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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第25話 それは、記録される

 ――向こうも、こちらを認識した。


 その事実だけで、十分だった。


 空気が変わる。


 重い。


 押し潰すような圧。


 だが、それは物理ではない。


 “意味”が、押し寄せてくる。


「――見つけた」


 それは、もう一度言った。


 はっきりと。


 今度は、距離が近い。


「……」


 私は動かない。


 ただ、見る。


 輪郭は人の形。


 だが、情報がない。


 名前も、所属も、意味も。


 だから――危険だ。


「……下がってください!」


 ルークが叫ぶ。


 珍しく、大きな声で。


 だが。


「いいえ」


 私は一歩、前に出る。


 止まらない。


 止まれない。


「……お嬢様!」


「ここで引けば、繋がりが切れます」


 短く言う。


 そして。


「それでは、分からない」


 この存在が。


 何なのか。


 どういうルールで動くのか。


 それが、すべて曖昧なままになる。


 それは、許容できない。


「……っ」


 ルークが言葉を失う。


 黒服の男は、黙っている。


 観察している。


 そして。


 ノアが、楽しそうに笑っている。


「いいね」


 小さく言う。


「やっと、ちゃんと来た」


 その言葉。


 それが示すもの。


 私は手帳を開く。


 ペンを握る。


 そして。


 “それ”を見る。


「……あなたは、何ですか」


 問いかける。


 意味があるかは分からない。


 だが。


 必要だ。


 繋ぐために。


 “それ”が、わずかに動く。


 首のようなものが、傾く。


 顔はない。


 だが。


 視線は、確実にこちらにある。


「……」


 沈黙。


 そして。


 ゆっくりと。


 口のないはずの場所から。


 音が出る。


「――未記録」


 その一言。


 それだけで。


 理解する。


 これは。


 記録されていない存在。


 だから。


 不安定で。


 そして。


 危険。


「……なるほど」


 私は小さく呟く。


 そして。


 ペンを置く。


 書く。


【対象 未記録】


 インクが染みる。


 その瞬間。


 空気が、震える。


 “それ”の輪郭が、さらに明確になる。


「……っ!」


 ルークが後ろに下がる。


「固定されている……!」


「ええ」


 私は答える。


 だが。


 それは。


 同時に。


 ――繋いだということ。


「……」


 “それ”が、一歩近づく。


 今度は、はっきりと。


 距離が、縮まる。


 危険域。


「……」


 私は動かない。


 ただ。


 手帳を握る。


 次の一手。


 考える。


 そして。


 気づく。


「……足りない」


 小さく呟く。


 “未記録”だけでは、弱い。


 これでは。


 曖昧なまま。


「……なら」


 私は言う。


 はっきりと。


「名前が必要です」


 空気が、止まる。


「……名前?」


 ルークが戸惑う。


「ええ」


 私は頷く。


「識別するための」


 それがなければ。


 繋がらない。


 完全には。


「……」


 “それ”が、止まる。


 初めて。


 動きを止める。


「……あなたの名前を」


 私は言う。


 静かに。


 だが。


 逃がさないように。


 “それ”が、揺れる。


 輪郭が、不安定になる。


 まるで。


 その概念を、持っていないかのように。


「……」


 沈黙。


 長い。


 だが。


 逃げない。


 私は、待つ。


 そして。


 ようやく。


 声が出る。


「――……ない」


 その一言。


 それが、答えだった。


「……」


 私は、わずかに息を吐く。


 理解する。


 ならば。


「――付けます」


 宣言する。


 その瞬間。


 “それ”が、大きく揺れる。


 拒絶。


 あるいは。


 警戒。


「……お嬢様!」


 ルークが叫ぶ。


 だが。


 止まらない。


 止められない。


 ここが。


 分岐点だ。


 私は。


 ペンを握る。


 そして。


 書く。


【対象名 ???】


 インクが、強く染みる。


 その瞬間。


 空気が、弾けた。


 “それ”が。


 大きく、形を変える。


「――やめろ」


 初めて。


 明確な拒絶。


 だが。


 私は止まらない。


 さらに書く。


 名前を。


 与える。


 そのとき。


 ノアの声が、すぐ隣で響いた。


「それ」


 笑いながら。


「やりすぎると、持ってかれるよ」


 その一言。


 それだけで。


 理解する。


 これは。


 ただの固定ではない。


 ――取り込まれる。


 だが。


 それでも。


 私は。


 ペンを止めない。


 そして。


 確信する。


 ここで。


 決める。

ついに、“未記録”と向き合いました。


そして、名前を与えるという選択。


それが何を引き起こすのか――


もう後戻りはできません。


もし続きを楽しみにしていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“名前を与えた結果”です。

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