6 琥珀マユミさん
6 琥珀 マユミさん
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白羽 ショウタ
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時計は夜8時を回っていた。
公務住宅のヘリポートと巨大駐車場にはカメラが付いている。
バレたら問題になる、この時間に女子高生が来ることは絶対にないよね。
大体のことはもみ消せるが、職場的にばれたら詰問がくるだろう。 『パパ活してる? いくら払ったの?』 とか言われたくない。
命の恩人である自分の所に、アヤメさんが来ても問題ないと思うが、大事にはしないで欲しい。
そもそも、彼女とよく話す必要があるのは間違いない。今後、どうするのか打ち合わせるつもりであった。
だけど、人の家に勝手に入って何してんだ? コイツはよぉ。
今日は鍵かけ忘れたのだろうか。それと、コンロの火は消したっけ。エアコンの電源消した覚えがないし、窓って開けた後に閉めたっけ? あっ、洗濯物取り出してない気がする。
家の穴と言うのは、思い出せばキリがない。鍵は開いていたのだろう。
玄関を開けると、廊下の奥、リビングの明かりがついていた。
扉をあけると、もにゅもにゅクッションの上に少女が座っている。
黒い瞳が、こちらを見た。
黒瀬 アヤメ。 自分はその顔に影を落とした。
その瞳は戦闘部の瞳より澄んでいるが、影に操られているのだろうか。
「もしもしもし、ビックリな行動力だな? 何してんの? と、影に言っても仕方が無いか? もう初日にアウトだよ。何してんの。マジで人の家で何くつろいでるの。ここ政府の公務住宅なんだけど。いや、何から話せばいい。常識からか? もうさ、山に家買ってやるから隠遁してそこに住んでくれない? 影に普通の生活とか無理じゃねーかな」
「・・・すみません」 「あれ? アヤメさん?」
思っていた反応と違う。
アヤメさんが深々と頭を下げた。
「あ、あの普通の生活は、慣れるまで無理だと思うんです。体のコントロールを渡した途端に、気づいたらショウタさんの家クッションに座ってました。影の方が意識が強いので、この人の家に勝手に入る品性のない行動に逆らえませんでした・・・。本当にすみません」
「めっちゃ常識ある子で助かりました。つまり、今後その邪悪な影を取り除く方法を考えていきましょう」
いい子じゃん。育ちが良いとこうも話が通じるとは。
ヒスらないところに知性を感じる。
「でも、普通の生活は無理です! 感覚でわかるんですが、ショウタさんの怒りを感じて、今、コントロールを私にしています! 私の脳から、女子高生に価値があることを学習しています。もう一つの意識が姑息、姑息なんですよ! ショウタさんが怒りにくいのを知っているんです! 本当にこれは影ですか? 人間より人間してますって!」
「あ、ヒスってる・・・、失礼。えっと?」
「またすぐに学校が始まりますし、体は前よりも健康な数字が出ています。でも、一日の半分は外から自分を見る感じがあるんです。どうしたらいいんですか!? 私はいったい何なんですか!?」
わぁ、どうしよう。
不法侵入者が逆ギレを起こしとるわ。
言いたいことは、わかるがヒスをなだめなきゃならない。
影耐性の関係で女性が多い職場だから習得済なんだよね。
「待って欲しい。落ち着いて。自分もゆっくりアヤメさんと話したかったんだ」
そしてこれはクレーム対応だ。営業の時に学んだ事だ。
理屈うんぬんより、話を聞いてなだめて、提案するだけのことだ。
「そうだね、親に連絡入れてあるかな? 遅くなったら心配するでしょう。でも今どきの子は違うのかな? 準備が出来たら、少し話そうか。帰りはタクシーで帰ってもらうから安心して」
「はい、大丈夫です。親には命の恩人の住所が聞けたので、突撃してきますと伝えてあります」
うーん、ソレ大丈夫か? それともアヤメさんも家襲撃の共犯者だったってこと?
「さて、ルールを決めよう。まず、影に代わってくれる? リアルに 『私メリーさん、今家の中にいるの』 をやられると思わなかったわ。マジびびったわ。おう、中身出てこいや」
アヤメさんの顔半分が暗くなった気がする。
女子高校生の声で話す人類の敵。
「ショウタ。ワタシたちは話し合わなければならない。そうだナ?
