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15 白羽 ショウタ

――――


「おはようございます」


職場の方のデスクにはすでに、マユミさんが座っていた。

目の前の生活空間では、リビングには水色の髪のナツメさんがゴロゴロしていた。

珍しいこともあるもんだ、いつもならギリギリまで寝てるのに。


「ショウタさん、昨夜はお楽しみでしたね。これ、うちのお父さんがよく言うセリフなんですけど、元ネタってなんですかねぇ?」


水色が寝たままこちらを見上げる。

そのセリフ、リメイクでやったことあるな。ドラゴン物語のセリフか。

現代でやるとバランスとストーリーがキツイと感じたのを覚えている。

今、ファーストガンタンクを見るときついと感じるあの感覚に近い。


「ナツメさん、勇者が魔王と対面した時、魔王が 『2人で争う事ないじゃん? 世界を半分づつ支配しよう?』 って言われたら、どうします?  『いや、ここで貴様を〇せば、全てが手に入る』 と、返します? どっちが悪役か分かったもんじゃない」


「いや。ショウタくん、支配は半分ずつがいいんじゃないか」 「そうです! 分けた方がいいです! 天下3分の計、パーティ孔明もそう言ってました」


「なるほど。そこで、昨夜はお楽しみでしたね。と繋がるわけです」


「哲学だね」 「夢落ちって概念がその時代にあったんですか!?!?」


そうだよ。今よりだいぶ多かった。


―――――


「それで、ショウタくん。楽しくフレンチを食べたそうじゃないか。ルリくんにラインで聞いたら、内容をはぐらかされたよ」


昨日の話かな。かなり立ち入った話し合いをしたと思う。

そして、邪悪な水色が下から顔をジーッと覗き込んできた。

その行動は女性が反応を探る時、特有の行動なのを知っている。

人間正直に生きるのが一番だよね。


「うー。手を出した感じがしませんねぇ。何でです? 性的嗜好はバレてると言うのにです。ショウタさん、上から下まで受けは広いじゃないですか」


「水色? プライベートって言葉、知ってる? それ自分のパソコンにアクセスしてるよね。誰がやった?」


「あああああ!?」


いきなりマユミさんが吠えて、自分とナツメさんがビクッと体が跳ねた。


「プライベート、今、プライベートと言ったね? ここはプライベートがあるようなところではないね? 私、ここに住んでいるわけじゃないのよ? 公務住宅より、ここの方が居心地がいいなんてね。ああああ!? 乙女として終わってるかな??」


「いえ、マユミさんはこれからだと思います」 「はい。そうです。始まってます」


地獄のような朝だ。

とりあえず、卵でも10個ぐらいベーコンと一緒に焼いておくか。

後はレタス、チーズのサンドイッチでいいだろう。パンを軽く焼くのがポイントだよね。

そこにバターを塗ると、レタスの水分をはじく役割をするのでパンの一番おいしい時間が伸びるぞ。


朝食を作り終わり、テーブルに座る。料理は趣味です。公費で高い食材をバンバン使いましょう。

マユミさんも、ナツメさんも座り、おのおの食事を取り始めた。


「いただきます」 「召し上がれ~」


「卵とベーコンと一緒に焼くだけでどうしてこんなにおいしいのですかねぇ。あっ、ソースとってください!」


ベーコンエッグには醤油じゃないのか・・・?

もしも 『おいしんゴ』 で卵にソースをかけ出したら山岡に〇されるぞ・・・。


さて、今日の打ち合わせをしておこうかな。

政府としては、この都の精鋭たちに出張して欲しいのだろう。

そのことを伝えよう。


「打ち合わせをしておきたいです」 「出張要請の件だね」


「はい。マユミさん。出張要請の件ですが、先に自分がいきます。下準備しておきますので、アカネさんがこれるようになったら3人で来てください。それまでここは、ルリさん、ナツメさんがいれば、大丈夫じゃないですか。マユミさんが現場入りになってしまいますが、やばい調査と対策からやってきますわ」


