを見る。


 揺れている。


 だが。


 消えてはいない。


 むしろ。


 強くなっている。


「……戻る」


 一言。


 それだけ。


 だが。


 十分だった。


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 ペンを握る。


 書く。


【対象 ノクス】

【状態 未定義】


 その瞬間。


 空気が、裂ける。


「――不安定増大」


 声が、歪む。


 だが。


 止まらない。


 ノクスは、立っている。


 揺れながら。


 それでも。


「……なるほど」


 私は、小さく呟く。


 そして。


 理解する。


 これは。


 終わりではない。


 むしろ。


 “始まり”だ。


 ――選ばない者への、本格的な排除が始まる。

“選ばない”という選択。


それは、この世界では最も危険で、

最も強い選択でした。


ノクスは、初めて自分で否定しました。


ここから先は――もう後戻りできません。


もし続きを読みたいと思っていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“選ばない者への排除”です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