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18 白羽 ショウタ


2週目というのはいかに楽か。いや、そうでもないか。


人の苦しみを糧にする邪悪なフロームげーは2週目でも虫けらのように〇ぬし、最近のゲームは周回前提で作られているよなぁ。

2週目を世代の言葉で言うと強くてニューゲーム。たしか 『クロノ引き金』 がミームの語源だった気がする。

それぞれの主人公にストーリーがあり、破滅の未来を変えられるのは君だけだ!

と、名作を次の世代に伝えることができるハズ。ゲームの未来を変えられるのは子供がやっているスィッツチーだけ。頑張ってほしい。


と言うことで、2週目の黒い瞳戦だが、アヤメさんの協力があり領域が薄くなっていた。

すぐに自分はバイクで突っ込む。肌で風を切るのを感じ、自分と瞳の視線が合ったところに紫、赤、水色の刃が瞳を容赦なくぶっ叩く。

黒い瞳が何かをしようとするたびに、先回りして切り、叩き、裂くのをバイクの座席から見上げていた。


先日の絶望的なボスが、攻略済みの敵みたいにボコボコにされている。

ベテランハンターが複数人で攻略してる時みたいだ。彼女たちにかかれば初見殺しは、初見までということか? なんか日本語おかしいな。


さて、大勝利でございます! 皆さまのおかげでございます。

と、皆を労おうとしたところ黒い領域が薄まっており、空を見ると街に光が戻っていく。

ビーコンを置いた宇宙のような地面が白線として現実に戻り、黒かった看板の文字が読めるようになっている。


領域解除が、早い!? アヤメさんが何かしてくれたのか。最高に助かる。

そうだよ。アヤメさんの実家へご挨拶が予定されたよな。彼女をお借りした分の丁重なご挨拶をしなければならない。

それが大人ってものだろう。


「お兄さん、終わりましたね。あっけなかったです。こんなもんでしたかね~」


ルリさんが、剣を紫の塵に変えながら目の前に降りてくる。

彼女は抱きしめてほしいように手を広げているが、ここはスルーをする所であろう。


「皆さまが強すぎるからですね。敵の強攻撃を強烈なノックバックによる集団ゴリ押し。何もさせないのが一番ですね。ルリさんの被弾がなくて、みなさん無事で何よりですわ」


横からナツメさんが話に入ってきた。


「ショウタさん、そこは優しく抱きしめて 『怪我はないか?』 と体をまさぐる急でドキッな展開を期待してます。私が小さいときに読んだ少女漫画はそうやってました。今思うと、恐ろしい教育です。リアルでやられると社会的に抹殺しなければなりませんねぇ? ということで、お縄になってください」


「そうです。お兄さん、お縄になってください。私たちへの労いが足りていません」


「やはり、ここはスルーして正解ということ。たしかに少女漫画の展開を大人になって思い出すと、邪教の本に見えてくるわ。少女漫画の目が8割顔面を占めてるあの書き方は、すごいよね。でも古代メソポタミアのギルガメッシュ文化のデザインは、あの書き方なんだよ。目が顔の8割、人の本能が人を認識させる作りになっ『長いので、そこまででお願いしますぅ』」