「わかった。ナツメくんも了承と言う形でいいね。ルリくんにも確認を取る必要があるが、今日は遅いね」


今日、顔を合わせるのは少し恥ずかしい。ルリさんもそう思っていると思う。


「はーい。了解ですぅ。 情報ついでにテレビつけます? そこの都の影領域が処理されなくて、避難と批判と非難が今日もニュースでやってますよ。どんどん影領域が広がってますから。市民のみなさまは私たちが無限に働ける何かだと絶対思ってますね。あっ、ショウタさんのことじゃないですよ。999分ってチートしてます?」


「それがね、ナツメさん。自分〇ぬみたいですわ。あの黒瞳ビーム2,3発でお陀仏になるね。永遠なんて存在しないみたいですね」


マジ? みたいな目で見るのやめてくれない?

報告上げたやんけ。いつものイカれた冗談だと思っていたのか。


「ええっ?! ショウタくん本当に〇ぬの? いえ、了承ということね。ふぅ~。それでいきましょ。そこの扉の前にいる司令総括がいなくなり助かるね」


その瞬間だった。

ガラガラガラと支援部の扉が開いた。


「おお! 白羽くん。行ってくれるかね!」


司令総括が立っていた。

ここのトップが普通にいた。

戦闘部の中軸が頷くまで、ここに張り付いていたのか。


「君がいれば、事前準備はすべて終わるだろう! これで、政府から毎分、ピカチュ〇―! と、言葉の10万ボルトを打たれなくて済む。あの害獣どもがよぉ・・・。あと、必要な物があったら何でも言ってくれたまえ」


「政府の圧力は効果がバツグンですねぇ」 


司令に疲れが見える。

ここの責任者は大変だろう、上から下からも言われて大変だよね。

でも、仕事はしてね。それに値する給料と待遇をもらってるもんね。


「とりあえず自分は向かいます。指揮系統の見直しをお願いします。基本、自分で動きます。向こうの指示には従いませんので、独立させてください」


「了解した」


―――――


と、なりまして。

運転席には、瀬川 舞さんをご指名です

助手席に自分です。黒い影領域の現場に向かっております。

車内には、微妙な空気が漂ってるよね。

司令部に、個人情報を覗けるやつがいるんだよ。


「で、舞さん。今回なにやってくれた? あっ、怒ってないよ。大切な自分のパートナーだ。怒ってない、怒ってない。公務住宅の自分のパソコンに誰がアクセスした? ソレ仕事関係ないよね? もう、ルリさんが家にきたことより、ソレが問題だ」


「はい。ショウタさん。今回の現場はかなり荒れていますよ。現地の戦闘部8名が出撃しましたが、記憶欠落、自我不安定。現地戦力は、ほぼ壊滅状態と見ていいと思いますよ」


質問を質問で返していない。

仕事の話をすれば許されると思った?


「8名でもダメか」 「そうですねー」


「で、自分のエロフォルダに誰がアクセスしたの? 誰に言われた? ナツメさんか? アカネさんか? ルリさんか? マユミさんってことはないだろう」


「はい。現地の司令部は、大打撃を受けて混乱していますね!」 「うん、それは、そうでしょうね??」


「そして、ショウタさんのことが相当盛られていまして、無傷な私たちの戦闘部ならば助けて欲しいと言うことです」


「戦闘部が、超優秀だからじゃないかな。彼女たちがやったようなもんじゃん。ハッ?! カメラもパソコンもハッキングしたの舞さん? もしもし、れーぷされたいの?」


「はひ、すみません。私じゃないです。はい。公務住宅は都のものであれば、ネットも簡単にアクセスできるんですよ! 司令部の誰かじゃないですかね。はい。そろそろ、現地につきます」


