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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第20話 選ばれた責任

 ――ここで、すべてが繋がる。


 その言葉が、現実になった瞬間だった。


「これは、私の問題だ」


 アルヴェルトの声は、静かだった。


 だが。


 先ほどまでの揺らぎは、もうない。


 決めた声だ。


「……殿下」


 ルークが低く呼ぶ。


 だが、止めない。


 止められない。


 場の主導権は、今。


 完全に移っている。


「レイヴン」


 アルヴェルトが、名を呼ぶ。


 補佐は、わずかに肩をすくめる。


「はい」


「ここまでだ」


 短い言葉。


 命令ではない。


 だが。


 拒否を許さない重さがある。


「……どこまでを指しておられるのか」


 レイヴンは、あくまで冷静だ。


 崩れない。


 それが逆に、異様だった。


「すべてだ」


 アルヴェルトが言い切る。


 沈黙。


 空気が張り詰める。


 そして。


 レイヴンが、ゆっくりと笑った。


「……遅いですね」


 その一言。


 それだけで。


 すべてが変わる。


「……何がだ」


「判断です」


 レイヴンは言う。


「もっと早く決断していれば、ここまで露見しなかった」


 視線が、アルヴェルトに突き刺さる。


「……」


 アルヴェルトは何も言わない。


 ただ、受け止める。


「……ですが」


 レイヴンは続ける。


「それでも、評価します」


 その言葉に。


 わずかな違和感。


 敵の言葉ではない。


「責任を引き受ける」


 レイヴンが言う。


「それは、できる人間が少ない」


 賞賛。


 あるいは。


 確認。


「……だからこそ」


 アルヴェルトが、初めて返す。


「ここで終わらせる」


 その言葉に。


 迷いはない。


「終わらないですよ」


 レイヴンは即答する。


 そして。


 一歩、下がる。


 その動き。


 自然すぎる。


 だからこそ。


「――止めて」


 私は言った。


 その瞬間。


 レイヴンの動きが、わずかに止まる。


 ほんの一瞬。


 だが。


 十分だった。


「……何ですか」


「逃げますね」


 断言する。


 彼の視線が、わずかに揺れる。


「違います」


「逃げます」


 重ねる。


 確定させるように。


 そして。


「記録に残る前に」


 沈黙。


 その一瞬で。


 すべてが決まる。


「……」


 レイヴンが、息を吐く。


 そして。


 初めて。


 崩れる。


「……やはり」


 小さく笑う。


「あなたは、厄介だ」


 その言葉と同時に。


 動く。


 速い。


 通路へ。


 だが。


「――止まれ」


 カインの声。


 同時に、兵士が動く。


 逃げ道を塞ぐ。


 だが。


 レイヴンは止まらない。


 むしろ。


 加速する。


「……!」


 ルークが前に出る。


 だが。


 届かない。


 その瞬間。


 私は。


 手帳を開く。


 そして。


 書く。


【対象 逃走】


 インクが染みる。


 その瞬間。


 空気が、変わる。


 レイヴンの動きが。


 わずかに。


 鈍る。


「……何を」


 彼が、初めて驚く。


 その隙。


「――捕えろ」


 カインの声。


 兵士が、一斉に動く。


 今度は、間に合う。


 レイヴンが、押さえ込まれる。


 完全に。


「……」


 静寂。


 誰も動かない。


 ただ。


 結果だけが、そこにある。


 私は手帳を閉じる。


 静かに。


 そして。


 視線を上げる。


「……終わりました」


 短く言う。


 アルヴェルトが、こちらを見る。


 何かを言おうとして。


 止まる。


 そして。


「……いや」


 首を振る。


「まだだ」


 その言葉。


 それ自体が。


 変化だった。


 責任を。


 理解している。


 私は何も言わない。


 ただ。


 その変化を、記録する。


 それでいい。


 そして。


 そのとき。


 ふと。


 違和感。


 手帳に視線を落とす。


 さっき書いた行。


【対象 逃走】


 ――消えている。


 代わりに。


【対象 未確保】


 書き換わっている。


「……」


 私は何も言わない。


 だが。


 分かる。


 これは。


 まだ終わっていない。


 レイヴンを見る。


 捕えられている。


 確実に。


 だが。


 その表情。


 余裕。


「……なるほど」


 黒服の男が、楽しげに言う。


「捕まっていない、ということですか」


 私は手帳を閉じる。


 そして。


 静かに確信する。


 ――これは、まだ序章だ。

一つの決着がつきました。


ですが、それは“終わり”ではありません。


むしろ、ここからが本番です。


もしここまで楽しんでいただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次の章では、“本当の敵”に触れていきます。

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