なぜか頬をふくらませたナツメさんとルリさんが、外に出ようと準備を始める。

まて、話は終わっていない。ロマンとロマンチックになんて言葉に差はないぞ。


そして少し疲れたようにアカネさんが、白い髪を前に流しこちらを見ていた。

そういえば、退院祝いをする約束があった。


「アカネさん、退院祝いにデートでしたっけ。どこ行きます? どこ行っても午後にはヘリのお迎えが来ると思いますが。できるだけ市民に迷惑かけないところがいいですよね」


アカネさんの表情がわかりやすく明るくなる。

ナツメさんは帰りの支度をやめ、ルリさんの表情もわかりやすくこちらを見る。


なんだっていうんだよ。

病み上がりで頑張っていただいたんだ。優先的にケアするところだろう。


「公園がいいな・・・」 「「「公園!?」」」


清楚、とっても清楚だ。日々の強気な行いから出てくる発言とは思えない。

意外とそういうのも楽しいか? そして、ピクニック中に上から降ってくるヘリまで想像できた。


「待ってください。退院祝いのデート先が公園って、健全すぎませんかぁ? ここは急に日曜お昼の旅番組になりました? 飲みにいきましょうよぉ」


「むむむ。着飾らない、気持ちだけの直球デートです。これは、強烈ですね~。私も後からついていきます。ダメと言われてもどこかにいますからね」


「おかしくないか? 白羽さん、私がおかしいのか? いいじゃん、公園。最高だぜ? お互いの作った料理を食べて時間を過ごす。いいじゃないか」


全員バラバラでどうもならないな。

ルリさんのようなネトラレヨ~を見る人種というのはこういう感じなのかな。


「公園、了解しました。そろそろここから出ましょうか。今日の領域解除は早いですね。このまま自分も出ます」


さて、みんなに話したいことがある。

今日のこと、アヤメという少女のこと、自分のしたこと。

あの子に、うちの対策府に来てもらうこと。


「ああ、帰ったら聞いてほしい大事なことがあるんだ。でもその前にみんなに伝えたいことがあるんだけど。少しだけいいかな」


全員の視線がこちらを向いた。

期待する顔、素直な顔、何か面白いツッコミをしてやろうとする邪悪な顔。

どうして、戦闘部は感情が優先されるのか。能力と何か関係してそうではある。


今日、政府の上の方と戦うことになるかもしれない。

みんなとの関係がこのまま続かない可能性がある。なら口で伝えておきたい。


「いつも本心とかいえなくてごめん。許してほしいんだけど、かなり好きだわ」


空気が変だ。

まぁ、そうだよな。


「無償の許しって意味で、みんなが好きです。と今のうちに伝えておきたかった」


ルリさんが、いつの間にか目の前にいる。


「はい、わかってます」 「わかってたか」


「お兄さんがそういうとなると、そうとう深刻な話になりそうですね。でも、お兄さんがここを辞める話だったら〇しちゃうかも」


とってもウイットに富んだ会話なので笑ってすまそうとしたが、ルリさんの目が笑ってない。

マジかよ。〇されるんか。


「そういう話になるのか!? 白羽さんがここをやめれば私たちと付き合えることになるが、仕事あっての白羽さんだなぁ」


「評価ありがと」


そして、ナツメさんが手を笑いながら手を挙げる。


「そうなるとですねぇ、いつまでもこの関係性は無理ですよね。許せて部署移動までです。退職は重罪、私もついでに〇します」


「ついでに職権乱用について語らないといけなくなるよね? 『影討伐のついでに巻き込んで申し訳なかった、今は反省している』 ですべて許されるのはどうかと思うよ。でも! お察しの通り帰ったら、深刻な話があるので。一度、帰りましょう」


