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8 瀬川 舞さん

――――


白羽 ショウタ


――――


助手席のシートに乗り込むと隣にマユミさん、運転席には舞がスタンバイしていた。

3人で横並びに座ると、どこか旅行にでもいくような感じがする。

旅行に行きたいが。たとえどこかに行こうとも、舞がヘリコプターで連行しにくるんだな。

これが。


行き先は、アヤメさんの家と学校か。

昨日の調子なら、大丈夫だろうけども。


「助かるよ、舞くん。影が活発になる時間までに終わらせたいと思っててね。」


舞は背筋を伸ばしてハンドルを握り、いつものダルそうな雰囲気が消えている。


「いえ! マユミ部長のためなら、いつでもどこでも馳せ参じますよ!」


舞、どうした。キャラ違うじゃん。

自分を犠牲にしてまで働きたくないと言ってなかったか。

君は出世したくないんじゃろ。幸せは終業後のプライベートタイムにあると思うタイプじゃん。


「はい! マユミ部長がお望みでしたら、少女の身柄確保に向けて国家権力を使い、交通、通信、特殊部隊の配備ができますし、彼女が影対策府の入隊返事として 『はい』 と言うまで拘束もできます! いつでも指示さえ頂ければ実行に移しますよ!」


少女1人に、イカれてやがる。

人権とか、配慮とか色々考えて欲しい。


「舞さん、それはやめた方がいいな。無理強いしてもダメだ。この仕事は自分の心で動かないと、どうにもならないと思うな」


「ショウタさんが、珍しく正気を保ってますねー。今日のスイッチは入ってなかったですか」 「いつもまともですよ。休みが無いこの世界の方がおかしいでしょ」


そんな会話にゆっくりとマユミさんが振り向く。


「ハハハ! 舞くんらしくない回答だね。そうよね。無理はよくないわよね。今回の訪問は、退院後の様子見と彼女の意思で入隊してもらうための誘導だね。確保ではないわね。出来たら・・・、したいけど」


「合法な包囲と聞こえましたよ」 「舞さん? だめだって。昨日何かミリタリー映画でも見たんか?」


現場車両は、凄い勢いで進んでいく。

さすが舞だ、運転だけは上手い。なにより天下御免の影対策府の車である、普通の車両は横に寄る。


その時窓の外に、緑色の看板が見えた。

スターボックスだ。マユミさんもフォの64版が大好きだ。

マユミさんがそれを指さす。


「ああ、寄っていきましょう。連絡を取るところもあるから、少し止めてくれる? 私の処理で買ってくるよ、舞君は甘いペチペチでいいかな。ショウタくんは?」


「ブラックのLでお願いします」 「トール?」


「えっ? あっあっ」 「グランデのことです?」


「えっえっ、Lサイズがないの? マジか。レギュラーは小さいのでハイオクでお願いします?」


「車じゃないのよ? 了解、値段が高いやつのことだね」


マユミさんは、端末を片手に車を降りた。

どこかへ電話をかけながら、そのまま店内に入っていく。


ドアが閉まると舞さんと2人になった。

その瞬間だった。

舞さんが襲うような勢いでこちらに身を乗り出してきた。


「ショウタさん!? 何があったんですか!? マユミ部長がブチ切れてますよー?!」


「おおう? 何を言ってるんだね。全然普通じゃん」


「何言ってるんですか! 気づきませんか、あの気迫と笑顔! 2年前の人事で粛清の嵐が吹き荒れた時と同じ顔をしています。マユミ部長の異動と転勤の大粛清リストを思い出しますよ!」


いや、なにもかもが普通じゃない? なにもキレないよ。

舞はさらに続ける。


「ショウタさん。影対策府って耐性の関係で男性が少ないじゃないですかー。基本は女子社会でして頂点捕食者の行動には敏感なのです」 「捕食者とは、マユミさんのことかね」


「女性という仮面の下の機嫌を察知できないと生きていけないジャングルなのですー!」


そんな部署だったのか。初耳だな。

営業の時、内勤には生態系があるとは聞いていたが。


「怒ってます。何かの怒りを隠してますよ。うーん、ショウタさんが理由じゃないなら、なんですかね? 推しのチュバーが引退しましたかね。それなら機嫌が悪くなりますね」


「マユミさんは、そんな事で怒らないと思うよ。引退した彼ら彼女らとは、お金だけの関係だと思うんだ」 「言い方!? デリカシーをご存じですか」


いや、しかし機嫌が悪いのか? そうは見えない。


「考えすぎじゃないかな。今日も平和に過ごそうよ」 「ですかねー。粛清人事が来ない事を祈りましょう」


「そもそもさ、休みが無いから支援部の機嫌がいいわけなくない? いつも機嫌悪いけども?? 日頃のストレスを表に出していいなら、今すぐにでも裸で店内に入店するけど?」


「あっ、スイッチ入りましたか。やめてください、民間のSNS削除大変なんですよ」


「逆にさ、この労働環境でハッピーだったら入院だよ、入院。支援部の終わりだよね。あー、幸せになりてぇなぁあああああああああああ!? いや、ハッピー! とてもハッピーだよ!」


