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2 白羽 ショウタ


――

白羽 ショウタ

――


「バカめ! ついに自分の時代が来たぞ! こんなイカれた営業労働からおさらばだ。スキルが覚醒すると思っていたよぉおおお! なろ〇転生! スキル覚醒! 始まります 『アラサーサラリーマン。神才能が開花してアニメ化も決まりました。~人気声優から狙われすぎて大変です! Vチュバですか間に合ってます~ 』 しゃあああああああああああああ! あばよ!」


と、アラサー(およそ30歳)の健康診断で影耐性が反応し、転職が決まった瞬間の行動がこちらになります。

人間の品性とはこういう時に、現れるものだったのかと記憶がフラッシュした所ですね。

メーカーブラック営業から天下の公務員へ。転職はほぼ強制とは言えども、お給料だけで物を見てしまったわけです。

いつか、どこかで人生逆転。そう思っていたんです。

でも、甘い話なんて世の中にないのを知っていたはず。携帯メールでよく当たる1億円は、愚か者を貪る地獄の使者が虎視眈々と狙うどうしょうもない世の中だってわかってたハズなのに。


「バカかよ・・・、耐性や覚醒の口くるまに乗せられて、こんな事になるなんて。

365日拘束、待機とか正気じゃないですよね。あのマユミさん、新人いつくるんですかね? ついに1500日ぐらい連勤達成したんじゃないですか。マユミさんは3000日ぐらいいってますよね? 

ク〇ほど行きたくもない夢の国ランドですら魅力的に見えてきますよ、マジに。見えてきません? 黒ネズミをみて 『あ!ぴかちゅぉだ! 〇せ!』 とか言ってみたいですよね。ぁあああああ!? 旅行に行きたい! 毎日毎日影への仕事、家も職場も家になっちゃってます。あ、マユミさんはもっと長いんでしたか。失礼しました」


黄色がかった髪のボブカット、自分の上司であるマユミさんは同じ年代で配属5年目のエリートだ。

まさにキャリアウーマンの化身。先進女性の鏡としてパンフレットにのっている。

仕事しかしてこなかった自分と感性が凄く合う。お互いを尊重できる仕事場があるなんて思いもしなかった。


「ショウタくんが来てくれて神がかり的な効率で仕事が進んでいるよ。本当に助かっています。

そうだね、毎日が夢の国にいるみたいだ。2人で支援部を回しているのよ? 都の斥候と言われる我々が2人だ。夢に決まっているだろう。明日になれば、入ってくるはずよ。

ハハハ! 2人の所に人員後回しとか常識に考えてあるかい? 優秀な人員で影の膨張を100%押さえ〇者もなし、超耐性のショウタくんがいるから無限に働ける様にみえて、人員の振り分けがこないとかあると思うかな? 夢に決まっている。

ストレスが限界だ。公費で今日は寿司を10人前ぐらいとりましょ」


「30人前程いきましょうよ。司令部に休みなしの当てつけで送りつけてやりましょう! 『ほら、支援部の休みなしの代償で食べれる寿司だゾ? この味をおすわけしたいと思ってなぁ~』 と。この無駄づかいに総括司令の苦い顔がストレスを癒してくれると思います」


「ハハハ! それは素敵な提案だね! そうしよう! 先日、総括は2連休取ったみたいよ。家族サービスだってさ。・・・50人前注文するわね」


マユミさんは笑顔が張り付いたような、人手不足が煮詰まったような邪悪な笑みを浮かべることがある。

司令部に人為的な影領域が迫っている。


――現代日本に突如発生する異常空間、通称「影世界」

そこに取り込まれた者は、一定時間を超えれば身体も心も影に侵され、もはや人間ではなくなってしまう。

そんな影世界に対抗するのは影対策府。影領域で能力が覚醒した者中心に現場対応を行っている。


寿司の注文確定音と同時に、やわらかいアラームが鳴った。

マジに50人前注文したのか。そしてお仕事の時間だ。

我々がク〇のような事をしても許されるのは、365日働き、超効率的かつ安全に仕事を回すからである。


瞬間、支援部の扉が勢いよく開き飛び込んできたのは、司令部若手職員、瀬川 舞だった。


「影の出現です! いつも通り現場での先手対応、よろしくお願いします! 装備、物資はマユミ部長の指示通りに揃えておりますよ。車両の中でお着がえの方、お願いいたします!」