なんとなく全員が頷いたところ、全員の姿が消えていった。

元気だよね~、意外に空気を読むところが好き。そして今日は余力があったのか。

自分はバイクにまたがり、ヘリの方へアクセルを吹かした。

あとは、帰ってからやりましょう。


そう思っていたんだが。


――――


領域が蒸発している中で外に出ると、規制線のむこうでは歓声が上がっていた。


「討伐確認! 影領域、完全に解除されました!」


現場の空気が一気にお祭り状態になっていた。


「すごい・・・、本当に、倒したのか」


「あれだけ破壊的なビームを撃つというのに、こんなに簡単に倒すなんて」


「あの都の精鋭戦闘部は、別格だ!」


とても褒められている。うちの戦闘部がとても褒められている。

なおかつ、美人でスタイルもよく、とっても絵になる。どこかの人気アイドルグループそのまんまだ。

彼女たちは仕事のメンタル以外、完璧である。


ルリ、アカネ、ナツメさんの方へ現地の司令部が集まっていた。

人類暴力装置として、とても頼もしい人材ですね。


マユミさんが見当たらないが、対応をしているのだろう。

帰るかなと思った時、向こうの総括司令が自分に気づいたのかこちらに来てくれた。


「ありがとう、大きな借りができた。あの黒い視線を受けながらこんな短時間で勝利するとは」


「いえ、自分は見てただけですね。彼女たちがいないと倒せもしないですから。司令、今度何かあったら、助けてくださいね」


そう、何かあったら助けてくれ。

特に、今日明日は、荒れると思う。

そのまま軽く挨拶を終わらせ場を後にする。

さて、帰ろうか。


支援部のヘリの方へ歩き出すと、端末を持ちながら舞が待っていた。

今回は舞に相当助けられた、ありがとね~。


「舞さんお疲れ様です。おかげさまで大勝利でした。マジ感謝してます。帰りましょう?」


「バレましたよ」


何て言った? 聞き間違いであって欲しい。

風で赤メッシュの髪が顔にかかり、舞の表情が見えない。


「ショウタさん、ごめんなさい。私、アヤメさんのこと知ってたんです」


自分は舞さんの肩を支えて、すぐにヘリの中へ入れる。

外で話す内容ではないし、なんということだ。どこまでどうなっている。


「ごめん。理解が出来てない。どこからどこまで、何がどうなってるの」


「ショウタさんが、影を埋めて少女を助けたこと。アヤメさんの日常が少しおかしかったこと。影特有の行動もなく、私、ここ最近の行動は追っていませんでした。でも、マユミ部長が監視していました」


マユミさんは知ってはいたのに、大事にはしなかったのか。

そうか。


「で、アヤメさんはどうなった?」 「マユミ部長が内密に連れて行きました。何かの判断を下したようです。ショウタさん、マユミ部長は今日のことを知っていたのではないですか」


舞が泣きだした。


「ショウタさん、ごめんなさい。私、ウソついてました」


泣かせてしまったか。

いや、すまない。自分の都合でこうなった。


舞の肩に手を置き、そのまま強引に抱き寄せた。

彼女の髪が頬に触れる、そして彼女の息遣いと熱が伝わってくる。


「舞は悪くない。何も悪くない。本当にごめん」


「でも、私もショウタさんの消した動画を見たのを黙ってました。影を宿したアヤメさんの監視の任務でした。そこから、調べました。仕事のパソコンの中身も、携帯の情報も、ついでに家族構成も妹さんにもSNSでパートナーとして繋がりました」


「いや、その。いや、全部自分が悪い。彼女が生き返った手前、そのことを言わなかったのが今に繋がっている」


「それと、ショウタさんの私用のパソコンとかハッキングしました。携帯も私たち以外の連絡先もチェック済みです。後は隠していることないですよね?」


「お前、とんでもないよ。マジに。いや、ごめん。自分ほど悪くないか。ごめん。いや、とんでもないって。ごめん、舞は悪くないよ?」


抱き寄せてた彼女から間を取ろうとした瞬間、凄い力で抱き着かれた。

これが、影対策府の覚醒者の力。


「いや~、これでアヤメさんを処分されたら、たぶん自分ここで働けないわ」


「そうですよね。でもですね、私、式はあげたいんですよ」


ちょっと待ってくれ、話が変ってきたな。

でも舞に迷惑をかけてしまった以上、そうなるのか?


「このままクビや退職や責任を取らされても、戦闘部のみなさんは呼びましょうね。約束しましたよね」


「あっ、あっああああああ。そうだね。まず帰って自分の存在をかけて、マユミさんと司令総括と話し合うことになるね」


胸に抱き着かれたまま、舞の表情が見えない。

引き離そうとするが、ビクともしない。この状況に笑っているのか? 正気か?


