3 アヤメと言う少女
―――
少女を抱え、赤色のビーコンが光る道を飛ばした。
静かな影世界から戻るとサイレン音が現実に引き戻してくる。
「誰か、ここに!未避難者です! 呼吸あります! 意識もあるようです!」
インカムと周囲に向けて、大声で呼びかける。
対影スーツのマユミさんが一目散に駆けつけてくれた。
「司令部急げ! 救急搬送だ! やれることを全力でやるわよ! 対影汚染チェック、心拍と脳波の確認、搬送中に持ち物を確認してご家族に連絡をとれる方法を探して!」
黄色の髪を振り乱しながらマユミさんの指示が飛ぶ。
その時だった。
「・・・私助かっ・・・」
少女の声がやけに響いた。
全ての時が止まった。普通に考えたらありえないことだろう。
あの影は約束は守ってくれたのか? 手放しに喜べない。
このまま何も問題が無いとかありえない。マユミさんに相談するべきだ。
だが、このまま何もなければ助かっただけの話だ。
全て丸く収まるはず。もしも少女が乗っ取っられいてたら処理されるだけ。
自分の人生の墓場までこの重りはついて回るだろうな。
もしも、影が少女を人質に取った場合、自分は終わるだろうか。
職務停止、事情聴取、投獄まで見えてくる。
「意識がある? ・・・あり得ないわ。いえ、まさかショウタさんと同じ超耐性者!? あなた、名前を言える?」
「・・・アヤメ」
影領域から、意識を持ち戻って来たのだ。
意識回復の世界初の例か、高耐性者の出現に見えるだろう。
「全力で飛ばして! 私も同乗する! 対影府指定病院へ! 超耐性者よぉおおおお! 司令総括に全力でこの子の確保を打診だ! もしも他に取られたら、あいつの残り少ない髪ごと引き抜く!」
即座に医療関係者と救急車に飛び乗り消えて行った。
少女は超耐性者ではないと思う。
奇跡的に助かったケースかもしれないじゃないですかとは、言えなかった。
自分の確保および移動担当の小柄な瀬川 舞が目を輝かせてこちらに走って来た。
「さすがです! 人の命を救ったんですよ! ショウタさんの耐性なしでは救えなかったと思います。大手柄ですよ! お見事です! 性格が悪くてもあっ・・・。仕事はきっちりですね!」
「いや・・・。うん、たまたまだよ」
「!? あれ、どちらさまですか。いつもの 『それじゃあ、明日休みます』 と言って、司令部を恐怖のどん底に叩き落とす、ショウタさんじゃないですよね。 支援部なしの現場とか誰か本当に〇にます。許してください。
そもそも、ショウタさんがそういう感じですから、影世界胸キュンイベントと言う勝ち確定な状態もわからないんですよね~。ショウタさん、病院いきましょう! 今日どこかおかしいですよ」
若さは無敵だよな~。よう喋るわ。
無言で舞に中指だけを立てて立ち尽くす。1本じゃたりないと思うので、両手で2本目も立てる。
「あっ、いつも通りですね。その〇ァッキュ~のパターンでしたか」
後処理が残ってるから、支援部で仕事だな。カメラデータも一応消しておこう。
少女の結果が気になって、今日は家に帰る気もしない。マユミさんも処理が終われば、支援部に帰ってくるだろう。
純粋な賞賛に胸が痛み、心が晴れないままマイホームとも呼べる支援部に戻った。
―――
翌日、マユミさんは夜遅くに帰ってきてそのまま寝た様だ。
久しぶりにここに泊まった気がする。夜はお互いのプライベート時間を考慮して、いつも自分は夜ご飯を一緒に食べたら帰る様にしている。
なぜか影対策府の支援部デスク裏には、全て揃った広く優雅な生活空間がある。
我々が健全に働けるような配慮に涙と怒りがこみ上げる。
では、目玉焼きをオリーブオイルで焼きます。
その後、油を利用して玉ねぎベーコン炒めます、もしも冷蔵庫にピーマンがありましたら刻んで入れてください。そこにチーズと市販のピザソースを食パンにかけて焼きますと、簡単においしい朝食が取れますが、朝から油分が多い気がします。
高いモカがたっぷり入ったコーヒーも淹れます。コンビニ並みのコーヒーメーカーが用意されていますし?