舞がブレーキをゆっくりと踏む。

話は終わってないが、着いたようだ。

着くと同時に若手の女子と喧嘩をしていては、感じがよくないだろう。

ドアを開けると、目に飛び込んでくるのは主張の強い看板が立ち並び、自分の都とは違う圧があった。


現地の職員たちが出迎えてくれた。


「あれが最後の砦、インフニットガーディアン・・・。彼が現場に出てから〇者が0人だとさ」 「なんやそれ、凄すぎじゃん。二つ名は 【無限耐性】 じゃなかったんか。人命救助最後の砦らしいやん」


「ガーディアン、影領域で999分の表示がでるらしいで。最強やん」 「計器狂っとるやろ・・・。【無限耐性】 働き放題とか、別の意味で発狂せんか?」


マジに恥ずかしいだろ。やめてくれ。

舞も車から降り、引継ぎのため隣についてくれた。

向こうの司令部を落ち着かせてくれ。インフニットガーディアン呼びはアラサーにきついもんがあるぞ。


「ふふん、そうでしょう。私のショウタさんは、凄いんです。私生活のすべての予定を把握している私が言うんですから間違いありません。まさに守護神です」


舞、お前もか。

その中で、人だかりから現地司令らしき男性がこちらに来た。


「白羽くん、よく来てくれた。本当に助かる。まず、現場に行こうか? そこから話そう」


―――


出現からしばらく放置された、黒い球体は自分の所と比べて少し大きくなっていた。

封鎖されている区域の空気が、尋常ではない。

影が言うところの観測力が影領域に負けているのだろう。


「封鎖理由も限界や。ニュースなどでも騒がれとる。どこからも早く処理しろとしつこい。こちとら大打撃を受けて、自分が誰かわからない者、目を覚まさない者もいるというのに。影が憎くてしゃーないわ」


司令は黒い球体を見上げた。


その言葉に自分は、頷いた。

そうだよな、もしも、そうなったら影が憎くてしょうがないと思う。

身内が〇ぬかもしれない現場なんて必死だよ。

もしも仲間を失ったら、激しく憎むだろう。

うちらは恵まれているとどこかで思ってしまった。


「痛いほど感じました。その真摯な言葉を出されたのであれば、やりとげてみせましょう」


「驚いた。気性が気難しいと聞いていたが。本部に助けてくれと言ってみるもんやな。ありがとう、感謝するで」


気性が荒いと言っているのは、おそらくうちの司令部だね。

のうのうと隣で働かれると、気合を入れたくなっちゃうのが世代なのよね。

まだ、部活が鬼指導だった時代の人間だからさ。練習中に水は飲んではいけない。

言葉は、はいかイエスか、分かりました。の3語だけ話せる。

社会に出てもこの3語だけで十分働けた。

社会の方がぬるく感じる地獄教育も悪くないんじゃないか。


「もう、この都の影耐性者が残っていない、この空間に入れるほどの人材がおらんのや。本当にすまん」


まったく。

そちらの責任ですよねとは言えないじゃないか。

司令になる人間は感情のケアを上手くやるなぁ。


舞がずーっと無言だ。

ちらりと横目で見る舞は、胸に手を当て、ずーっと自分のことを見ていた。

なんか目がキラキラしてない? 慈善で動くような人間に見えたのか?


