帰宅と新たな騒動 1
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いろいろあった四週間の新婚旅行から無事生還し、わたしは王都にあるアラトルソワ公爵邸に戻って来た。
きゃっきゃうふふと新婚旅行中のことを聞きだそうとするお母様を適当にやり過ごし、わたしは帰宅して三日後の今日、ブリギッテに会うためにお城へ向かっている。
……はあ、あと四日で学園がはじまるわ。
旅行はそれなりに楽しめたけど、いらぬ事件に巻き込まれたせいでとても疲れた。
学園がはじまるまでは邸でごろごろと過ごしたいのに、邸にいたらお母様が根掘り葉掘りとわたしとお兄様のことを聞きだそうとするから心が休まらない。
……ったく、実の娘と義理の息子の新婚旅行事情を聞きたがる母親ってどうなのよ。
わたしはおばかさんだから、きちんと学園で学んで卒業すべきだ、中退は許さないって言ったのはお母様とお父様の方なのに、なんか早く孫ができることを望んでいる風でもある。矛盾しているわ!
でも残念でした!
お兄様は意地悪だけど紳士だから、わたしに手を出したりはしないんですぅ~!
無理強いしないって言質は取ったもんね! だからわたしの貞操は安全なんです!
馬車に揺られながらぼーっとしていたら、護衛兼務でついてきたヴィルマが、ロンベルク島で買ったお土産を怪訝そうな顔で見つめていた。
「お嬢様、イルカはいいとして、このサメのキーホルダーは何ですか。なんというか、悪意を感じるというか、呪われていそうな禍々しい感じのする見た目ですが」
「お兄様からブリギッテへのお土産よ」
「……それはまた面白いことになりそうですね。わたくしもお茶会について行っていいですか?」
「いいわけないでしょ。今日はブリギッテとアグネスの三人の女子会なのよ。侍女も立ち入り禁止だってブリギッテが言っていたもの。ブリギッテにつまみ出されるわよ」
たぶんだけど、ブリギッテはまだヴィルマを警戒していると思うのよね。
ヴィルマはもうルーカス殿下と繋がってはいないけど、会話がルーカス殿下に筒抜けになるんじゃないかって警戒している気がするわけよ。
ヴィルマはつまらなそうな顔をしているけど、そんな顔をしても無駄です。ヴィルマはお城の送迎まで! お茶会に潜入はできません。
ヴィルマが抱えている箱の中のお土産に視線を向けて、わたしはそっと息を吐く。
イルカと言えば、思い出されるのはウンディーネである。
我が家に帰宅して早々、わたしは旅行に持って行かなかったスマホを開いて、ステータスを確認したのだ。
そして仲間のアイコンをクリックすると……。
名前 サラマンダー
称号 火の大精霊
召喚消費魔力 一〇〇/分
親密度 二
注意 レベルが低いと言うことを聞いてくれません
名前 ウンディーネ
称号 水の大精霊
召喚消費魔力 一〇〇/分
親密度 二十
注意 水の中以外では喋れません
と、ウンディーネが増えていた。
地味にサラマンダーとの親密度が一から二にアップしていたけれど、理由はよくわからない。だが、一も二も大差ないだろう。
……ウンディーネとの親密度がやけに高いけど、フレンドリーな感じだったし、まあ納得と言うか。
ありがたいことに、サラマンダーのような「レベルが低いと言うことを聞いてくれません」という注意書きはなかったので、何かあった時は安心して召喚できそうだが、やはり消費魔力はえげつない。
ちなみに、久しぶりにスマホを開いたこともあって、ポイントが増えていたので習得魔法レベルに全部入れておいた。結果――
名前 マリア・アラトルソワ
誕生日 四月一日
称号 アラトルソワ公爵令嬢
レベル 五
魔力 五十八
習得魔法レベル 四
火 ファイアボール 消費魔力 五
土 ストーンブレット 消費魔力 十三
水 アクアラング 消費魔力 十五
風 なし
光 ライト 消費魔力 五十 ※ハイライドがそばにいる条件下で発動
と、水の初級魔法アクアラングを習得できた。
アクアラングとは水の中で呼吸したり喋ったりできる魔法である。ついでに、体にかかる水圧も上手く調整してくれるので、水深の深いところに潜っても肺が潰れて死ぬなんてことはない。
わたしが海におぼれた時に呼吸できていたのは、もしかしたら無意識にアクアラングを使おうとしていたからかもしれない。
だが、きちんと習得できていなかったから呼吸だけできて喋ることはできなかったのだろう。ウンディーネの補助があってようやく喋ることができるようになったのはそのためだと考えられた。
……どちらにせと、アクアラングが習得できたのは助かるわ。これがあれば溺れた時でもすぐに命の危機になることはないわよね。
泳げないわたしにとっては、命綱のような魔法である。ありがたや~!
ウンディーネから、春までにあと二人の精霊に会わなくては破滅するという言葉の真相を聞きたかったけれど、召喚にかかる魔力がえげつないのと、水の中以外で喋れないという注意書きを見て断念せざるを得なかった。
水の中ということは、わたしも水の中に潜らないといけないということだ。泳げないわたしはそんなことはしたくない。
……でも、春まででしょ? 春までってことはあと半年くらいしかないよね? 半年でノームとシルフを探すの? まじで?
サラマンダーもウンディーネも、会ったのは偶然もいいところである。わたしが実力で探し出したわけじゃない。
それなのに、ノームとシルフを、どうやって探し出せと?
わたしの頭の中で破滅の二文字が小躍りしている。忌々しいことこの上ないわ!
お兄様と結婚して脱悪役令嬢だと喜んでいたのに、どういうことだろうか。破滅の二文字はいつまでわたしに付きまとうのだろう。きえーいと叫んで居合斬りで一刀両断してやりたいわ! 居合斬りなんてできないけど‼
わたしはサメのキーホルダーをつまみ上げてしげしげと眺めているヴィルマに視線を向ける。
「ねえヴィルマ、精霊ってどこにいると思う?」
「知りませんよそんなこと。精霊は人の目には見えませんからね。案外この近くにいるんじゃないですか?」
適当なことを言ってくれるわよ。
精霊がこんな町中にいるはず――
「…………」
何気なく馬車の窓を見やると、窓に小さな手をついて、ひらひらとこちらに手を振っている、緑色の三角帽をかぶった小人が……。
「いたああああああああっ‼」
わたしは思わず、大声で叫んだ。
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