これは強引だったかもしれなイ。謝る。だが、必死だったんダ。アヤメは家族にも会うのを恐れ、学校を恐れ、自分と言う存在を恐れている。これからどうなるなんてわからないし、不安でショウタに会いにきた。ゆっくりとこれからについては話そうじゃないか、共犯者ヨ」
あ、影が学習して凄い人間心理をついてくる。
これレスバに勝てるかな。
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琥珀 マユミ
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酒の匂いをシャワーで流す。
濡れた髪をタオルで押さえながら支援部のデスクについた。
奥に見えるのは支援部の生活空間で、もはや自宅よりも自宅らしくなっている。
私の生活色より、男の生活色が強くなっているのは不思議な感覚だ。
転がったゲーム機、成人漫画、5.1サウンドの音響。まるでリビングが実兄の部屋みたいだ。
そんな環境で小さい頃私は育ったのを覚えている。
居心地が悪いとは思わないね。
洗濯だけは各自でやっている。何より、仕事の合間にご飯を作ってくれて、一緒に趣味の時間を過ごし、掃除をしてくれている。これは半同棲状態ではないだろうか。
お互い理解ある生活、ならば仕事は私の担当である。
まさか、仕事場で理想の結婚生活が味わえるとは・・・、少し虚しいものだ。
そんな空間に戦闘部のルリが置いていったファムコンが見える。お父さんの私物を持って来たのだろうか。
ソレはちょっと世代が上だ。ショウタくんと私、64ビット世代なのだけども。ファムコンはさすがにやらないと思うのよね。
それらを横目に見ながら薄手のカーディガンを羽織った。
女としての色気は、忙しさで消していい物ではない。その両立こそが女性の武器だね。
疲れた時ほど鏡の自分を確認する。人前に立てる顔をしているか、大切なことだ。
濃いブラックのコーヒー片手に、データをまとめる。
司令部に提出する報告書が残っている。
今週だけでも、今日は2件の影出現、昨日は少女の奇跡的な搬送と帰還。
戦闘部隊の動画記録、装備品の補充、司令部への書類提出などなど。
他の細かい仕事を私がやる。
影の中に入る彼には、消耗が激しい領域内の仕事に集中させたい。
デスクワークと現場の両立なんて、2人しかいない部署でやることではない。
もっと言うと司令部に人員をよこせ。と言いたいけど、影耐性がある人間はまず他都市の戦闘部へさらわれる。
まぁ~、基本来ないわね。本当にどうするのよ。
仕事場で最大権力を持つことを願っていたけど、思わぬ形で達成してしまった。
間違いなく、ここでは私たちが支配的だ。戦闘部を除いてだけど。
あそこが結局一番、えらいのよね。あそこがやられたら、立ち行かないしね。
今後は例の少女をここで確保するため、色々と国家権力で手を出す必要がある。
ショウタくんが助け、私が捕まえたも当然だ。時期の検査で、彼女の影耐性が判明するだろう。
「どうも、あの時助けた、猟師でございます。よし、私の嫁になれ」 と、鶴の恩返しの逆バージョン。恩着せがましい昔話をしようではないか。
私たちが助けたのだ。ここに来るのは、確定事項だね。
さて、画面を見ると端末に映像データが並ぶ。
昨日より前はチェック済だ。
今日の2件は獣型の影、アカネとルリによる高速処理。
問題無し。
まずいのはボディカメラには戦闘部が被弾た時の記録が残ること。
嘔吐、失禁、痙攣。記憶混濁、言語障害が映ることがある。
とても画面に出せないし、彼女たちの尊厳と言う物がある。
ショウタくんがリテラシーをわかっていて、いいように編集して提出してくれている。基本的に彼を信頼し任せている。
そして昨日の少女アヤメの救出編が映る。
ルリとアヤメの映像は司令部の若手に大人気だ。
特に、ルリはわざと被弾する癖があるではないか。
そしてショウタくんがかける甘い囁き。死と恐怖の狭間で 「ねぇ、大丈夫? なんのことないよ、ルリさん」
「大丈夫、アカネさんは強いよ。立てる? 無理なら言ってね」 こんな台詞を抱きしめられ囁かれたら。脳が焼ける。
映像を見返してみても、脳がジュウウウウと油を引いたような音をたてる。胸で言ったらキュンキュンする。
依存しない訳がない。ストーカー予備軍の完成だね。
例のごとく司令部の舞を中心とした若手たちにより、今日のショウタくんのセリフに点数がつくのだろう。
今回のは80点ぐらい。
ちょい悪王子のセリフのようだった。「彼氏はいないね?」 と、この一言がとても独占欲が強くていやらしく感じる。私もこういったシーンを見るのが大好きだ。
「ん・・・?」
指先が止まった。
データの中に妙な空白がある。グロシーンを飛ばしたような流れではない。
タイムスタンプに改ざんの形跡がある。
「記録障害か?」 影の領域内では映像の欠落は珍しくない。
電波も死ぬらしい。領域内で電波が飛ばないのはそう言われている。技術的なことは詳しくないがそういう例えだ。
だが、違うな。映像の処理が意図的に切り取られている。
まぁ、ショウタくんが消したならいいかな。
でも、この先の少女救出の時は酷い姿だったとして、前後が無いのはちょっと困る。
どうするか、私の権限で見るのも良くないな。
彼は配慮をしてくれたのだろうし。
その日は、少し気分が良かったのかもしれない。酒が残っていたかもしれない。
人の好奇心や知的欲求は、本当に人を幸せにする本能なのか。
知らなければ信じられた人がいる。知らなければ、明日も同じ笑顔の関係がある。
大人になってそんなことは、わかっていたと思っていた。
パスワードを入れ、私の権限で復元してしまった。
警告が表示される。
【この操作は、記録されます】 「知ってる。私がその管理権限者だからね」
復元処理が始まった。
何か、ざわつく。第6感みたいなものがうなじをチリチリと駆ける。
昔に読んだ女性誌には 『男が浮気をした時の感覚』 と、書いてあったか。
画面の中で、ショウタくんの呼吸が荒れていた。
床に倒れている少女、青く腫れた腕、吐瀉物、破れた服。
影対策府にいれば、一目でわかる。 『時間切れ』 の状態だ。
彼女はもう、彼女ではない。
うぅうんん!? じゃあ、なぜ彼女は健康に生きている!?
