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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第24話 境界の向こう側

 ――境界を、越えた。


 その実感は、足元から静かに広がっていった。


 空気が違う。


 温度ではない。

 音でもない。


 “意味”が違う。


「……」


 私は一歩、前に出る。


 通路の奥。


 暗いはずのそこが、妙に“近い”。


 距離の感覚が、ずれている。


「……待ってください」


 ルークが声を上げる。


 珍しい。


 明確な制止。


「危険です」


「ええ」


 私は頷く。


 否定しない。


 だが。


「すでに、入っています」


 一歩。


 さらに進む。


 その瞬間。


 視界が、わずかに揺れた。


「……っ」


 床が、消える。


 いや。


 ある。


 だが、“繋がっていない”。


「……なるほど」


 黒服の男が、静かに言う。


「座標が固定されていない」


「ええ」


 私は短く答える。


 ここは。


 “記録されていない場所”。


 だから。


 存在が、曖昧になる。


「……戻りましょう」


 ルークが言う。


 声に焦りがある。


 当然だ。


 ここは。


 危険だ。


 だが。


「いいえ」


 私は首を振る。


「必要です」


 短く。


 はっきりと。


 そして。


 手帳を開く。


 ペンを置く。


 書く。


【現在位置 通路】


 インクが染みる。


 その瞬間。


 床が、安定する。


「……!」


 ルークが息を呑む。


「固定した」


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 続ける。


【接続 王宮内部】


 さらに書く。


 その瞬間。


 空気が、落ち着く。


 意味が、繋がる。


「……なるほど」


 黒服の男が笑う。


「“場所”も記録で固定できる」


「ええ」


 私は答える。


 ここは。


 そういう場所だ。


 そして。


「……来ます」


 ノアが言う。


 いつの間にか、隣にいる。


 近い。


 妙に。


「何がですか」


「“向こう側”」


 彼女は、楽しそうに笑う。


 その視線の先。


 暗闇。


 そこに。


 “形”がある。


「……」


 私は目を細める。


 人ではない。


 だが。


 何かだ。


 動いている。


「……あれは」


 ルークが低く言う。


 言葉が続かない。


 当然だ。


 説明できない。


 形が、定まっていない。


「……未接続存在」


 私は呟く。


 それが、一番近い。


「いい名前」


 ノアが笑う。


「でも、違うよ」


 彼女は首を傾げる。


「“まだ繋がってない”だけ」


 その言葉。


 それが意味するもの。


「……つまり」


 私は言う。


「繋がれば、固定される」


「うん」


 ノアが頷く。


 無邪気に。


 そして。


「でもね」


 一拍。


「繋いだら、来るよ」


 笑う。


 その意味。


 すでに、理解している。


 私は手帳を握る。


 視線を前に向ける。


 “それ”は、近づいている。


 ゆっくりと。


 だが。


 確実に。


「……お嬢様」


 ルークが言う。


「やめるなら、今です」


 正しい判断。


 だが。


「いいえ」


 私は答える。


「ここで止まれば、分からない」


 それでは、意味がない。


 そして。


 ペンを置く。


 書く。


【対象 存在】


 その瞬間。


 空気が、震えた。


 “それ”の輪郭が、はっきりする。


 人の形。


 だが。


 顔がない。


 意味がない。


「……っ」


 ルークが後ろに下がる。


 恐怖。


 それが、伝わる。


 だが。


 私は動かない。


 ただ、見る。


「……なるほど」


 黒服の男が、低く言う。


「繋いだ瞬間に、“こちら側”に来る」


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 そのとき。


 “それ”が、動いた。


 一歩。


 こちらへ。


 そして。


 口がないはずなのに。


 声がした。


「――見つけた」


 その一言。


 それだけで。


 空気が、凍る。


「……」


 私は何も言わない。


 ただ。


 理解する。


 これは。


 単なる存在ではない。


 “こちらを認識している”。


「……まずいですね」


 黒服の男が、初めて真剣に言う。


「完全に、繋がりました」


「ええ」


 私は答える。


 短く。


 そして。


 確信する。


 これは。


 もう。


 戻れない。


 境界は、越えた。


 そして。


 “向こう側”も。


 こちらに来た。

ついに、“境界の向こう側”に踏み込みました。


そして――向こうも、こちらを認識しました。


ここからは、一方的ではありません。


もし続きを楽しみにしていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“それ”が何をしてくるのかです。

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