ジッと目を見つめた後いきなり後、部座席のケースを指さす。

舞の赤メッシュがさらりと流れた。


「ショウタさんにハッピーの症状がでたら、あれを打てと言われてるんですが大丈夫ですよね」


「・・・何アレ?」 「他の都だとガチハッピーになる人が多いので、鎮静剤みたいですね。どこも大変みたいです」


そうだよな。どこもギリギリだよな。

うちは奇跡的に、〇者や 『時間切れ』 がここ5年出てないけども。


その時、店の自動ドアが開きマユミさんが袋を片手に戻って来た。

一度、外にでてマユミさんにお礼を言い迎え入れる。


「お待たせ、いきましょう」


いつも通りの笑顔だ。何も問題ないと思うが。


「はい! いますぐ出ます!」


頂いたブラックコーヒーも温かい。

でも向かう先は、アヤメさんの家と学校。

温かいどころでは無い、試練と言う名の炎が燃え盛っていた。


―――――


瀬川 舞


――――


ショウタさんが気づいてくれたようです。


マユミ部長がご立腹です。

ずーっと順調に影の処理をしてきましたが、ついに色々と限界へ達したのでしょうか。

私の勘だと、ショウタさんが何かしたと思うのですが。


支援部の一番のストレスの原因は休みなしの労働だとは思います。

その代わり、国家権力と職場での自由が与えられてます。

戦闘部と支援部は、国が 「もうこんな仕事やってられません」 を阻止するため全力で支援しています。

たとえ、超大量のお寿司、ピザを注文されても黙認する。

結果的に私たちが食べれるので、どんどん国のお金で頼んでください。


そもそも空き時間は影が出現するまで、映画とゲームと漫画とサイトチェックしたりしてみんなで遊んでいるじゃないですかー。

食事も楽しく作って共同生活してますよね。望めば清掃もついてきますし。

理想的な職場じゃないですか、お盆正月、ゴールデンウィーク、大型連休が関係ないのはイヤですけど。


でも、人員が来ないことはマユミ部長も理解していると思います。

耐性者には労働義務がありますが、〇にたくないのでみなさん司令部にくるのですから。


それを踏まえますと、現場に出る人間は少しイっちゃってます。

そして、そんな女性社会の生態系を回しているのがショウタさんです。


先ほど、黒瀬アヤメさんのご両親への説明が終わりました。

私は中に入らなかったですが、退院後の確認と、影耐性の検査結果、進路相談と言った所でしょうか。


――あと、そうですね。


黒瀬アヤメさんが黒瀬アヤメさんなのか。


影による弊害があるのではないかと、疑っています。影で時間切れが治せるわけがないはず。

マユミ部長から司令総括へ極秘司令として、私に回ってきました。

他に誰も知りません。


私、ショウタさんの隣でお仕事をしているだけで良かったんですけどね。

簡単に少女を処理すると、ショウタさんが怒ると思いますし、この件はさすがにお国も怒ると思います。

でも、ショウタさんがいなくなると。人が〇にます。

他の都で〇者と 『時間切れ』 が大量に出ているのに、この都が大丈夫なのはショウタさんが私の隣にいるからですよ。


ようやく、ここでマユミ部長の怒りを隠している様子に気づいたみたいです。

たぶんですけど、何とかしてくれます。私たちを何度も救ってくれています。

でも、私にだけしか見せない顔があるんですよ。


ショウタさんは星の数ほど、戦闘部を救っています。

被弾した人の復帰は難しいはずですが、彼の才能により復帰させております。

影の中に無制限で入れて、メンタル面をケアしてくれる貴重で頼りになる存在です。

ただし、戦闘能力が皆無です。

残念ながら影の中に現れる疾風のチート貴公子とはいきませんか。


ちなみに私は、影の中に入ると空間把握能力が突出します。

すごくないですか? 見えないハズなのに周囲がわかるんですよ、すごいですよね。

滞在時間は15分ほどですが、超高速で戦闘不能者を回収できるんですよ。


いつもショウタさんの動画を見ると思い出します。

戦闘時間が長引いてしまい、様子を見に行った所、アカネ先輩が被弾していて私が回収しなければならなかったんです。

もう時間切れの瀬戸際。もう意識がない時にですね。私が私なのかわからなくて、ただ運転をミスったらアカネ先輩の命がなくなる緊張感の中です。

ぎゅっと後ろから手を握られ、後ろから囁かれたのを毎晩感じています。


「舞、大丈夫だよ。緊張という生存本能が思考を奪うんだ。何に乗っても上手なんだから、今更、緊張する必要なくない? できるよ、できる。間に合うよ」


耳にあの感触が残っています。

初めて呼び捨てにされた時、心臓を貫かれましたよね。


「瀬川 舞、24歳。 彼氏はいないね。はよ見つけろって、休日に動画見て過ごすと自分みたくなるよ。若い時間は大切に使おうね。今からさぁ、活動して吟味して幸せをその手に掴んでみたら?」


デリカシーの欠片もないです、理想するセリフと現実の誤差が激しいです。

何も心配いらないとはこういうことでしょうか。この時から恋愛ができなくなりましたよね。

好きな人と毎日一緒に座っている。この席を譲る気はないです。

この引力を解決するため、推しを探す毎日です。私の心はどうなってしまったのでしょうか。


私の彼氏(吟味中)について、そんな事を考えていた時です。


「マユミさん、自分何かしましたか? いつもの顔とは違います、怒ってますよね」


おお、来ました。動いてくれましたか!


