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【書籍化】転生悪役令嬢は破滅回避のためにお義兄様と結婚することにしました~契約結婚だったはずなのに、なぜかお義兄様が笑顔で退路を塞いでくる!~  作者: 狭山ひびき
第二部 四大精霊と女神たちの願い

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二学期と特別実習 5

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「世界の根源を司る四柱のうち風の精霊シルフよ、我の呼びかけに応え、その大いなる御力の片鱗を我に授けたまえ――トルネード!」


 ヴォルフラムの放った、広範囲中級魔法が一角兎の群れに炸裂した。

 これにより、五体の群れが全滅。

 実にあっけない。……わたしに同じことは逆立ちしたって不可能だけど。


 ヴォルフラムが倒した一角兎を、魔物の解体が得意だというドミニクとゲルダがその場で解体をはじめた。

 一角兎は骨と内臓以外捨てるところがない魔物らしく、ドミニクたちは無駄がないように丁寧に解体している。

 イルメラは……魔物が解体されるのが怖いのか、遠巻きに見つめていた。


 ……うんうん、わかるわぁ。わたしも怖い。だから近づかない! というか解体の仕方なんて知らないし!


 貴族も必要に狩られて、もしくは娯楽の一つとして魔物狩りをすることはあるけれど、上級貴族になればなるほど狩った魔物を自分で解体することは少ない。

 だって、使用人もたくさんいるから、自分でしなくても周りがやってくれるし、よほどレアな魔物じゃない限り、狩った魔物はついてきた使用人や部下たちにお駄賃みたいな形で上げることが多いからね。


 うちのお父様も領内に魔物が増えすぎたら困るからと、定期的に我が家の騎士たちを連れて魔物討伐に行っているけど、その時に狩った魔物は騎士と、それからついてきてくれた使用人に魔石込みでまるっとプレゼントしている。

 これがなかなかいいお金になるから、お父様が狩りに行くときは使用人たちがちょっと揉めるのよ。誰がついて行くかで。最終的にくじ引きしてるけど。


 話が脱線したけど、そういうわけだから、公爵令嬢であるわたしは魔物の解体をする機会がないため、基礎すら知らない。

 手を出せばお邪魔になるだろうし、魔物を解体するのは怖いから、イルメラと二人でおとなしくしておくわ。


 子爵令嬢であるゲルダと、子爵令息ドミニクは、どうやら魔物の解体の仕方は学んできたようだ。

 子爵家出身となれば自分たちより上位の貴族の使用人として仕えることもあるから、魔物の解体も学んだのかしら。それとも必要に駆られてなのかしら。根掘り葉掘り聞くのは失礼でしょうから訊かないけども。


 二人が解体している間に、ヴォルフラムは木の根元のあたりをうようよしていたスライムを二体討伐していた。

 放置してもいいんだけど、スライムって雑食だから、増えすぎると森を枯らす原因になるのよ。だから見つけたら駆除した方がいいの。


 討伐したスライムが溶けて消え、小さな魔石だけが残される。

 ヴォルフラムは魔石を腰にぶら下げていた革袋の中に入れた。

 討伐した魔物の素材はあとで分配することになっている。

 とはいえ、わたしは明らかにお荷物要因だから素材はほかのみんなで分配すればいいと思う。


「イエローホーンディアはもう少し奥まで行かないといないかな」

「あんまり奥まで行くと、禁止されているエリアに入らない?」


 先生たちに活動範囲を指定されている。指定された範囲の外に出てはいけないと言われているのだ。

 ヴォルフラムは地図を確かめながら、うーんと唸る。


「ニコラウス先生がこのあたりにいるはずなんだ。ニコラウス先生がいる場所までは範囲内だし、問題ないと思うんだけど」


 ニコラウス先生がいる場所なら安全ね!

 そういうことなら異論はありませんよ。万が一があってもニコラウス先生が対処してくれるもの。

 思いっきり他力本願思考だけど、アレクサンダー様からも注意を受けていますからね!

 二人が解体を終えて、初級の水魔法で水を生みだし手を洗っている。


 ……あの魔法いいなぁ。わたしも覚えたい。


 水のないところで水を生みだせる魔法は覚えておいて損はないと思うのよ。どこでも手が洗えて便利だし。


 ……普通はさ、アクアラングを習得する前に、水を生みだすウォーターの魔法を覚えるはずよね。なんでわたし、アクアラングを先に習得したのかしら?


 もしかしなくても海に落ちたせいだろうか。よくわからないけど、どうせならウォーターもセットで覚えたかった。がっくし。

 解体した一角兎の素材を手分けして持ち、わたしたちはニコラウス先生が立っているあたりへ向けて移動する。

 開始早々五体の一角兎の素材が手に入ったからかドミニクたちは嬉しそうだ。


「お茶会のお菓子は自腹だから、その前に討伐実習があって助かりましたわね」

「ええ。本当に」


 うふふふ、とゲルダとイルメラが楽しそうに会話している。

 わたしもあそこに交ざりたい……。


 ……でもそっか。お茶会を主宰するのにもお金がかかるのよね。


 学園内でお茶会を主宰する時のお菓子やお茶は、寮や学園の売店などでも購入可能だが、もちろんお金がかかる。

 お金がかかるなら主催しなければいいんじゃないかと言えば、そういうわけにもいかなかったりするのが貴族である。

 特に学園内での社交は、同世代とのつながりを作る大切な場。

 お茶会を主宰し人脈を広げることは、いわば将来への投資である。


 特に上級貴族の家で働くことを考えている下級貴族たちは、お茶会を開いて上級貴族たちとお近づきになりたい。

 もっと言えば、彼女たちがどんなお茶会を主宰するのかを、上級貴族たちは見ていたりもする。

素晴らしいお茶会をセッティングをすれば、素晴らしい人材だとみなされる。何と言っても、下級貴族の令嬢たちが上級貴族に仕える場合の多くが侍女であるから、これも侍女の能力の一つと考えられるのだ。


