第38話 排除の理由
――選ばない者への排除が始まる。
その言葉は、すぐに現実になる。
「――未定義対象 危険認定」
声が、今までで一番はっきりと響いた。
冷たい。
だが。
初めて、“意思”を感じる。
「……」
私は動かない。
ただ、理解する。
これは。
“判断”ではない。
――宣告だ。
「……来ます」
ルークが低く言う。
今度は迷いがない。
剣を抜く。
だが。
「無意味です」
私は言う。
短く。
「これは、戦闘ではありません」
「……ですが」
「分かっています」
一拍。
「それでも、備えてください」
ルークが頷く。
完全ではないが、理解している。
「……」
私は、前を見る。
空間が、変わる。
今度は。
歪みではない。
“圧縮”。
世界が、狭くなる。
「……」
黒服の男が、低く呟く。
「逃げ場を消しているな」
「ええ」
私は答える。
「定義できないものは、“存在できる範囲”を削る」
それが、この世界のルール。
ならば。
未定義の存在は。
――居場所を失う。
「……っ」
ノクスが、わずかに体を縮める。
空間が、狭い。
息苦しい。
だが。
消えてはいない。
「……」
私は一歩、前に出る。
そして。
問う。
「なぜ排除するのですか」
沈黙。
だが。
すぐに返る。
「――不整合の増幅」
一拍。
「――世界維持の障害」
その言葉。
それだけで。
理解する。
「……なるほど」
私は、小さく呟く。
これは。
“悪意”ではない。
――機能だ。
「……だから消すのですか」
「――当然」
即答。
迷いがない。
「……」
私は、ゆっくりと息を吐く。
そして。
理解する。
ここから先は。
理屈ではない。
“価値観”だ。
「……ノクス」
私は呼ぶ。
「はい」
今度は、はっきりと返る。
揺れている。
だが。
消えていない。
「あなたは、障害ですか」
一拍。
ノクスが、少しだけ考える。
そして。
「……わからない」
正直な答え。
それでいい。
「ええ」
私は頷く。
「なら、決めましょう」
その瞬間。
圧が強まる。
空間がさらに縮む。
壁が、近い。
床が、浅い。
「――最終判定」
声が、響く。
明確に。
終わりが近い。
「……」
私は、ペンを握る。
そして。
止める。
書かない。
今は。
違う。
「……?」
黒服の男が、わずかに眉を動かす。
「書かないのか」
「ええ」
私は答える。
「これは、記録の問題ではありません」
一歩。
さらに前へ。
「……」
ルークが息を呑む。
だが止めない。
「……あなたは」
私は、観測の先を見る。
直接。
見えない相手へ。
「“世界を維持するため”に排除すると言いましたね」
「――肯定」
即答。
「では」
一拍。
「その世界は、誰のものですか」
沈黙。
初めて。
長い。
「……」
私は、続ける。
「整合性のある世界」
「矛盾のない世界」
「すべてが定義された世界」
一拍。
「そこに、“選択”はありますか」
空気が、止まる。
完全に。
「――」
声が、出ない。
初めて。
明確に。
「……なるほど」
黒服の男が、小さく笑う。
「そこを突くか」
「ええ」
私は答える。
そして。
確信する。
これは。
揺らいだ。
「……」
ノクスが、横で言う。
「……選びたい」
一言。
それだけ。
だが。
それがすべて。
「ええ」
私は頷く。
「それが、答えです」
その瞬間。
空間の圧が、止まる。
完全ではない。
だが。
確実に。
「――矛盾発生」
声が、歪む。
そして。
初めて。
“揺れる”。
「……っ」
ルークが、息を吐く。
「効いています」
「ええ」
私は答える。
だが。
まだ足りない。
これは。
前段階。
「――再定義要求」
声が、変わる。
今度は。
明確に。
こちらへ向いている。
「……なるほど」
私は、小さく呟く。
そして。
理解する。
――次は、“証明”を求められる。
排除には理由がありました。
そして、その理由は――崩せるものでした。
ですが、まだ足りません。
次は、“証明”です。
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