食費と家電は全部公費で落とせるんですね。なぜでしょうか。
こればかりは、感謝するところだ。
マユミさんはまだ寝ているが、始業の8時には全ての準備を終えて座るだろう。
メッセージで断りをいれて、少女アヤメが運ばれた指定病院に向かうことにした。
司令部の舞は始業1時間前に来ている。
1時間前に来た人間を使う。アラサーの元営業では当たり前の事で慈悲は無い。会社は上の都合で動くものだ。
舞はいつでも自分を現場に拉致できるように、始業中は常に近くにいることが仕事だ。
支援部を出ようとしたところで、朝食目当てのルリさんと鉢合わせた。
「お兄さん、おはようございます。お邪魔します。それと聞きましたよ、昨日大変だったみたいですね。邪魔したくなかったから帰りました。さすがですね、お兄さんの耐性がなかったら助からなかったと思います」
「おはようございます。・・・そうですかね。運んだだけですね」
ルリさんは紫の髪を流し、首をかしげる。
「お兄さん」 「はい?」
「いつもの 『ルリさん、今日休みますね。どうか、どうか〇なないで!』 って本気か冗談かもわからない狂気のセリフで戦闘部を恐怖のどん底に突き落とす 「もうそのセリフはいいから。はい、自分出ますんでとっとと飯食ったら、自分の所に戻ってくれます? 少女の様子みにいきたいねん」
「よかった。正常ですね。いってらっしゃい、速めに帰ってきてくださいね。今日は待機日なので。支援部にいます。現場出動まで一緒に超・竹取物語を見ましょう」
「イヤです」
10代20代のアニメ映画は感性的にきつい。目がチカチカする。
30代の人間が味わった、ポケモソ効果なんて目じゃないぐらいにチカチカする。
まだ見てない 『終わりなきブルーレット』 にしよう。
そして、ルリさんを振り切り、司令部のドアを勢いよく開ける。
「おはようございます! みなさま今日もお仕事ですね! うれしいなぁ! 働けるって事にわくわくするんですよね! 舞さん! お仕事ですよ! さぁ、始業前にお仕事にいきましょう! 惑星を綺麗にして、売るお仕事です! いきますよ! ザーボンさん、舞さん!」
司令部の誰もが目を合わせてくれない。挨拶もしてくれない。
一番奥の立派なディスクの司令総括の親父殿と目が合った気がしたが、目をそらされた。
自分に絡まれたくないだろう。マジにいつ支援部に人員来るんだよ。
しばくぞ。
舞が席からこっそりとこっちを覗いている。
「ショウタさん、あの、まだ始業前で。まとめサイトをまだ巡回しきれてないといいますか。まだデイリーも終わらせてないんですが。この時間に終わらせるのが日課でして」
「さぁ! いきますよ! 舞さん! ドドリアンさん!」
今の20代にこのネタわかんねーだろうな。忍者世代・・・、いやオニ滅世代だもんな。
考えると冷凍庫様は意外とホワイトな上司だ。意外と部下思いだった気がする。
そしてお仕事だぞ。人を365日働かせて、嫌とは言うまいね?
「舞くん・・・、行ってやってくれないか・・・」
さすが総括、わかってるじゃない。
絶望した表情をした舞が渋々と席を立つ。
そして彼女の耳元にそっと囁く。
「昨日の少女の病院までお願いします。病院で待ってる時間好きな事してれば?
途中でスターボックス寄ろうか。全部支援部で持つからさ。ペチペチの呪文唱えて縦に色々乗っけたらどう?
あれはコーヒなのか、ペチペチーノなのか。自分の年代には、マジにラーメンの次郎系より注文が難しく感じるんだけど、お洒落な所怖いから一緒に注文してくれない?」
笑いながら彼女は頷いた。
――――
――現場車両には甘い匂いが満ちていた。
じゅるっ、ジュルルルルル。
ハンドルを握りながら、舞がペチペチーノを勢いよく吸い込んでいる。
赤のメッシュが振動のたびにさらりと揺れた。
そして自分の手元にある。胸やけがしそうなクリームの量にテンションが下がる。
―――半分も飲めないかもしれない。
いつからこうなってしまったのか。いや、日本では34歳以下は若者と定義されているはずだ。
自分は、まだ若者のハズである。胃が 『マジやめとけ。焼けるぞ』 と警告を出している。
―――ジュルルルル。車内に濁音が響いた。
舞の若さがなせる力だろう。もう音だけでお腹いっぱいだわ。
もういらない。口をつけてしまった以上 『舞さん、ごめん。飲んでくれない?』 とは言えない。
助けてくれ。
病院に着くころには、舞の報告で少女の状態もある程度わかっていた。
マユミさんがまとめてくれたみたいだ。
黒瀬 アヤメ。 高校を今年の4月卒業でどこぞの社長令嬢。
意識は回復、会話も可能。精神汚染もなし。
対影の数値に不審な点はあるものの、精神が危険と判断される反応はなし。
いいじゃない。完璧じゃん。
あの影はただ助けてくれただけか? そんな感じはまったくしなかったが。
彼女が無事かどうか確かめるのもある。
だが自分のしたことが正しかったのか、それを確かめに来たのだ。
舞を車内に残し、アヤメのいる病室へ向かう。
病室の扉を叩く。「大変なところ、失礼します」
白いベットに、黒髪の少女がいた。