画面の中で彼は、小さく消えそうな影を見つめている。
「ワタシを使えば彼女は生きル」
映像に目を疑った。
動けない。私は動けなかった。
動画の続きが切れても、ただ画面を見続けた。
「ダメ、ダメだよ、ショウタ。どうして・・・、どうして相談してくれなかったんだ」
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白羽 ショウタ
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目の前の少女とこれからの話をしていた。
今の状態と感覚について話をした。アヤメさんは影ではない。
学習した影はアヤメさんを模すことができるのも確認できた。
間違いなく、この少女はアヤメさんだ。
「大丈夫そうじゃないですか。アイデンティティ? 自己確立としてみても、対外的にあなたという存在は間違いなくアヤメさんだと思います。たまに影が変なところが出ますが、大丈夫そうじゃないですか」
本人は今までの違いに困惑しているが、外見と性格と行動原理がアヤメさんのものなら、それは彼女である。
中身が変わっても、外見と声が似ていたら人はソレと認識する。
声優が変わるアニメではよくあることだ。
Vちゅばーもそうすればいいのにね。2代目と言ってさ。たぶん、中身変わってもやっていける。
中身がわからん彼女より、心の隙間を埋めてくれる彼女ならどっちでもいい。どっちも幻想なんだから。
そんなことを考えていた、その時だった。
ピンポーン、ピンポーン
こんな時間に来客だ。こんな夜分遅くにくるものは、絶対にトラブルだ。
夜に鳴る仕事の携帯は地獄からの使者だし、夜の知らせは、8割がた不幸の知らせ。昔の人はそれを知っていた。
自分とアヤメさんが同時に固まる。
『ショウタ』 「わかっている。女子高校生モードに変われ」
バレたか? マユミさんか、司令部か。それとも戦闘部が首を取りに来たのか。
もちろんそうじゃないかもと自分に言い聞かせる。
いやな想像だけが膨らむ。夜遅い宅急便か何かだろうよ。たぶん。
「ショウタさん・・・」
目の前の少女は震えていた。
「大丈夫、大丈夫。考えすぎだよ。ピザの配達か何かに決まってるんじゃん。定時のサブスクみたいなもん。宅急便には、少し遅いよな・・・」
玄関に向かいドアモニターを見ると、酒気を帯びたアカネさんとルリさんが映っていた。
先ほどの飲みの私服が見えて、少し安心した。
「大丈夫じゃねーなぁ。さっき会ったばっかりだけど何しに来てんだ」
ドンドンドンドドドドン、ドアが揺れる。
「お兄さんいますよね」 「白羽さん、いるんだろ?」
「何の御用でしょうか。夜分遅くに男性宅を訪れるとか何、れーぷでもしにきたの? 一般職員を力ずくでねじ伏せてれーぷする気でしょう。 お帰りください」
「お兄さんが飲み会を急に抜けたので、心配になってきました。制服の女性を家に入れてますね」
「不純だ。不純。職場に花ばっかりというのに。手を出さずにこういったサービスの利用はぁああああ?!」
コイツら、権限を利用して何をしてるんだ。
怖すぎる。
ドアをそっと開けた瞬間、無法者の2人がするりと入ってきた。
いつもありがとうございます。
最近、話題のスカーレットをこの前みたんですけど。
アイドルの大根役者や、こぼうの様なアイドル役者がわめき叫ぶ2時間拷問される様な、あの邦画たちに比べればですが。
面白い作品だったんじゃないでしょうか。
面白さとは、何かを基準値にしなければ議論になりません。
まさか、「うーん、ジプーリの時代を超える時代の目撃者になれるとは」 と、当時感動した作品、夏戦争や時間逆戻り少女(れーぷされない方)を基準にしたというのですか。
なんて恐ろしい