「「了解~」」


端末を片手に、車両へ走る。

この若手の舞は運転が上手い。空間把握は遺伝と言うがそうとうやる。

何よりパワハラ気質のある、自分とマユミさんの昭和生まれに付き合えるタフな人材だ。


赤ランプを照らし、支援部専用の急行輸送車が地下から発信する。

後部座席でマユミさんが耐影ジャケットのファスナーを上げる。

自分もネクタイとシャツを脱ぎ、黒い耐影スーツに腕を通した。

営業をやめてもスーツを着る。緊急出動の際、いい大人のパジャマ姿は恥ずかしい。


――


現場に着くと墨の球体が展開していた。

今日の影領域は、色が濃い。


「赤ランプを北東から30m間隔で! ショウタくんこのショッピングモールだったら、3輪バイクで突き抜けれるはずだ。中に入ったら赤色ランプで方向指示、敵の視認場所をお願いします。今日も領域中でごめんね」


「いえいえ、了解! マユミさんに何かあったらえらい事ですし、自分に何かあって本日2度目の影襲来とかあった場合、リスク考えましたら絶対に自分が中にいた方がいいですから。とりあえず行ってまいります」


三輪輸送車にのりこむ。

狭い商業施設の中でも走れる、どうみても大きいピザ3輪配達バイク。性能は段違いだが。

さて、避難経路と戦闘中の現場確認、影の中心を一度探りますか。


腕に影領域の目安時間を確認する計器がある。いつみても自分は残り999分。

だからって、無限に働けると勘違いしてんじゃねーぞ。司令部、ぶち〇すぞ。


バイクで影の中に突入し、赤色灯ビーコンを反対側まで落として進む。

床を照らす光が、一本の道を作る。


耐性者でも影の中に入れば気分が悪くなり、長時いれば〇ぬ。

でも自分は関係ない。正直、もっとカッコイイ能力が欲しかった。残り999分ってなんやねん。


ショッピングモールのビル前が中心点と確認し、人型の影が確認できた。知能型だ。

確認と排除対象の録画も終わり、気づかれる前に一度退散する。


バイクを飛ばし、入り口のマユミさんに報告だ。


「マユミさん。データ送りました。各方面の指示お願いします」


「了解、今日の戦闘部は 『ルリ』 一人だ。・・・ルリにはメンタル関係を上手くやってね。では始めようか!」


マユミさんの指示が飛ぶ。

後入りの戦闘部隊が動きやすい様に支援部は先に現場を確認し各方面の段取りを取る。

司令部は、現場の安全確保とデータと各方面に通達を送り出す。


丁度、黒い車両が自分の目の前に砂ぼこりを上げて、滑り込んできた。

ドアが開き降りて来たのは、江藤浦 ルリ。

25歳の日本一の対影戦闘能力者でビームソードを顕現する覚醒者。


白と黒の戦闘スーツが体にぴたりと張り付いている。

背中には観測補助ユニット、首から腕への光るエネルギーラインが青く明滅している。


相変わらず、アクション映画から出て来たような女性で美人だ。


「ルリさん、お疲れ様です。今日はお一人ですか。何があっても回収して一度避難しますから。無理しないでくださいね。さ、乗ってください」


「お兄さん、今日もよろしくね。部隊2人の休みが重なっちゃって。でも2人きりは久しぶりだね」


戦闘部隊には敬意を払っている。彼女達なくして仕事は終わらない。

うちらでは影の殲滅はできないからだ。

〇ぬこともある。こんな危険な仕事、十分な休養が無くてはならない。


彼女は後部ステップにふわりと着地する、自分はアクセルをひねる。


「飛ばします」 「こわいな~」


影領域にはいると、外界の音が消えた。

ルリさんの手が肩に置かれる。


「今日も直撃したら、〇んじゃうかも?」 「最近そのセリフ流行ってます? 昨日も言ってませんでしたか。今日1人ですから、マジに直撃くらうのだけは勘弁してくださいね」


「でもお兄さんが拾ってくれるよね?」 「その場合、部隊2人の休日出勤ですけども。マジ直撃は勘弁してください。そもそも避けれるでしょ? 何で毎回、1回は被弾すんの? マジ心配なんだけど」


日本きってのキリングマシーンは、少し病んでいる。


商業ビルの前には、先ほどと同じ体系の黒い人型がいた。

知能型の証だ。やつらは、真似る。そして本能が、ぶち〇せと警鐘をならす。


「はい、いきまーす。お兄さん、少し離れててね」


「了解」


彼女の勇士を録画しなければ。これも仕事だ。

戦闘の余波を受けない所で、ボディカメラで彼女を追う。


ルリさんの右手が開きブォンと空気が鳴る。

手から出るのは対影ビームソード。

対影の否認する力。人は影領域を否定する、その個体筆頭が彼女だ。


瞬間、影の腕が落ち、胴が裂け、黒い飛沫が宙に舞う。

知能型だろうが、学習型だろうが、パワー、テクニックだか。思考する暇もなく終わる。


はずなんだが~?

