ウンディーネの城 3
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……なんであの時のお姉さんのお化けがここに⁉
大慌てでくるりと踵を返して逃げ出そうとしたわたしだったけれど、無情にも、目の前で扉がパタンと閉まってしまった。
……ちょっとなんで勝手に閉まるの⁉ 自動ドア⁉
ふんぬーっと扉の取っ手を引っ張るもびくともしない。
片足を壁にかけて扉と格闘をはじめたわたしの耳に、カツンと靴の音がした。
何故海の中なのに靴の音が⁉
もうわたしは完全にパニック状態である。
怖すぎて声も出ない。
……お化けお化けお化けお化けお兄様あああああああっ‼
「ねえ?」
お兄様助けてーっと本気で泣きそうになったわたしだったが、背後からあきれた声が聞こえてきて「うん?」と我に返った。
「いったい何をしているの?」
おかしい。なんで声がするんだろう。
扉との格闘をやめ振り返ると、すぐ目の前にお化け(仮)のお姉さんがいる。
ちょっと考え、わたしは口を開いた。
「あばばばばばばっ」
ぺっぺっ!
くそう! どういうことだろう。なんであっちは喋れるのにわたしはこうなるの⁉
しょっぱいしょっぱいと必死に海水を吐き出していると、お姉さんは首をひねり、そっと息を吐き出す。
「変な子……」
うっさい‼
「あなた、もしかして魔法が苦手なの?」
……ええそうですよ!
やけくそで頷けば、お姉さんが「道理で」と頷いて軽く手を振った。
「もう喋っても大丈夫よ」
……本当だろうか。
散々しょっぱい海水を飲まされていたわたしは、疑心暗鬼になりつつゆっくりと口を開ける。
「あめんぼあおいなあいうえお~。あ、喋れた」
……って、赤い、だったっけ? よく覚えてないわ。
するとお姉さんがまた不思議そうに。
「あめんぼって、青いの?」
なんて、わたしに答えられようもない質問をぶっこんでくる。
つ、と視線を逸らして聞こえなかったふりをするわたしに、お姉さんはまたあきれ顔だ。
……って、なんか普通に会話してるけど、お化けじゃないのかしら?
いやでも、お化けじゃないなら何故海の底にいるのかしら?
そこまで考えて、わたしはポンと手を打つ。
「乙姫様ね!」
「何の話?」
違ったらしい。名推理だと思ったのに。
お姉さんはふふふと楽しそうに笑った。
「ウルズたちは面白い子に目を付けたのねえ」
……ウルズ? ウルズってなんぞや。
首をひねるわたしに、お姉さんは「ふふふ」と笑い続ける。
よくわからないけど、あんまり怖くなさそうだし、大丈夫なのかしら。
「あの、お姉さん、ちょっと教えていただきたいんですけど」
「お姉さんなんて他人行儀な呼び方はやめてちょうだい。あなたとわたくしの仲でしょう?」
どんな仲だろう。会ったばかりなのに。
怪訝に思いつつも、わたしは訊ねる。
「お姉さんじゃなければ、なんて呼べばいいんですか?」
するとお姉さんははじめて気が付いたように目をしばたたき、それからにんまりと目を細めた。
「ふふっ、それはもちろん、ウンディーネよ。そう呼んでちょうだい」





