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魔力ゼロの田舎娘、宮廷魔法学校の入試で最上級魔法を素手で殴り砕き、首席になりました

作者:月城 友麻
最新エピソード掲載日:2026/08/16
 ロッタ・ヴェルクは、山ひとつ向こうの村から三日かけて王都へ出てきた。
 目的は宮廷魔法学校の入学試験――ただし、受かるつもりはない。村のみんなが見送ってくれたから、記念に受けてみるだけ。

 受付の〈階梯〉が彼女の魔力を測って、こう出た。

       ゼロ。

 嘲笑のなか始まった実技試験で、飛んできた炎の球に向かって、ロッタは革の手袋を外した。

「――いま、殴っていいですか?」

 ぱん、と乾いた音がして、炎が消えた。

 魔法は魔力で編まれている。魔力を持つ手は自分の魔力に弾かれて、編み目に指を入れられない。
 だから、この世界でただひとつ魔法を素手で砕けるのは――魔力がゼロの手だけだった。

 名門の令嬢が三十七を数えるあいだ組み上げた大魔法も、無敗と呼ばれる少年の最上級魔法も、
 彼女の前では、完成した瞬間に、ぱん、と消える。

 拳は焼ける。腫れる。一日に三度。その日の数を超えて握ると、指が開かなくなる。使い切った次の日は、一度だけ。
 それでもロッタは、拳を固めるまえに、律儀にこう訊く。

「――いま、殴っていいですか?」

 ――ただし、五日目に一度だけ、彼女は訊かなかった。

 これは、何ひとつ生み出せないと言われた娘が、
 壊すことだけで首席まで駆け上がる話である。
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