影の半壊した体から口が開き、影槍が飛び出して来た。

余裕で避けれる、苦し紛れの瀕死の抵抗。体勢が終わってる。こんなもん、自分だって避けれるわ。


ルリさんは、後方の自分の所に飛ぶが槍が腹をかすめる。

そして糸が切れた人形の様に落ちてくる。


「やりやがった」


必死に彼女を受け止める。

指と体は震え、目に光が無い。影の精神干渉だ。


腕の中のルリさんは、アイドルの様に美人だが顔とスタイルに騙されてはいけない。

パンチドランカーだと思う。深い絶望の摂取がやめられないのか?

何してんの。美人台無しだよ。


優しく抱きしめ声をかける。

人との接触が人を正気に戻させるからだ。


「ねぇ、大丈夫? ルリさん感覚ある?」


耳元で優しく、彼女に語りかける。


「今日、髪飾りかえた? 部隊メンバーと買ったんだっけ。とても似合ってるよ。ルリ、25歳。彼氏はいないね? なんでいないの? やっぱ性格か。かまってちゃんだもんね」


ノンデリ(心の玄関に土足で踏み込むこと)発言を否定しようと唇が動き出す。


「えーと、好きな食べ物は。そうだ。必ず居酒屋でタコワサ頼むよね。そして残す。なんなの? 一口、食べて残すならどうして頼むの? あれなに?」


「残して、ないです。あれは味を確認しているんです」 「毎回ですか?」 「毎回です」


戻ってきたか。一口食べて 『やっぱりもういい』 を誰が処理してると思うのか。

このキリングマシーンは、敵を半殺しにしてからダメージを食らう病気がある。


「お帰り、自分を思い出した? もう一度立てる? 無理ならこのまま引くけど」


「立てます。お兄さんに抱きしめられたので後、3体は行けますね。ではぶち〇してきます」


そして、影は細切れとなった。

人類の敵にすら同情を覚える。


「ルリさん、お疲れ様でした」


「えーと、思い出したら、イラッとしました。そもそもお兄さんも彼女いなくないですか? かまってちゃん? は? 日本の宝の私をかまってちゃんっていいました? 『ほんとごめん、時間も無いし帰ってくんねぇかなぁ? 後で、あやまるから。 ルリさん、もしも今日2度目の襲来きたら、残り時間なくなってしまうんですよね。わかってます? ごめん、後で話聞くから。領域外に帰ってくれる? まだ、仕事あるねん』


「うわぁ、終わったらすごい冷たい。ことが済んだらコレですか? ノンデリすぎません? 帰る時だけ業務連絡はひどくないですか。はぁ~、今日はもう支援部ですごしますから。待ってますからね」


嵐の様に、ルリさんが目の前から消える。

バイクより速いんだよな。

大体の戦闘員は、生き死にかかる仕事のせいか、性格が難儀なのは全国共通らしい。


さて、影の出現位置にビーコン立てて、情報をとって電波が通るまでの10分ぐらいいれば終わりだ。

商業ビルの前にビーコンを置く。

この世界に少しずつ光が戻ってくる、この現象は影世界の蒸発と言っていたか。


「けて・・・、たすけて・・・」


ん? ビル前で待機してると人の声が聞こえた。

影世界では、幻覚と幻聴も聞こえると言うが。自分には聞こえた事も無い。


「しにたくないよ・・・、たすけて」


人の声じゃん。

影出現から合計30分は経っているぞ。マジに絶望的な数字だ。

いやまて、耐性者か? でも、なぜ逃げなかった?


