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第十八話「零れゆく命」①

 シーカーリウスが引き起こした爆発は、周辺一帯の木々を見事に消し飛ばし、貴船神社付近から直径一キロあまりを更地に変えている。

 そこに這いつくばった青いアーキグスタフのなかで、神楽夜(かぐや)は小さな呻きとともに目を開けた。

 苦々しい顔で身を起こすも、あたりは砂煙が立ち込め、頭上の月すら満足に見ることができない。

「ジックたちは……」

 厳めしく見回せば、視界の彼方におぼろげながら、見覚えのある盾が突き立っている。

 そして、

「レジーナ!」

 そのすぐそばで横たわる彼女の機体を見つけ、神楽夜は一目散に駆け寄った。

 膝をつき、仰向けになった白銀の機体をすくい上げるように抱き起こし、その身をゆする。

「レジーナ! しっかり、レジーナ!」

「ん……く」

 苦しげに意識を取り戻したレジーナは、しばし呆然としたかと思うと、

「――ジックは、どうなった」

 そう力なく訊いた。

 しかし、神楽夜とて目覚めたばかりである。シーカーリウスの爆発による凄まじい閃光に呑まれ、その渦中にいた彼がどうなったかまでは知りようもない。むしろ訊きたいくらいだ。

 答えに窮した神楽夜はジック・ブレイズの姿を求め、周囲に視線を走らせる。

 と、そこに、砂塵にまみれ近づいてくる巨大な影があった。

(あれは……!)

 神楽夜は沸き起こった喜びに顔色を晴れさせ、

「ジ――」

 と、彼の名を呼ぼうとした。

 だが、その顔は瞬く間に凍りつく。

「……シーカー、リウス!」

 そこに現れたのは、爆散した鮫の成れの果てであった。

 外装が砕けたことで花弁を失い、満足に花の形も取れず、仮面がある中央の部分だけで浮遊している。咥えた丸い<ネビュラ・クォーツ>はひび割れ、すでに光はない。それでも、脅威にはほかならない。

(まだやる気か)

 神楽夜は眼光鋭くその仮面を睨みつけ、レジーナの機体を抱えてすぐに飛び退けるよう、下半身に気を巡らせた。

 すると、シーカーリウスは表面に細かな電流を走らせ、次の瞬間には、いくつかの小さな爆発とともに地面へ崩れ落ちた。

 そのあられもない姿に、神楽夜とレジーナは途端に拍子抜けした様子で、短く息を吐く。

 暗色の仮面は、山積した自身の破片に埋もれながら天を仰ぎ、

「――まったく、あんたらは自由でいい」

 と、どこか自虐的にそう言った。

 それに、神楽夜たちが返す言葉はない。仮面の言わんとするところが見えず、怪訝に眉根を寄せるのみだ。

 シーカーリウスは続けた。

「なににも縛られず、ただ自分の命をまっとうするだけでいいんだ……。そこにはシステムも……そう、使命なんてものもない」

 この仮面がそう言うのは、その身が機械だからか。

「シーカー……あんたはいったい」

 神楽夜は憐れみを含んで訊いた。

「<マキナ>さ。――ハ。どうせこうなるんなら、<レヴェル>にでもなったほうが、マシだったか……」

 仮面のくぼんだ双眼から、徐々に赤い光が薄れていく。

「でも、結局……俺、ら、には――」

 その言葉を最後に、シーカーリウスは完全に機能を停止した。

 自由。

 それこそ、この男が求めたものだったのだろうか。

 神楽夜は脳裏に、愛機<ヴェントゥス>の性能を嬉々として語っていた彼を思い出し、

「シーカー……」

 と、鎮魂を願い、その名をつぶやいた。

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