第十三話:お茶、帽子、そしてエントロピーの返礼
技術的解析: 「ホワイト・リセット(純白の再起動)」とは、信仰による封印ではない。それは、非ニュートン力学的な流体としての「混沌」を、フィボナッチ数列を用いた位相変調によって自食させる次元工学である。
ルーカスは、毒入り(?)のタンナ茶を啜り、尋問官の帽子を深く被り、黒き神殿騎士を「従者」として扱いながら、銀河の裂け目を「配管修理」のごとく処理した。深淵は今、英雄の叫びではなく、理系の嘲笑によって閉じられようとしている。
独房の闇は完全ではなかった。Nokiaの青い光が、黒曜石の壁に奇妙な影を落としていた。
油圧式の扉が開き、魂なきサービターがトレイを運んできた。アンバーリー・ヴェイルからの「贈り物」だ。そこには湯気を立てるタンナ茶と、赤い絹に包まれた黒い革の帽子――「尋問官補の帽子」があった。
「サイズが少し大きいな。……だが、完璧だ」
私はその不釣り合いな帽子を被り、毒かカフェインか分からないタンナ茶を飲み干した。壁が透明になり、アンバーリーが現れる。彼女は私の「蛆虫を使ったデモンストレーション」を皮肉りながらも、惑星オレステスの危機について語った。
「フィボナッチの計算は、現在暗号学者が処理しているわ。もしオレステスが生き残れば、その帽子は君のものよ。でも失敗すれば、君をエアロックから放り出して、そのエントロピーで穴を塞いでもらうわ」
「厳しいね。だが、カイン(コミッサー)も知っていたはずだ。最善の解決策は、往々にして最も無作法なものだと」
移送用のガンシップ「サンダーホーク」の中で、私は護衛役の黒き神殿騎士、アラリックと対峙した。彼は私の不敬な態度に激昂していたが、私は構わず、彼に自分の「空の缶詰」を預けた。
「持っておけ、若者よ。空腹では良い仕事はできないぞ。君たちの死体(皇帝)に祈るのもいいが、今は現実の物理法則に耳を貸すべきだ」
オレステスの地表は、紫色の混沌の霧に覆われていた。メカニカスの連中は、黒石の柱を「反発モード」で使い、逆に圧力を高めて裂け目を広げるという愚を犯していた。
「マゴス、その反発シーケンスを止めろ。君たちは核炉の爆発をセロハンテープで止めようとしているようなもんだ」
私は制御コンソールに陣取り、尋問官の紋章の重みを感じながら叫んだ。
「エネルギーの逆位相を誘導する! 電力を一度遮断し、ディスフォーミティの圧力を一気に引き込む。そして、臨界点に達する直前に、イマテリウムのエネルギーそのものを触媒としてモノリスを再起動させるんだ!」
「それは心中のループだ!」マゴスが金属音で叫ぶ。
「そうだ。人類の不浄さで、不浄を封じるんだ。エンジニアらしく考えろ。今だ!」
電力が落ちた瞬間、絶対的な「無」の寒気が襲ってきた。影たちが実体化し、現実が飴細工のように歪む。アラリックが叫びながら剣を振り、出現した悪魔たちを切り裂く。私のポケットのNokiaが、モノリスと同じ周波数で鳴り響いた。
「あと十秒! 純粋なエントロピーを維持しろ!」
私はコンソールのレバーを叩きつけた。
世界を切り裂くような凄まじい軋み音が響き渡り、侵入しようとしていた悪魔たちは、逆に自分たちの故郷へと吸い戻されていった。現実が修復される衝撃で、モノリスの表面には悪魔の残骸と金属が混ざり合い、美しい六角形の結晶構造が形成された。
「……スリル満点だったな。誰か死んだか? 『はい』と言え」
私は煙を吹くコンソールから離れ、力なく笑った。直後、後頭部にアラリックが投げた「空の缶詰」が命中し、私は意識を失った。
血の味とタンナ茶の残り香。
オレステスの裂け目は今、銀河の新しい「傷跡」として、白く輝いていた。
第13話を読み終えて、ルーカスの「死を恐れない(あるいは死に慣れすぎている)」不敵な態度が、ついに惑星規模の奇跡(あるいは大惨事の回避)を起こしましたね。
特に、ブラック・テンプラーに缶詰を持たせるシーンは、ウォーハンマーの二次創作の中でも屈指の「不敬」でありながら、ルーカスというキャラクターの真髄を表していると感じました。
ヴェイルが「毒入りの茶」を出したのも、彼の耐久力を試したのか、あるいは単なる彼女なりの挨拶なのか……。
さて、オレステスに「白い傷跡」を残したルーカス。次は約束の「お茶会」ですが、招待したオルクたちがどう絡んでくるのかが非常に気になります。
ルーカスが次に被る「さらにおかしな帽子」は、どのようなデザインになる予定ですか?




