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第三話:蠢く街、あるいは死の庭園

技術的知見: 都市の地下構造物において、メタンガスの充満は死を意味する。だが、そのガスが「意志」を持ち、笑い声を上げながら内臓を腐らせに来る場合、既存の安全マニュアルは一切役に立たない。

最悪なのは、その化け物たちが悪意ではなく「親愛」を持って近づいてくることだ。

微かな音で目が覚めた。条件反射で殴りかかる前に目を開けると、そこにはボトルではなく、着替えをしている彼女の背中があった。

「……」

彼女の声は毅然として気品があったが、言葉はやはり理解できない。私の脳内では別の声が皮肉を囁き、それが思わず笑いとなって漏れたが、彼女をひどく怒らせてしまったようだ。彼女の瞳には強烈な輝きが宿っていた。それが安酒のせいでも、消毒用のアルコールのせいでもないことは明らかだった。

「……」

二日酔いのない、だが中途半端に酔った不快な感覚で立ち上がる。自分の惨めな存在を呪うような彼女の罵倒を聞きながら、私はお気に入りのリカーを買い物袋に詰め込んだ。袋は限界に近いが、まだ破れる気配はない。

予備の袋を持っていたか不安になったが、今はそれどころではない。私は彼女に、ここがどこなのかを尋ねた。

「スムス・ウビ? ウビ・スムス?(ここはどこだ?)」

たどたどしいラテン語で問うと、彼女は苦虫を噛み潰したような顔で、長い説明を始めた。

「……」

真剣な表情だ。彼女が私と話すのを嫌がっているのは、亡くなった同胞たちの写生を見たせいか、あるいは別の理由か。

「ペレグリヌス(巡礼者)。ナヴィス(船)。ウビ(どこだ?)」

持てる限りの言語知識を総動員して伝えると、彼女はもどかしげに溜息をつき、瞳をさらに輝かせた。私はその輝きを見て、試しに照明を消してみた。やはり、彼女が力を込めるほどその光は強まるようだ。だが、消耗も激しいらしく、彼女はすぐに力尽きた。私は黄色いラベルのボトルを差し出したが、彼女は拒絶した。

「ヤムヤム?(飯か?)」

腹をさすりながら聞くと、彼女は一瞬呆気にとられたあと、わずかに微笑んで首を振った。

彼女の服装は独特だった。この場所の流行なのかもしれないが、私は防寒のために予備の衣類を彼女に渡した。

「……ウビ・スムス……」

彼女は両手を動かし、地点から地点へと移動するような仕草をした。前進できるということだ。これは朗報だった。

私たちは倉庫を出て、フロントホールを横切り、二重構造の入り口へと向かった。壁には何か巨大なものがめり込んだような跡があり、彼女もそれを見て怯えていた。

外の通りは、凄惨という言葉では生ぬるい状況だった。そこにはもはや暴力の痕跡すらなく、ただ「残骸」だけが積み重なっていた。

「ひどい有様だ……状況は悪化してるな」

構造物の奥深くから、不気味な音が反響してくる。

避難に使われたであろう民間のトラックがバリケードとなっていたが、すべては無駄に終わったようだ。市民や変異者、そして背後の天井から吊り下げられた甲殻を持つ巨大な獣の死骸が散乱している。

