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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第18話 ここにあるもの

 ――ここに、すべてがある。


 その確信だけが、静かに胸の中で沈んでいた。


 扉は閉じている。


 開かない。


 だが、それは問題ではない。


 問題は――中身だ。


「……」


 私はゆっくりと、室内を見渡す。


 机がいくつも並んでいる。

 整然としているが、どこか違う。


 王宮の書庫とは、明らかに違う。


 “記録”の扱い方が、違う。


「……これは」


 ルークが低く言う。


「王宮式ではありません」


「ええ」


 私は頷く。


「分類が違う」


 王宮の記録は、目的ごとに分かれる。


 だが、ここは違う。


 並び方が、“流れ”だ。


「時間軸……」


 黒服の男が呟く。


「いえ」


 私は首を振る。


「“動き”です」


 流れではない。


 移動。


 何が、どこへ動いたか。


 それだけで整理されている。


「……外部記録ですね」


 ルークが言う。


「ええ」


 私は一つの書類を手に取る。


 紙質が違う。

 印も違う。


 王宮のものではない。


「完全に、別系統」


 つまり。


 王宮の外で作られた記録。


 そして、それが――


 ここにある。


「……繋がっている」


 黒服の男が笑う。


「内と外が」


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 書類をめくる。


 数字。


 識別番号。


 そして。


「……三七」


 見つける。


 本命。


 間違いない。


「……ありましたね」


 ルークが静かに言う。


 私は書類を広げる。


 内容を見る。


 そして。


 一瞬だけ、思考が止まる。


「……これは」


「どうしました」


 黒服の男が覗き込む。


 私は答えない。


 代わりに、紙を差し出す。


 ルークが見る。


 そして。


「……これは……」


 言葉を失う。


 当然だ。


 そこに書かれていたのは。


 資金の流れではない。


 その先。


「……名前がある」


 黒服の男が、低く言う。


 そう。


 ただの取引ではない。


 その資金が、誰に渡ったか。


 明確に記録されている。


「……これは」


 ルークが震える声で言う。


「王宮内部の……」


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 指で示す。


 一つの名前。


「……情報統括補佐」


 空気が、凍る。


 カインではない。


 だが。


 そのすぐ下。


 直属。


「……なるほど」


 黒服の男が、静かに笑う。


「“上”ではなく、“隣”でしたか」


 視線が、私に向く。


 評価。


 そして。


 期待。


 私は何も言わない。


 ただ。


 次のページをめくる。


 さらに、名前。


 複数。


 そして。


 その中に。


「……」


 指が止まる。


 一つの名前。


 見覚えがある。


「……殿下の側近」


 ルークが呟く。


 王子に近い人物。


 つまり。


 完全に、内部だ。


「……繋がりましたね」


 黒服の男が言う。


 その声は、静かだ。


 だが。


 確信している。


「ええ」


 私は頷く。


 これで。


 点が、線になった。


「……証拠としては」


 ルークが言う。


「十分です」


「いいえ」


 私は首を振る。


「まだです」


 沈黙。


「……なぜ」


「“本物”かどうか、確認が必要です」


 ここは、外部記録。


 つまり。


 偽装の可能性もある。


「……慎重ですね」


 黒服の男が笑う。


「当然です」


 私は答える。


「ここまで来て、間違えるわけにはいきません」


 そして。


 手帳を開く。


 新しい行。


 ペンを置く。


 書く。


【資金流出先 特定】


 インクが染みる。


 だが。


 それだけでは終わらない。


 次に。


【内部関与者 複数】


 書き足す。


 そして。


 ペンが、止まる。


 一瞬。


 迷う。


 書くべきか。


 その名前を。


 だが。


 ――書く。


【王太子側近 関与】


 その瞬間。


 空気が、変わる。


 重く。


 はっきりと。


 “戻れない線”を越えた。


「……お嬢様」


 ルークが、低く言う。


「ええ」


 私は頷く。


 理解している。


 これは。


 ただの不正ではない。


 政治だ。


 そして。


 そのとき。


 音がした。


 カチリ、と。


 何かが動く音。


 視線を上げる。


 部屋の奥。


 棚が、わずかに動く。


「……」


 誰も動かない。


 だが。


 全員が、理解する。


 これは。


 まだ、終わりではない。


 棚が、ゆっくりと開く。


 その奥に。


 ――通路。


「……逃げ道」


 ルークが言う。


「ええ」


 私は頷く。


 そして。


 同時に理解する。


 これは。


 逃げるためだけのものではない。


 来るためのものでもある。


 つまり。


 この場所は。


 まだ、使われている。


「……来ますね」


 黒服の男が、楽しげに言う。


 その声の通り。


 気配がある。


 奥から。


 ゆっくりと。


 確実に。


 足音が近づいてくる。


 私は手帳を閉じる。


 視線を前に向ける。


 そして。


 静かに、確信する。


 ――ここで、対峙する。

ついに、“繋がり”が見えました。


ですが、それを知った瞬間、

次の段階に進んでしまいます。


もう、引き返せません。


もし続きを楽しみにしていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“本当の当事者”が現れます。

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