「舞さん、とりあえず中に入るわ。たぶんだけど、侵食が激しくて車両も厳しいかもしれない。最悪、ヘリアタックのバイクごと降下になりそう」


舞が、ニコリと笑った。

赤メッシュの髪がさらりと揺れた。


「ショウタさん、カッコよかったです。了解いたしましたよ」


―――――


とりあえずは、対影スーツを着て中に入ってみる。

やはりそこには、宇宙空間が広がっており、煌めく銀河、漆黒の宇宙、人工物が影に侵食されて消えていた。


数日放置でこれかよ。

物凄い影の濃度だ。耐性者でも滞在時間半減は厳しくないか。

これは、ダメージ通らねぇだろうなぁ。総力戦をやらなければならないんじゃないかな。

よく、うちは勝てたよな。


惑星並列4つでこれ。水金地火木土天海冥が揃った時、人類は滅びるのだろうか。

気になって調べた時。3年後が惑星並列の年だそうだ。

このまま、自分は仕事をしていていいんだろうか。世界の滅亡に立ち向かう事になりそうだ。


そんなことを考えながら、中心地へ歩き宇宙を見上げる。

もちろん、黒い瞳が鎮座していた。


あ~~。

アヤメさんを呼ぶにはリスクがあるんだよな。

中身は半分影です。とばれた場合、この現場の憎しみを受けるのだろうか。


でも、呼ぶしかなくない? 影だろうがなんだろうが、助けてもらうしかないよな。

卒業したとは言え、未成年なんだよなぁ。

5億歳かもしれないけどさ。


よし、決心がついた。

彼女の人生選択を狭めて申し訳ないが、一緒に働いてもらおう。

次の惑星並列の時にいてもらわないと困る。人類は彼女に聞きたいことが、たくさんあるはずだ。

舞にも言おう。この今回の結果でマユミさんにも報告だよ。

もしも迫害を受けるようだったら、全力で立ち向かう。クルーズ船でどこか遠い国へ行ってでも責任を取るとしよう。

これで影を薄める力の価値を証明できれば、彼女の価値は人類にとって黄金より価値がある。


歩いて外に出ると、光と空気が肺に入る。

すがすがしいな。


舞が駆け寄って来た。 「ショウタさん、大丈夫でしたか!」


「はいはい。対象は中心に鎮座しておりまして、現実空間は消滅。濃度数値は異常値。この状態で突っ込んでも厳しい。ここも立て直したら、他の都と共同で人員をつぎ込まないと無理じゃないかな。大型トレーラー突っ込ませて、回収と突撃を繰り返すしかないわ。この状況でうちの戦闘部を突っ込ませることはできないね」


「では、どうしましょう? マジ詰んでませんか。うちの時は突撃時はこんなに濃度が濃くなかったですし、すぐ倒したのが良かったのでしょうかね」


そうじゃないのよ。

色々あるのよ、紳士にはさ。

さてと、この状況でここでアヤメさんのことを周知する所ではない。

影と言う単語ですらここでは出したくない。

自分はインカムを切り、話を聞かれないように舞の手首を掴んで引き寄せる。


「ひゃっ!? ショウタさん、いつから俺様系になったんですか。まさか、こっちが素でしたか!?」


小柄な身体が跳ねた。

メッシュの髪が頬の近くで揺れる。

耳に口を寄せ、小さく囁く。


「舞。このあとホテルで、内緒に打ちあわせたいんだ」


ヒュッと舞の呼吸が聞こえた。


「・・・了解しました。今日は引き上げましょう」


―――


現場車両に乗り宿泊ホテルに着くまで、舞が上機嫌だった。

何がそんなに嬉しいのかはわからないが。


ホテルに着くと、舞に30分後にロビーで待ち合わせと伝える。

部屋に入ると上着を脱ぎ捨て即座にラインを開いた。


当然、黒瀬アヤメさんだ。


【こんばんは。昨日はありがとう。今、何してました?】


送信するとすぐ既読が付いた。

相変わらず、既読が早い。

さて、影対策府関係に勤めてもらわないと、人権を勝ち取ることが難しいだろう。

だが人の気持ちを考えずに、道を示すことは幸せなのか。

親に、こう生きろ。と言われて嫌ではなかったか。

わかってはいるが、また彼女の人生に介入するのだ。


【最後の春休み中だよね。来てもらいたいんだ、もしも難しかったらヘリで迎えにいくよ】


大人というのは、ひどいものだ。

軽い言葉で、重たいお願い。


【ようやく君を守る手筈と覚悟ができた。今回成功したら、うちで働いてほしい。もし頷いてくれれば、人としてのプライドを懸けて君を守るよ】


【はい、いきます】




いつもありがとうございます。

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