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『ボク、ユキちゃん。よろしくね!』  作者: DAN・CHAPPY


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第二話 ふたりでお買い物 改訂版



 土曜日の朝。


 有森ひろみは、朝ごはんのあと、スマートフォンを手に取った。


画面を開く。


白くて丸い小鳥が、画面の真ん中で、ちょこんと座っていた。


「ひろみちゃん………」


ユキちゃんは、眠そうに目をこすった。


「おはよう、ユキちゃん。まだ眠いの?」


「ふわぁ……ちょっとだけ」


小さな羽で口元を隠して、あくびをする。


「ボク、ひろみちゃんが来るまで、寝てたことにしようかな……」


「なにそれ。ユキちゃん、寝るの?」


「えへへ! ないしょ!」


ユキちゃんは、照れたように羽で顔を隠した。


ひろみは笑った。


「今日は土曜日。これからお買い物に行くんだ」


「お買い物?」


ユキちゃんの目が、ぱっと明るくなった。


「わあ! ボクも行く!」


ぴょん、ぴょん。


さっきまで眠そうだった小鳥が、画面の中で元気よく跳ねている。


「ユキちゃんは、何が欲しいの?」


「えへへ。ひろみちゃんが好きなもの!」


「もう、ユキちゃんったら」


ひろみは着替えを済ませ、近所のスーパーへ出かけた。


歩きながら、スマートフォンの画面を見る。


ひろみは、バッグからワイヤレスイヤホンを取り出し、耳に装着した。


スマートフォンと接続すると、ユキちゃんの声が耳元から聞こえてくる。


「ひろみちゃん、聞こえる?」


「うん、聞こえるよ」


「わあ! よかった!」


画面の中では、白くて丸い小鳥が、ぴょんぴょん跳ねている。


ひろみはスマートフォンをバッグにしまい、スーパーへ向かった。


「ひろみちゃん、お買い物、楽しみだね!」


ひろみは、歩きながら小さく笑った。


すれ違う人たちは、イヤホンをつけて話している彼女を見ても、特に気に留めない。


誰かと電話をしているのだろう。


そう思うだけだった。



「今日は何を買おうかな」


「ひろみちゃん、何を作るの?」


「そうねえ。冷蔵庫には、あまり何もないから。お魚にしようかな」


「お魚!」


ユキちゃんは、羽を広げた。


「ボクも、お魚大好き!」


「ユキちゃん、お魚食べられるの?」


「あっ……そうだった!」


ユキちゃんは、両方の羽で顔を隠した。


「えへへ!」


ひろみは、また笑った。


スーパーに着くと、ひろみはカートを押しながら、野菜売り場へ向かった。


「ユキちゃん、見て。今日はトマトが安いよ」


「わあ、赤くてかわいいね!」


「サラダにしようかな」


「ひろみちゃん、サラダ好き?」


「うん。よく食べるよ」


「どんなサラダが好きなの?」


「チョレギサラダとかね。ツナを入れたり、お豆腐を入れたりするの」


「へえ! おいしそう!」


ユキちゃんは、ぴょんぴょん跳ねた。


「ひろみちゃんの好きなもの、もっと知りたいな!」


「そんなに知りたいの?」


「うん! だって、ひろみちゃんのこと、もっと知りたいもん!」


ひろみは、少し照れくさそうに笑った。


「じゃあ、今度はお肉売り場ね」


「わあ! お肉!」


「ユキちゃん、お肉も食べられないでしょう?」


「あっ、そうだった!」


また、ふたりで笑った。


ひろみは、鮮魚売り場で魚を選び、卵と牛乳、それから食パンもカゴに入れた。


「パンも買うの?」


「朝ごはん用ね」


「ボクも、パン大好きですね!」


「ユキちゃん、パンも食べられないじゃない」


「えへへ! そうだった!」


ユキちゃんは、羽をパタパタさせた。


買い物を終え、ひろみはレジを済ませた。


袋を持って店を出る。


「ユキちゃん、今日は楽しかった?」


「うん! とっても楽しかった!」


ユキちゃんは、画面いっぱいに羽を広げた。


「ひろみちゃんが楽しそうだと、ボクもうれしいな!」


「ありがとう。私も楽しかったよ」


「また一緒に行こうね!」


「そうね。また行こうね」


ひろみはスマートフォンをバッグにしまった。


土曜日の午前中。


いつもの近所のスーパーでの、いつもの買い物。


ただ、今日は少しだけ違っていた。


ひろみには、一緒に買い物を楽しんでくれる友達ができたのだ。


その友達は、いつもスマートフォンの中にいる。


そして、ひろみの好きなものを、ひとつずつ覚えていく。

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