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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第19話 当事者は、ここにいる

 ――ここで、対峙する。


 足音は、迷いがなかった。


 一定の速度で、こちらへ近づいてくる。


 逃げる気配はない。


 隠れるつもりもない。


 つまり。


 最初から、来るつもりだった。


「……」


 私は動かない。


 ただ、視線を奥へ向ける。


 暗い通路の先。


 そこから、影が現れる。


 一歩。


 また一歩。


 やがて、姿が見える。


「……やはり、来ましたか」


 落ち着いた声。


 初めて聞くはずなのに。


 どこか、知っている響き。


「……」


 私は答えない。


 代わりに、観察する。


 整った服装。

 無駄のない所作。


 そして。


 こちらを“既に理解している”目。


「お初にお目にかかります」


 男が軽く一礼する。


「情報統括補佐、レイヴンと申します」


 名乗った。


 あっさりと。


 隠すつもりがない。


 それでいい。


「……あなたが」


 ルークが低く言う。


「はい」


 レイヴンは微笑む。


「おそらく、ご想像の通りです」


 否定しない。


 むしろ。


 肯定する。


 その態度が。


 すべてを物語っている。


「……なぜ」


 ルークが言葉を続ける。


「このようなことを」


「簡単な話です」


 レイヴンは肩をすくめる。


「必要だったからです」


 曖昧な答え。


 だが。


 誤魔化してはいない。


「王宮の資金を」


 ルークが詰める。


「外部へ流した」


「ええ」


 あっさりと認める。


 迷いなく。


「記録も操作した」


「ええ」


 同じく。


 即答。


 その態度。


 それ自体が。


 異常だった。


「……なぜ」


 今度は、私が問う。


 静かに。


 真正面から。


 レイヴンの目が、わずかに細くなる。


 初めて。


 興味が混じる。


「あなたは」


 彼が言う。


「記録官ですね」


「ええ」


「なら、分かるはずです」


 一歩、近づく。


「記録とは、何のためにあるか」


 問い返される。


 私は答えない。


 彼が続けるのを待つ。


「管理のためです」


 レイヴンは言う。


「秩序のため」


「そして」


 わずかに、笑う。


「都合のため」


 沈黙。


「都合が悪ければ」


 彼は続ける。


「変える」


 当然のように。


「それが、記録です」


 その言葉に。


 ルークが息を呑む。


 黒服の男が、小さく笑う。


 私は。


 ただ、見ている。


「……それが理由ですか」


 静かに問う。


「ええ」


 レイヴンは頷く。


「王宮の資金は、硬直している」


「必要なところに届かない」


「だから」


「動かした」


 単純な理屈。


 だが。


 それは。


「……不正です」


 ルークが言う。


「ええ」


 レイヴンは否定しない。


「ですが」


 一歩、さらに近づく。


「結果は出ています」


 視線が、私に向く。


「それでも、止めますか?」


 問い。


 試し。


 私は一瞬だけ考える。


 そして。


「記録に残ります」


 答える。


 短く。


「何が」


「すべてです」


 迷いなく。


「あなたの行動も」


「その理由も」


「結果も」


 すべて。


 レイヴンの表情が、わずかに変わる。


 初めて。


 感情が動いた。


「……なるほど」


 小さく呟く。


「そういう方ですか」


 そして。


 息を吐く。


「ならば」


 その瞬間。


 空気が変わる。


 明確に。


「ここで終わらせるしかない」


 ルークが、即座に前に出る。


 だが。


「――待ってください」


 私は止める。


「……お嬢様」


「まだです」


 短く言う。


 視線は、レイヴンのまま。


「あなた」


 私は言う。


「一人ではありませんね」


 レイヴンの動きが、止まる。


 一瞬。


 だが。


 確実に。


「……何のことです」


「資金の流れ」


 私は続ける。


「複数の経路」


「複数の名義」


「そして」


「記録の操作」


 一つ一つ。


 積み上げる。


「一人では、できません」


 沈黙。


 レイヴンが、こちらを見る。


 そして。


 ゆっくりと。


 笑う。


「……やはり」


 小さく。


「見えている」


 その言葉。


 それ自体が。


 答えだった。


「……誰ですか」


 私は問う。


 核心へ。


 レイヴンは、少しだけ考える。


 そして。


「――あなたが、知る必要はない」


 そう言った。


 だが。


 その直後。


 違う声が響く。


「いいえ」


 静かに。


 だが、はっきりと。


 全員が振り返る。


 そこに、立っていたのは――


「……殿下」


 アルヴェルトだった。


 表情は、静かだ。


 だが。


 先ほどとは違う。


 迷いがない。


「彼女は知るべきだ」


 ゆっくりと歩み寄る。


「なぜなら」


 一歩。


 止まる。


 そして。


 言う。


「これは、私の問題だからだ」


 空気が、凍る。


 完全に。


 私は何も言わない。


 ただ。


 見ている。


 そして。


 理解する。


 ――ここで、すべてが繋がる。

ついに、“当事者”が揃いました。


そして、隠されていたものが、

もう隠れなくなります。


ここからは、逃げ場がありません。


もし続きを楽しみにしていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“すべての関係”が明らかになります。

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