「まさか、ショウタさんと結婚できるとは思わなかったです。私が新卒で配属されて叩き上げられていた時、ずーっと、私をかばってくれてたじゃないですか。それからだんだんと一緒に仕事をしていくうちにですねー、気になっていって。この人いいなぁと思ってましたよ。幸せにしてくださいね」


「う~ん、どちらかというと自分を幸せにしてください。今の時代の一方通行の宣言に歪さを覚えるよね。ここは男女平等ではないとおかしくないかな。いや、まて、まだ早い。まだそうなると決まったわけではない。帰ろう。とりあえず帰るよ」


何とか舞を引きはがした。

彼女は微笑んでいる。数年一緒にいるのに初めて見る表情だ。

意外と束縛が強いな??


「はい、幸せにしますよ。では帰りましょう!」 「お前、そのテンション、マジか。まだ何も終わってないよ、これからだよ。そもそも舞さんはお咎めなしになるように自分が責任とるからね。ク〇がああああああああああ!」


ヘリのローターが回る頃、マユミさんに何度も電話をかけた。

何度かけてもでない。司令部にかけるが総括にもつながらない。

呼び出し音だけが長く感じる。ク〇がよぉおおおお。


アヤメさん。無事でいてくれ、罰を受けるべきは自分だよ。

でも、自分は選択をどこかで間違えたのか?

選択は正しいことをしたはずだ。彼女は、人間だ。


そう。

たとえ、アヤメさんが新幹線より早く来たり、影領域を緩和したりしても、ちょっと力がある子と捉えれば迫害することもないだろう。


――――


ヘリが着地すると同時に、降りてすぐ支援部に駆け込む。

廊下を走り、すれ違う司令部の女性陣が目を合わせずに壁に張り付く。狂った仕事を自分からいいつけられるとでも思ったのか。

仕事は気持ちよく受けてくれよ。


支援部の扉を勢いよく開ける。


「マユミさん!」


マユミさんはそこにいた。

いつもの椅子に座っている。

足を組み、机の上に刀が置かれていた。


黒い対影スーツのまま、少しだけ笑っていた。


「おかえり、ショウタくん」


「アヤメさんは、どう・・・『地下だよ』」


目が自分を見つめて瞬きもしない。

黄色い瞳が自分を捉えているのがわかる。


「彼女は地下で影領域を発現している。すごい力だ。影そのままだね。ショウタくんが来るまで、話す気がないそうよ」


マユミさんは、苦笑している。


「好かれているね、ショウタくん。私が間違っているのかな。いや、好かれて当然よね。私も、戦闘部も、舞くんも君と一緒にいると、心の隙間が埋まるのを知っている。ほんとうに人を戻すのが上手い」


「なら、アヤメさんを助けて頂けますか」 「何度も見逃そうと思ったわよ」


返す言葉がない。

マユミさんに隠していたのは裏切ったようなものか。


「本当に、何度もよ。ずーっと監視していたの」


ああ、順番を間違えたか。

こうじゃないな。


「マユミさん、もう一度、入る所からやりなおしますね」 「ちょ!? ちょっと!?」


自分は一度、部屋の外に出る、そしてすぐに扉を開け直す。


「マユミさん、言えなかったことがあります。マユミさんを信じてないわけじゃない、あなたに迷惑をかけたくなかっただけだ」


「・・・。私は君に頼って欲しかったよ。怒るより先に、そこが寂しかった」


表情に素が見える。

寂しかったと言われれば、謝るしかないよな。


「本当に、すみませんでした」




いつもありがとうございます。


少女漫画の目がデカいデザイン。

古代メソポタミアのシュメール文明もデカいし、エジプトの目のまわりのアイラインもどぎつい感じである。

古代でも直感的に、人は目で人と判断するのを知っていたんだな。

近年、人は3ほど目目、口があると顔と認識するのが証明された。


目をデカくするのは究極的なデフォルメ技法と言うことにならないだろうか。

作者は、絵とかかけないけども。




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