ウンディーネの城 2
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……ごめん下さい、お邪魔します。怪しいものではありませんよ~。
と、心の中で言いながら、わたしは城の玄関扉をそーっと押した。
人が暮らすお城なら、昼夜問わず衛兵が立っているものなんだけど、誰もいないわね。
かわりに、色とりどりの魚が、城の中もふよよふよと泳いでいる。
……まさか魚が見張りとか? 竜宮城だもんね。
とはいえ、この魚たちと意思疎通が図れるとは思えない。
優雅に泳ぎ回っている魚たちは無視して、わたしは奥に進んでみることにした。
竜宮城(仮)の中は、壁も床も天井も真っ白である。外の壁と同じ白。
飾り気はないが、そこかしこにカラフルな魚が泳いでいるからか、寂しいという感じはしない。
……外と同じで中も明るいのね。って、それもおかしいのよねえ。
ここは海の底のはずなので、普通に考えれば暗いと思うのだ。
わたしはちょっと考えたけれど、考えるのが面倒くさくなって「まっいっか」と横にペイっと疑問を放り投げた。
わたしが知りたいのは帰る方法だけだから、他のことはどうだっていい。
こういう疑問をそのままにする姿勢が、自分の学習にも多大なる影響を及ぼしていることを知らないわたしは、いつも通りの平常運転で、考えてもわからないことは放置することにした。
……ここで誰かが暮らしているなら、お城の中を歩き回っていたらそのうち遭遇するでしょ!
誰にも会わなかったらまたその時考えよう。
というか、城の中を歩き回って時間を潰していたら、そのうちお兄様が助けにくるかもしれないし!
お城の構造的に考えると、たいてい大階段を上って二階あたりに謁見の間が作られているはずなのよ。うちのお城もそうだもの。
こういうのは、来客が迷わないように作られているはずなのだ。
と言うことは、広い玄関ホールの前にある大きな階段を上った先に謁見の間があるはずである。乙姫様がいるならそこだろう。いなかったら城の探検を継続するだけである。
……ふふふ、こんな時でも意外と冷静じゃない、わたし?
これがきっと成長というものなのねと、能天気なことを考えるわたし。
冷静でいられるのは、お兄様が何とかするだろうという絶大な信頼によるものだけど、いつもならここでお兄様に叱られるかもしれないと怯えるところだ。が、今回はお説教案件じゃないはずだからどーんと構えていられる。
……さあお兄様、助けに来るならいつでも来ーい! というか早く来てー!
そもそも何か起こった時に考えるのは、お兄様に叱られるか否かという判断基準で、助かるのか否かではないのがおかしいと気づいていないわたしは、呑気にぴょんぴょん飛ぶようにして階段を上る。水の中でふわふわするから、飛ぶように上った方が楽なのよ。
階段を登り切ったところには両開きの大きな扉があった。
うん。ここだな。ここがたぶん謁見の間だわ。
謁見の間らしき扉の前にも、やはり見張りの兵士はいない。
ならば遠慮なく、と扉を押せば、意外にも簡単に扉は開いた。
……ごめん下さい、お邪魔します。怪しいものではありませんよ~。
玄関をくぐった時と同じことを心の中で言いつつ部屋の中に入る。
すると、部屋の奥には玉座のような大きな椅子があって、そこにはどこかで見たような白い服に水色の髪をした女性が――
「ぎゃばばばばばばばっ」
……お化け――――――ッ‼
悲鳴を上げようとして思い切り海水を飲み込み、わたしは涙目になりながら「ぺっぺっ」と海水を吐き出した。
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あらすじ:
「カルヴァーレ国の至宝・女神の柱時計を頂戴しに参上します──」
そんな奇妙な予告状が元軍人タッカー子爵の元に届いた。またもやバークレイ刑事に協力することになったエリカは、しぶしぶ調査に同行することに。人生初の汽車に揺られ着いたのは、雪深い山の中、断崖絶壁の上に建つ別荘だった。怪盗が盗むという柱時計は確かに豪華絢爛だけれど、何だか訳ありらしい。加えてこの別荘は売りに出されているようで、エリカたちは3人の購入希望者、子爵、それに使用人たちと和やかに過ごすことになるが……息も凍るようなある朝、事件は絹を引き裂くような悲鳴と共に始まり──。
雪に閉ざされた別荘で、エリカは真実にたどり着けるのか!?





