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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第22話 消えないための記録

 ――これは、もう“戦い”だ。


 その実感が、ようやく形になった。


【対象 存在】


 書いたはずのその一行は、まだ残っている。


 だが。


 揺れている。


 まるで、定着していないかのように。


「……」


 私は手帳を見つめたまま、言う。


「ルーク」


「はい」


「今、彼は見えていますか」


 ルークは一瞬だけ戸惑う。


 だが、すぐに答える。


「見えています」


「触れますか」


 ルークはレイヴンの腕に手を伸ばす。


 掴む。


「……問題ありません」


 確かに、そこにいる。


 だが。


「……では」


 私は続ける。


「なぜ、“未確保”になるのですか」


 沈黙。


 誰も答えない。


 答えられない。


 だが。


「……条件がありますね」


 黒服の男が、楽しげに言う。


「“存在する”ための条件が」


 私は視線を上げる。


 その言葉に、わずかに頷く。


「ええ」


 そうだ。


 これは、単なる改竄ではない。


 “成立条件”の問題。


「……何だ、それは」


 アルヴェルトが低く言う。


 苛立ちが混じる。


 だが、抑えている。


「簡単です」


 私は答える。


「記録されるかどうか」


 一拍。


「それが、存在の条件です」


 空気が、止まる。


「……ふざけるな」


 アルヴェルトが言う。


「目の前にいる」


「ええ」


 私は同意する。


「ですが」


 視線を外さない。


「“残らなければ”いなかったことになります」


 それが、この世界のルール。


 そして。


「……だから」


 私は手帳を見せる。


「消えようとしている」


 文字が、わずかに滲む。


 そして。


 少しずつ。


 薄くなる。


「……」


 ルークが、息を呑む。


「本当に……」


「ええ」


 私は頷く。


「時間の問題です」


 そのとき。


「……くく」


 また、笑い。


 レイヴン。


 彼は、まったく焦っていない。


「……理解が早いですね」


 余裕。


 完全に。


「これは」


 彼が続ける。


「“消されている”のではない」


 視線が、私に向く。


「“繋がっていない”のです」


 その言葉。


 それが、鍵だった。


「……繋がり」


 私は小さく呟く。


 そして。


 思考が、一気に進む。


「……記録は、単体では成立しない」


 そうだ。


 今までのすべて。


 断片ではなく。


 繋がり。


「前後関係」


「証人」


「経路」


 それらがあって初めて。


 “存在する”。


「……だから」


 私はレイヴンを見る。


「あなたは、切り離された」


 彼の笑みが、深くなる。


「ええ」


 肯定。


「“孤立した記録”は、消える」


 それが、ルール。


 つまり。


「……なら」


 私は言う。


「繋げばいい」


 一瞬。


 レイヴンの目が揺れる。


 初めて。


「……何を」


「記録です」


 私は答える。


 そして。


 手帳を開く。


 新しい行。


 ペンを置く。


「ルーク」


「はい」


「証言を」


「……はい」


 ルークが一歩前に出る。


 そして。


「対象、レイヴン」


 はっきりと声に出す。


「本日、当該場所にて確認」


 私は書く。


 そのまま。


 言葉を。


【証言1 確認】


 インクが染みる。


 揺れが、わずかに収まる。


「……なるほど」


 黒服の男が笑う。


「“補強”ですか」


「ええ」


 私は頷く。


「単独ではなく、複数で固定する」


 そして。


「殿下」


 アルヴェルトを見る。


「……何だ」


「あなたも」


 一瞬。


 迷い。


 だが。


 すぐに。


「……確認する」


 彼が言う。


 前に出る。


「対象、レイヴン」


 低く、だが確実に。


「ここに存在する」


 私は書く。


【証言2 王太子】


 インクが、強く染みる。


 その瞬間。


 文字の揺れが、止まる。


 完全に。


「……」


 ルークが息を吐く。


「……安定しました」


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 レイヴンを見る。


 彼の表情。


 初めて。


 変わっている。


「……面白い」


 低く言う。


 だが。


 余裕は、少しだけ削れている。


「そこまでやりますか」


「必要ですから」


 私は答える。


 短く。


「……なるほど」


 レイヴンが、ゆっくりと目を細める。


「では」


 その瞬間。


 空気が、変わる。


「次の段階ですね」


 言葉と同時に。


 手帳が、震える。


 新しい文字が、浮かぶ。


 誰も書いていないのに。


【対象 分割】


「……」


 私は何も言わない。


 だが。


 理解する。


 これは。


 まだ終わらない。


 むしろ。


 ここから。


 さらに。


 ルールが、変わる。

一つ、消えかけた存在を“繋ぎ止めました”。


ですが、それで終わりではありません。


今度は、“分かれようとしている”。


ここからは、さらに複雑になります。


もし続きを楽しみにしていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“分割された意味”に踏み込みます。

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