さらに酷いのは、腐敗した死体たちだ。ウイルスや寄生虫、菌類が混ざり合い、膨れ上がった異形の塊と化している。

「……その笑顔が嫌いなんだ」

思わず口に出た。感情を模倣したような、すべてを嘲笑うかのようなあの表情には、激しい嫌悪感を覚える。

これらが何なのか、名前を思い出せそうだったが、記憶の霧は晴れない。

「あれは『微笑む者』だ。動きは鈍いが頑丈だ。ヌルグレットも、大型のやつもいない。ここは……冗談だろ」

絶望的でありながら、どこか滑稽でもあった。第三世界の没落した経済圏で生きてきた人生が、今は軍事独裁下の没落した暗黒世界に取って代わられただけだ。

「まずいな。もしこれが現実なら……君は『教団』の人間か。だが、教団が動く前に『混沌』が来たんだな」

足元から響く震動に気づかず、私は呟いた。彼女もまた、真剣な面持ちでラテン語を話している。彼女が持つ独特な意匠の杖は、熟練のサイカーか何かの持ち物だろう。

「いいか、誰かに会ったらその杖は隠せよ。目立ちすぎる」

通りが震えた。視線を巡らせるが、正体は見えない。天井から堆積物やパイプ、梁が崩れ落ちてきた。

上層ではまだ激しい戦闘が続いているようだが、私たちの関心はそこにはなかった。落ちてきたのは天井だけではなかったのだ。

三つの円の紋章を掲げ、糞尿で描かれた旗を持つ、膨れ上がった巨体たち。

「プレーグベアラーか。敵としては最悪だな……。おい、数は数えられるか?」

だが、さらに巨大な「何か」が彼らを押し潰した。汚臭を放つ腕がこちらへ向かって突き出され、巨大な鐘が乱暴に鳴り響いた。

「状況は悪くなる一方だ……」

彼女は通りの向こう側を指差した。

そこには、巨大なナメクジのような怪物がいた。歪んだ歯で楽しそうに笑い、無数の痣のような目に囲まれた唯一の巨大な瞳が、私たちを捉えた。まるで新しい「玩具」を見つけた子供のような視線だ。

「よし、最高だな……」

私はこの数トンの「可愛い子犬」をどう引きつけるか考えた。そして思いついた。あの鐘だ。

私は彼女にどこかへ走るよう合図し、自分も駆け出した。この「ヌルグの獣」は、戦車を押し潰す力を持った子犬のような存在だ。玩具を与えれば、逃げる隙ができるかもしれない。

「ほら! こっちだ! 重いな、これ!」

鐘は15キロ近くあった。私は呪いながら、それを遠くへ投げる準備をした。だが、ふと足元に転がっている「手」の残骸に気づいた。

「ほら! 楽しいぞ! この手が欲しいか?」

腕を振り回すと、巨獣は興奮して足を止めた。その臭いは凄まじかった。家畜の糞尿が詰まった下水道のような、湿った汚臭。

「取ってこい!」

私は腕を思い切り遠くへ投げた。巨獣は水音を立ててそれを追いかけていく。

「素晴らしい! 速いな、お前は最高だ!」

自分の運命を呪いながら叫んだ。彼女が逃げ道を見つけてくれることを祈るしかない。

巨獣はヨダレまみれの腕を持って戻ってきた。私はかつて職場の公共トイレの詰まりを直していた時の感覚を思い出し、嫌悪感を押し殺した。

「……」

後退する。あまり離れすぎると、飛びかかってくるかもしれない。

「本当にお遊びが好きだな」

背後から笑い声のような不協和音が聞こえた。他のプレーグベアラーたちが起き上がり始めている。だが、それ以上の轟音が響き渡った。

それは巨大な放屁の音だった。ガロン単位の排泄物が通りにぶちまけられ、空気はメタンガスで満たされた。

「……神よ、なんて臭いだ……」

腐った臓物の臭いは、眼を焼き、意識を刈り取ろうとする。

そこにいたのは、自身の「芸」に満足して笑う「グレート・アンクリーン・ワン」だった。

私はヌルグの獣を引き離すため、その腕の残骸をグレート・アンクリーン・ワンに向けて投げた。

巨体は好奇心を持ってその小さな手を見つめ、笑った。

彼は、己を止めようとする「アナテマ」の信徒の絶望を嘲笑っているようだった。

彼は私に「贈り物」を与えようと、緩慢な動きで近づいてきた。周囲のジーンスティーラーたちの死体からは、菌類が芽吹き、腐敗の中で新たな生命が融合し始めていた。

だが、庭園が広がる前に、グレート・アンクリーン・ワンはタックルを食らった。ヌルグの獣が玩具を取り戻そうとして、主人の巨体を押し倒したのだ。

これが脱出のチャンスだった。

巨獣は、新しい「親友」がどこかへ消えてしまったことに気づかず、豊かな腐敗の庭園の中で一人残された。

切ない話だ。親友はいなくなったが、腐敗の中から新しい「遊び相手」が次々と生まれてくるのだから。

第3話を読んでいただきありがとうございます。ルーカスが「ヌルグの獣」と「グレート・アンクリーン・ワン」を相手に、まさかの「犬のしつけ」で切り抜ける回でした。彼が過去に経験した「汚物との戦い(仕事)」が、この暗黒世界でまさかのスキルとして役立っています。

言葉の通じないサイカー(?)の女性と共に、この腐敗の庭園を無事に抜け出すことができるのか……。次回、物語はさらに加速します!

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