「ど、どうしてそう思うのかな? 私はいつも通りよ」


ショウタさんの目を見ないマユミ部長を振り向かせようと、彼は腕を握ります。


「マユミさんを信頼していますし、自分の恩人です。今でも一緒に暮らしているような、家族より顔を合わしている信頼できる人です。これでは、うまくいきません。マユミさんだってわかっているでしょう。話し合いませんか?」


「そ、そうね。ショウタ君。隠し事をしてないかい? いえ、そういうことではないのよ。信頼はしているわ。でも・・・」


「隠し事なんて、この仕事をしていたら誰もがたくさんあるじゃないですか。でも信じて欲しいんです。マユミさんのためにやっている隠し事ことなんて山ほどあります。それで怒っているとしたら、自分は悲しい」


「するい言い方をするわね。もちろん、わかっているわよ。でも・・・」


まさに私も隠し事中ですね。少女監視処理の事をショウタさんに言っていません。

でも様子が、ちょっと。なんでしょう。

あの~、隣に私がいるのをわかってますか? 急に昼ドラマのような、上司と部下のオフィスラブが始まりました。

マユミ部長、隙がないように見えて実は押されると弱いんですかね?


さて、アヤメさんのいる学校につきました。

どうしましょう。この雰囲気で 『つきましたけど』 とか言う空気を読まない発言ができません。

胸キュンイベントの話し合いをしてもらってても結構ですが、そろそろ影のチャイムが鳴ってもおかしくありませんよ。


「先に行っているわね」


ドアから飛び出し、校舎に駆けていくマユミ部長。


「待ってください、話はまだ・・・」 とすぐに追いかけるショウタさん。


『ショウタさん、追ってください!』 とか、言ってみたかったですけど。

言う前に追っていきましたね。

できる大人たちです。


私は、高精度の双眼鏡の装備を荷物から取り出します。


さて様子を伺いますか。アヤメさんの監視を言い渡されております。

何か異常があったら報告するようにと、マユミ部長から受けてます。


そんな時でした、後ろからもう一つ現場車両が近づいてきました。

キキッと言う音と同時に、中から出て来たのは、紫色のルリちゃんと白のアカネ先輩です。


「舞ちゃん、マユミさんに言われてきたよ~」 「舞、状況はどうだ? 影が出現するらしいじゃないか」


おや、ちょっと美人でスタイルが良く、よくテレビやインタビューを受ける2人ですが、災害指定されるような超人たちです。


「ルリちゃん、アカネ先輩。どうしてここに?」


「マユミさんに武力が必要になるかもって言われて~」 「そうだな。あと白羽さんの様子を見に来たぜ」


2人とも私服ですね。

にこやかに、高性能双眼鏡を出してきました。


「舞ちゃんは監視って言われてるんでしょ?」 「あれ、白羽さんが見当たらないな」


2人は無敵です。理屈と力では止める事はできません。

戦闘部に情報はいっていないハズですが、なんとなくわかりますか。

ルリちゃんが、カマをかけてきましたね。


「貴重な仕事仲間候補ですからねー! 例の少女は2階の教室の中、マユミ部長は・・・、ショウタさんとどこですかね。客室だと思いますよ。映ったとしても、今日は刺激が強い映像になりそうですー」


3人で少女の教室を見ることになった。


「う~ん、お兄さんと女子高生は歳の差があるから合わないですよね。早く社会に出てこないかな~。現実を教えてあげないとね」


「クックック、戦闘部にもらうとしようぜ。鍛えてみるかな」


めちゃくちゃ邪悪な先輩たちですー。

お相撲業界で言う所の 『可愛がり』 の話でしょうか。


最初は、司令部から徐々に現場でいいんじゃないですかねー。

進学もしたいと思いますよ、大学は厳しい社会に出るまでの猶予な所がありますし。


そして双眼鏡に見える、黒髪の少女は手づかみでお昼ごはんを食べ始めた。

とんでもない絵面に衝撃を覚えます。これは、処理対象では。

マユミ部長が、2人を呼んだ理由がわかりましたよ。どの程度の危険性があるか未知数ですね。




いつもありがとうございます。


ジャンルと言う物に悩んでいます。


恋愛、ラブコメ、ホラー、SF。ローファンタジ―なんだろうけど。

どれじゃろな。


でも、ロボット大戦に出ているエヴァはロボットだったのだろう。

だが製作者は、特撮ものと言っているが。


何が正しいかわからんね。これは。


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