3 出会い
掘る。
石。
掘る。
鉄屑。
掘る。
何もない。
「狙っていた場所に行けたら違っていたのかな…」
諦めに近い気持ちでもう一度だけ掘る。
ーーグニャ
明らかに鉄でも地面でもない感覚。
「きた!」
遺物を壊さないよう、手で掘り進める。
「白い……玉?」
建材には見えない。でも、何だこれ。
白い玉を観察する。
接続部はない。
動力らしきものも見当たらない。
近くを通りかかった作業員を呼び止めた。
「これって遺物かなぁ?」
白い玉を手渡した。
「んー、見たことないね。鉄じゃなさそうだし綺麗に玉になってるから、遺物なんじゃないかな。
それより、最終便の時間が近づいてるよ!乗り遅れないようにしなよー!」
白い玉を返しつつ、去っていった。
白い玉をポケットにしまいながら、帰ろうと振り返ったその時、
「それ!」
突然声をかけられ、澪空は肩を跳ねさせる。
「それ、どこで見つけた?」
同じ作業着を着た少年が、白い玉を見つめていた。
「ここから少し行った所に埋まってたよ。これが何かわかるの?」
澪空は困惑しながらも返事をした。
「驚かしてごめん!俺、碧翔!たぶん、それが何かわかると思うから見せて!」
初対面のはずの澪空に屈託のない笑顔で手を差し出してきた。
碧翔の勢いに押され、つい、白い玉を渡してしまった。
このまま持ち逃げされたらどうしよう…
一抹の不安を覚えた澪空を置いて、碧翔は白い玉をまじまじと見つめる。
「やっぱり!これ、野球ボールだ!」
急に振り返り話し始めた碧翔。
「やきゅう?ぼーる?」
初めて聞いた言葉だった。
「資料で読んだことあるんだ。逆歴前には、このボールを投げ合う遊びがあったらしい!
せっかくだから、やってみようよ!」
言い終わるやいなや、澪空に向かってボールを軽く投げた。
「ちょっと!落として壊れたらどーするのよ!」
落とさないように慌ててキャッチする。
どこも壊れていないようでほっとした。
「そもそも、遊ぶってなに?」
やっと見つけた遺物を投げられ、不機嫌さをあらわに聞く。
「さぁ?俺もあんまりわからないけど、とりあえずそのボールは投げ合うらしいよ!次はこっちに投げて!もし壊れたら、夜5時間あげるよ!」
「5時間も!?」
この遺物が5時間以上の可能性も低い。
しかも、壊れた破片だって遺物だったら1時間にはなる。
少し悩んだが、碧翔へボールを投げた。
投げたと言っても、初めての事で下から放るのが精一杯。
碧翔のもとまで届かなかった。
「よし!今度はこっちから投げるよ!いくよー!」
勢いだけは良い碧翔だが、同じく初めての事で下から放るのが精一杯。でも澪空には届いた。
何回か投げ合っているうちに、お互いとどくようになった。
「ねぇ?これってなんの意味があるの?」
ボールを投げながら澪空は聞く。
「意味なんてないよ!強いていえば“楽しむ”って意味かな!」
ボールを投げ返しながら碧翔は言う。
“楽しむ”なんて考えたことがなかった…
そう思ったとき、遠くから警報が聞こえてきた。
《重力変動発生。ただちに居住区へ移動してください。繰り返します。……》
アナウンスが流れ始めると同時に、少しはなれた所から異音が聞こえてきた。
メキ……
メキメキ…
ガラガラガラ!
建造物の一部が“上”に落ちていく。
「早く離れるぞ!!」
碧翔に急かされ、澪空は慌てて捕りそこなったボールを拾いポケットに入れ、走り出した。
その様子を、崩れ落ちる建造物の影から黒い人影が見ていた。