声の方に走り、ビルを覗くとガラスドア越しに少女が倒れていた。

すぐに駆け寄り少女の状態を確認する。

吐しゃ物で床を濡らし、腕は青く腫れ目に光が無い。必死にここまで逃げて来た様子が痛い程に伝わる。


これはやっちまったな。さっきのダメージとはわけがちがう。

申し訳ないが、時間越えだ。もう助からない。彼女は自分が何者かもわからないだろう。

何もできない事に、胸が痛む。


そんな時、後ろから黒い帳が包み込んだ。


消える影が、最後に暴れたのか。

残りカスが暴れる事があるため、自分が待機しているのだ。

物理現象を伴わない一撃は、自分にはなぜか効かない。最後の抵抗だ、どうせすぐ消える。

影を無造作に振り払う。


少女をここから出してやらないとな。昏睡状態でも家族は最後に会えるだろう。

救いになるかわからないが。


「お前はいったイ? どういう事ダ。なぜカオスに戻らない。チガウ。我らが間違っている? 宇宙意思は1つになりカオスに戻る事ではないのカ・・・」


「おや、めずらしく喋るのか。お前らほんとなんなの? と聞けば、真理の門とか陽宇宙の観測者をカオスに戻すとか。訳の分からん事をいいやがって。人類の敵め。さっさと消えろや。目の前の惨劇がみえないのか? ク〇野郎どもがよ」


振り返ると、こぶしほどの黒い塊が床で震えていた。残りカスの影は消え始めていた。

残りカスは放っておけばすぐ消えるだろう。

もう意識がなくなった少女を抱き抱えようとする。


「その個体はもう観測できなイ」 「黙れ、ぶち〇すぞ」


ブチ〇したやつにいっても仕方が無い。と、言ってから気づく。

腹が立つ。人間様をなんだと思ってやがる。


「その個体、このままでは死ぬゾ? ワタシを使え、陽宇宙の観測者ヨ。その個体の上にワタシを置いてくれないカ。命を助ける事ができるゾ」


「は?」


何だ? マジに? いや、でも。助かるのか? 初めてのパターンだ。

影を顔に置くだけだ、ウソだとしても、リスクは〇体の損壊ぐらいか。

こんな状況で何かを計算し始めている自分がいる。


「顔に置ケ。意思と命は助かるゾ。オマエとの別れが寂しい。キエタクナイ」


おいおいおいおいおい。自分は正気か? いつのまにか影が蝕んでいたのか?

自分は何をしようとしている。影を人の上に置こうとしているのか?

影を持とうとしたときに腕の計測器がチラリと見えた。

いつもの数字、999分を示している。自分は残念ながら正常だ。


こんな事やっていいわけない。

でも、ここで助けない選択肢をとれるわけもない。


「時間がない。君たちは観測できなくなることを悲しむ。生き返る事ができるんだゾ? 信じて欲しい、ワタシは間違っていたのだ。キミに触れられて、今わかっタ。 キエタクナイ。 彼女の個体を最大限尊重すル」


影を持つ手が震える。

こんな事やっていいのか? 相手は影だぞ。こんなに喋る影は今まで見た事なかったが。

いいわけがない。いや、でも助けられるのか?

こいつらはウソを言わないと、仕事上の感覚で理解している。


「信じロ! このままでは、しぬゾ! もし置いてくれたら何だってすル! キミに触れさせて欲しイ」


ああああああああああああああ! どうなってもしらんぞ!?

ボディカメラの電源を静かに切る。ピーッと言う電子音だけ大きく聞こえた。


少女の顔に、影を落とした。



いつもありがとうございます。

こんな感じで進んでいきます。


なろう風タイトルに違和感を感じた事はございますか?


なろうの才能が開花した件、世間を揺るがす大ヒットで困ってます ~Vチュバーに呼ばれまくって誰と結婚したらいいのでしょうか~


頭おかしいですね。なろう作者でも書いててイライラします。


ですが、人間の脳みそってのは見た事を忘れることが難しく

「ちん〇」 「まん〇」 と書いたしょうも無い物を忘れることが出来ず、残念ながら脳にはいってしまいます。なんて愚かな生き物なのか。忘れたくてもすぐには忘れない。


なので、キーワードをちりばめたタイトルってのは理にかなってるんですね。あらすじを兼ねることができるんです。

言い方がアレですが、令和の常識ですね。昭和のよくわからないタイトルで表紙の裏のあらすじを見る事をしなくて済むようになったわけです。

日本版は 「ハムナムトラ」 英語版は 「ざ・まむー」 の大ヒット映画でこのタイトルの差。

なんのこっちゃい。当然、タイトルはしっかりした方がいいと今は言われています。


でも、先日友人と話してたら。


不死スキルで今日も無敵です。~湖でキャンプふぁっ〇しているやつらをチェンソーで真っ二つ、失敗してもまた復活するので最強です~


ビデオガールが現実世界にきた件 ~しぬほど愛されて困っています~


ホラーのジェイソンと貞子をなろう化したらこんなク〇みたいなタイトルものが出来上がるわけです。

もう、ストーリーが変ってきてもおかしくない。

タイトルを詳しく書かない不気味さはホラーの有利な所かもしれません。


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