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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第17話 本命は、既に動いている

 ――“本命”がある。


 その確信を持ったまま、私は歩いていた。


 廊下は静かだ。

 だが、さっきまでとは違う。


 気配がある。


 見えない何かが、先にいる。


「……お嬢様」


 ルークが低く呼ぶ。


「気づいています」


 私は答える。


 視線は前のまま。


「この先、警戒が強いですね」


「ええ」


 当然だ。


 ここは、もう“外側”に近い。


 王宮の中であって、外部に繋がる場所。


「……来ますか」


 黒服の男が、楽しげに言う。


「来ます」


 私は即答する。


「すでに」


 その瞬間だった。


 廊下の角。


 影が、わずかに動く。


「――止まれ」


 低い声。


 兵士ではない。


 もっと、静かな圧。


 私は足を止める。


 視線を向ける。


 そこにいたのは――


「……あなたですか」


 初めて見る顔。


 だが。


 立ち方で分かる。


 ただの文官ではない。


 整えられた服。

 無駄のない動き。


 そして。


 こちらを“測っている”目。


「ここから先は、立ち入り禁止だ」


 静かに言う。


 命令ではない。


 だが、拒否の余地を与えない声。


「理由を伺っても?」


 私は問い返す。


 男は、一瞬だけ黙る。


 そして。


「業務だ」


 曖昧な答え。


 だが。


 それで十分だ。


「……なるほど」


 私は頷く。


「では、確認を」


 一歩、前に出る。


 男の視線が、鋭くなる。


「その業務は」


 続ける。


「“三七”の識別番号に関係しますか」


 一瞬。


 空気が止まる。


 男の呼吸が、わずかに乱れる。


 それで。


 確定だ。


「……関係ない」


 即答。


 だが。


 遅い。


「そうですか」


 私はそれ以上、踏み込まない。


 代わりに。


 一歩、下がる。


 男が、わずかに警戒を緩める。


 その瞬間。


「ルーク」


「はい」


「記録を」


 短く指示する。


 ルークが即座に動く。


 手帳を開く。


 そして。


 男の前で、はっきりと書く。


【立入制限 対象者】


 その行為。


 それ自体が。


 圧になる。


「……何をしている」


 男が低く言う。


「記録です」


 私は答える。


「今、この場で起きていることを」


 男の目が、細くなる。


「それは、許可されていない」


「必要ありません」


 即答。


 迷いなく。


「事実は、許可なく残ります」


 沈黙。


 空気が変わる。


 こちらが、主導を取る。


「……引け」


 男が言う。


 だが。


 先ほどより、弱い。


「理由を」


「これ以上は」


「記録に残ります」


 遮る。


 同じ言葉を返す。


 男が、わずかに舌打ちする。


 その瞬間。


 分かる。


 焦っている。


「……」


 私は何も言わない。


 ただ。


 見る。


 逃げ道を塞ぐように。


 男の視線が、揺れる。


 そして。


 一瞬だけ。


 後ろを見る。


 その動き。


 それだけで。


 十分だった。


「……そこですか」


 私は静かに言う。


 男の体が、固まる。


「何の話だ」


「後ろです」


 私は指をさす。


 扉。


 重い、金属の扉。


 今まで、気づかなかった。


 だが。


 確実に、ある。


「そこに、“ある”」


 断言する。


 男の表情が、崩れる。


 ほんの一瞬。


 だが。


 決定的だった。


「……通すわけにはいかない」


 低く言う。


 だが。


 もう、遅い。


「通ります」


 私は一歩、前に出る。


 男が動く。


 止めようとする。


 だが。


「――やめろ」


 別の声。


 背後から。


 振り返る。


 カインだ。


 いつの間にか、立っている。


「……情報統括」


 男が、わずかに下がる。


 立場が、変わる。


「開けろ」


 短く。


 命令。


 今度は、明確だ。


「しかし――」


「開けろ」


 繰り返す。


 それで終わりだ。


 男は、数秒だけ迷う。


 だが。


 従うしかない。


 鍵を回す。


 重い音。


 扉が、ゆっくりと開く。


 中は、暗い。


 だが。


 空気が違う。


 私は、一歩踏み込む。


 そして。


 見る。


 机。


 書類。


 そして。


 その中央。


 置かれているもの。


 ――記録。


 大量の。


 だが。


 それは。


 王宮の形式ではない。


「……外部記録」


 小さく呟く。


 確定する。


 ここが。


 本命だ。


 そして。


 その瞬間。


 背後で、音がした。


 振り返る。


 扉が。


 閉じている。


 誰も触れていないのに。


 静かに。


 完全に。


 閉じられている。


「……」


 ルークが、わずかに息を呑む。


 黒服の男が、笑う。


「いいですね」


 その声は、楽しげだった。


「閉じ込められました」


 私は何も言わない。


 ただ。


 理解する。


 これは。


 罠だ。


 そして。


 同時に。


 正解だ。


 ここに。


 すべてがある。

ついに、“本命”に辿り着きました。


ですが、それは同時に、

一番危険な場所でもあります。


ここからは、引き返せません。


もし続きを楽しみにしていただけたなら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は、“ここに何があるのか”が明らかになります。

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