19 また明日
碧翔の部屋についた。
「失礼します…」
2度目となると、部屋にも少しなれてきた。
「とりあえず、適当に座ってよ。今日もお疲れさま」
「ありがとう」
そう言って、碧翔の向かい側の椅子に腰かける。
ふと視線を上げると、一瞬だけ目があったあと、すぐにそらされた。
わたしの顔が老けてるから、見ようとしないのかな…
シワの少ない肌…羨ましい…
碧翔は、目をそらしてしまった手前、視線が泳ぎながら話し始めた。
「なぁ、今日の場所、樹って人の日記にあった“コロニー”だよな…」
碧翔はそう言いながら、発掘したキーホルダーをポケットから取り出した。
「そうだね…その遺物がなにかはわからないけど、その写真に写ってる景色は、日記に挟まっていた写真に似ているもんね」
キーホルダーの中の写真を見ながら言った。
「逆歴は、あそこから始まったのかな…
これも、もしかしたら、琴音って人のものかもしれないね」
資料の中だけの話だったのが、今日見つけた遺物で一気に現実になったーー
2人の間に少しだけ無言が訪れた。
「そういえば、樹と琴音って、どういう関係だったんだろう」
続ける言葉が見つからず、ふとした疑問を口にした。
「“旅行”に行くってあったし、でも別に暮らしてるみたいだったから、夫婦になる前?あ、でも、伝えることがあるってあったからさらにその前…って、どういう関係なんだろうね」
話し出すと気になっていたことが一気に溢れてきた。
「そうだな…ここだと、子供・大人・夫婦しかないし、俺達みたいな夫婦になる前の関係ってことかな?」
「え?俺達みたいなってどういうこと?」
「あっ!いや、その…まぁ、なんだ。約束をして一緒に過ごす…みたいな感じかな」
言葉に詰まりながら話す碧翔。
その様子を見て、この話はあんまり続けると良くないのかと思い、話を変えることにした。
「なんか、ありがとうね!いろいろ話せて良かった!明日も今日と同じ場所で作業しよっか」
「あ、あぁ!そうだな!じゃ、また明日、朝礼で落ち合おう」
「明日は、一緒に遠くの目的地に行くね。樹の日記にあった“旅行”ってことかな。」
「そうだな!作業だけど“旅行”だな!楽しみだな。樹もこんな気持ちだったのかな」
「ふふ。そうかもしれないね。じゃ、また明日」
「また明日」
そう言うと、澪空は碧翔の部屋を後にした。
部屋の扉を閉めた後、碧翔は急に恥ずかしくなり、ベッドの布団に顔を埋めていた。
ーー「“旅行”か…少し変な感じ」
碧翔の部屋を出た後、歩きながら呟いた。頬が自然と緩んでいたことに気づかなかった。
ーープープープー
《おはようございます!只今、逆歴135年87日6時!天候は朱!今日も一日頑張りましょう!》
ーープープープー
左腕のデバイスを確認する
【夜残高:2時間】
何かがいつもと違ったような気がした。
けれど、その違和感はすぐに頭の中から消えていった。
今日は、初めての“旅行”。いつもの作業だろうけど、なんだか楽しみ。
そんなことを考えながら、部屋を後にした。