 ……うちのヴィルマさんにお茶会を主宰させたことはないけど、どうなのかしら? まああいつのことだから、そつなくこなしそうな気はするけど。


 そして、お茶会が主に貴族令嬢の社交の場だとすれば、貴族令息たちはチェスなどのボードゲームで社交をする。

 チェスの腕は貴族令息に求められる能力の一つだ。

 貴族令息たちは令嬢の社交と同じく招待状を出し、チェスの腕を競ったり、研究したりする場を設ける。

 その際に出されるお茶はもちろん自腹。チェスの研究会であるならば講師を招くこともあり、その講師に支払う代金も自腹。

 どちらにしても、社交の場を主宰するのにはお金がかかるのだ。


 ……まだ十代のうちからこんなことを考えないといけないなんて、貴族、世知辛すぎ。


 ちなみにわたしは家がお金を出してくれるので自分で稼ぐ必要はないし、好きなだけお茶会を主宰できるのだけど……去年のやらかした記憶があるから、正直今年はお茶会の主催なんてしたくない。


 ……去年はね~。王都の高級店のお菓子をこれでもかと取り揃えて、そしてルーカス殿下をはじめ、狙っていたイケメンたちだけに招待状を送ったのよね……。


 そして結局招待した男性たちは誰一人として参加してくれなくて、お兄様が笑いながら一緒にお菓子を食べてくれた。

 そんな虚しいお茶会とも呼べないお茶会を、学習しないわたしは何度主催したことか。

 お花畑だったマリアちゃんは、「皆様きっと用事があるのね~」と超ポジティブ思考で、彼らが自分を避けているなんて思いもしなかったからね。なんという強メンタル。すごいわ過去のわたし。


 ……あんな思いはたくさんですからね! 今年はおとなしくしておこう。


 お友達のいないわたしである。女子たちに招待状を送っても来てくれるとは思えない。去年と同じ轍を踏むだろう。前世の記憶を思い出した弊害か、わたしは去年のように強メンタルではいられない。絶対凹む。だからお茶会主催しない!


「ええっと、この道を右だな」

「ねえヴォルフラム。この森って広いけど、強い魔物はいないの?」

「奥に行けばいる。だが俺たちの実習範囲は森の入り口近くだから、このあたりには強い魔物はいないよ。三年生たちの実習場所ならここよりもう少し強い魔物がいて、もっと奥にはさらに強い魔物がいるらしいけど学生たちは立ち入り禁止になっている。あそこは、学園の授業で使う素材を先生たち……と言っても主にニコラウス先生なんだが、取りに行っているって聞いた」


 さすがは上級魔法が使えるニコラウス先生。一人で強い魔物狩りですか。はは……。


「強い魔物ってどんなのがいるの?」

「なんだ、マリアは強い魔物に興味があるのか?」


 いえそういうわけじゃないんですよ。

 ただ、ぼっちは寂しいから何か会話していたいんです。この中でお話に付き合ってくれそうなのヴォルフラムだけだし。

 なんて馬鹿正直に言いたくないから、わたしは「まあね」と笑って誤魔化す。


「そうだな……俺も一部しか知らないけど、確か地獄蝶、キラーホーク、あとヤバいのならキマイラがいたはずだ」

「キマイラ⁉」


 キマイラってあれでしょ? ライオンの頭と山羊の胴体、蛇のしっぽを持つ魔物よね⁉

 確か口から火を吐くらしいけど、属性的には風の属性を持っている意味不明な魔物なのよ。口から火を吐く癖に、魔法攻撃は風なのよね。


 勉強が苦手なわたしがなんでこんなにキマイラのことに詳しいかと言えば、このモンスターが『ブルーメ』に登場したからである。

 勉強が出来なくても、ゲームで知り得た知識ならある程度覚えているからね! えっへん! 自慢にならないだろうけども。


 ……でもキマイラかぁ。キマイラなら中級魔法でも手こずるのよね。確かラインハルトルートで……あ。


「ああああああああっ‼」


 わたしは思わず大声をあげた。

 隣を歩くヴォルフラムがギョッとして、他の三人もびくっと震えて立ち止まる。


「ど、どうしたマリア?」


 だが、わたしはヴォルフラムの問いかけに答えられなかった。

 ざーっと頭のてっぺんから血の気が引いていく。


「ヴォルフラム……わたしたちは今、二年生よね。ラインハルト様は三年生」

「当たり前だろう。何を言っているんだ?」


 ヴォルフラムのあきれた声を聞きながら、わたしは震えた。


 思い出した。

 何故、ゲームの『ブルーメ』では、魔物狩りの特別実習がなかったのかを。


 ――ゲームがはじまる一年前。正確には今日。生徒が一人死んだからだ。





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