顔は白いが品がある。指先の揃え方にも育ちの良さが見える。
昨日、吐しゃ物で床を濡らし、涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた同じ人物とは思えない。
飲み会で初対面の女子がキラキラを出した場面に遭遇すると恋愛が成立しない。
初見でその子の中身と内容物まで知ってしまうと言う、データー量を超えてしまう現象だ。
「ショウタさんですか?」
少女は少しだけ体を起こそうとした。
少し声が弱い。
「おっと、そのままで大丈夫です。無理しないで」
慌てて手で制止する。
「マユミさんから、私を助けて下さった方だと伺いました」
彼女が頭を下げると同時に自分も頭を下げる。
きちんとした家の子だ。さすが、令嬢だ。
「ありがとうございます。私は ・・・黒瀬アヤメです。本当にありがとうございます。両親も直接お礼したいと話しておりました」
大丈夫そうじゃん。
影の影響もなさそうだし、影の反応も感知されていないし領域出現も予測されてない。
ならば、大人の余裕で対応しましょう。
「よかった。話せるくらいまで戻って本当に安心したよ。君が最後まで諦めずにあそこまで出て来てくれたから助けられた。怖かっただろうに、よく頑張ったね」
見たか。これが営業畑の人間力である。
本心を隠し、利益のために最善の言葉を選ぶ。みんなが幸せになるウソは、いい言葉になるんだよ。
アヤメは少しだけ目を細めると、ニコリと微笑んだ。
これは将来、美人になるわ。世の中の男性がほっとかないわ。
いや、もう十分に美人か。そして安心して欲しい、昨日の内容物の状況は記録からは消された。
「はい、本当にありがとうございます」
よかった。
本当にただ、助かったのかもしれない。奇跡的に影が助けてくれた。
そういう事にできるかもしれない。
「あの・・・、それでショウタさんにどうしても聞きたくて」 「はい?」
「一つだけ聞いてもいいですか?」 「どうぞどうぞ」
「私、まだ人間ですか?」
思わず、呼吸を忘れてしまった。心臓も止まったと思う。
一番聞きたくなかった言葉が、彼女の口から出てきてしまった。
彼女を肯定しなければならない 『ぜんぜん大丈夫、君は人間だよ。安心して』 と。
大人として、助けた人間として言わないといけない。だが言葉が出てこない。
少女の人生を狂わせた。
その重みが、足元から力を奪っていく。
次の瞬間、アヤメの顔半分が影に包まれた。
黒が広がる。
昨日自分が置いたもので、人類の敵。
「人間かどうかか。それは定義によるゾ、アヤメ」
あああああ、やっちまった。
完全に禁忌を犯した。キメラ、合成獣を作ってしまった。
「会いたかったゾ、ショウタ。アヤメの脳で学習した。まずは、触ってくれないか? 陽と陰がくっついている状況こそ。宇宙の真理ダ」
アヤメの影は、微笑んでいた。
そいつは、昨日よりずっと上手く言葉を話した。
いつもありがとうございます。
コツコツやっていこうと思います。
そうそう。
美容業界の話を聞く事がありまして美容業界の評価と言う物はどうなっているのかと言う話であります。
『1に立地、2に立地。34に立地、5に立地じゃ。来店する母数が違うんじゃい』
と、敏腕の美容営業は言ってましたが。
ちょっと努力とかと関係ないこの話は置いときまして、つまり投稿業界で言う好立地とは 「なろう、カクヨム」 その上で人気ジャンルが立地と言う事になりますか。
友人の方いわく。
「ねぇ、アフターフォローとか。ケアみたいな事って。なろう小説家(作者)くんやってる?
基本、ペッパーとかログの★とかで来店が決まってる事が多いんだよね。
腕(技術)面だけで見ると、あれ?なんで、この人こんなに人気なんだ? あんまり腕よくないのに。
って事って良くあるんだわ。じゃあ、何がその人を人気にさせているのかと言うと、新規とリピーターに優しいケアと言う事をずーっとやってきてるんだよね。 そのかけた時間とケアがリピーターに繋がり人気になっていくんだよね」
ブランディングを上手にしましょうと言う、お話です。
SNSで発進し、コメントには定型文でも気持ちは必ず返す。腕だけじゃ食っていける時代じゃないよ。
こういう事して、発見してもらわなきゃ。それが再来店に繋がり人気に繋がっていくんだよ。
と、お話を聞けました。
そう考えると、人気ジャンルに裸一貫、腕(内容)だけで突っ込みます! と、やった場合、老舗には敵うわけないと言うのが想像できるわけですね。
今のなろう業界にも同じことが言えそうです。
やつらの人気店に並ぶには地道にやっていくしかないのか。
もちろん、まだまだ内容で勝負できます。
幸い、読んで頂ける光の戦士の方々がなろうには存在致します。
でも、今欲しい大量の人気は。なんと閉店(完結してから)伸び始めるのです。頭おかしくなりそうですね。『おもろいものは完結してから日がたってから人気が出る』 これ、聞いたことありますでしょう。
これを自分が体感した時には、感覚がなくなりましたわ。
作者達がなろうカクヨムから逃げ始めていると言う現象。
よくわかるたとえ話になりましたか。




