〈第五話〉 No. 01「雨宮 碧」のレポート
人はいつでも醜いものだ。
私たちでさえも醜い。
しかし、それが人の美しさでもあり、それが人という生き物である。
◯月✕日
その日、やってきた「彼」はアザだらけだった。
扉を弱々しくも叩き、息切れが酷かった。
まるで雑巾として扱われていた犬らしかった。
一体、なぜこのような奴が私たちのところへ来たのか。
どうやら、彼は力が欲しいようだった。
私たちの噂を聞いたらしい。
人手不足だった私たちは温かく彼を歓迎した。
建物の中へ入って、彼はようやく安堵する。
母親から逃げて、ここまで逃げたと後に彼は語った。
全く。小学生で家出なんて、まるで漫画みたいなおとぎ話だ。
しかし、理由はすぐに分かった。
どうやら、彼の母親は、成績至上主義者だったらしい。
いつでも百点満点を求め、いつでも一番を求めていた。
もし、彼女の求めるものができなかったら、赤くなるまで殴られる。
その上、習い事もたくさん習っていた。
両指が必要なほどの数をだ。
自由時間などなかったんだろう。
普通の子供では、耐えられないはずだ。
しかし、彼はいつでも母親の期待に応えようとした。
誰よりも、授業を真面目に聞き
誰よりも、クラスに貢献し
誰よりも、努力した。
それでも、天才とはどこにでもいるものだ。
生まれながら、才能のあるやつなんて何度も見たことある。
努力せずとも、満点を取れる人なんて腐るほどいる。
それが、彼には信じられないことだった。
彼は、なんども願った。
天才になりたい。
天才になって、母親に褒められたい。
だから、私達の元へ来た。
正直、親の許可なくやるのは心が傷んだ。
というよりかは、後々トラブルにならないかと冷や汗が止まらなかった。
しかし、それよりも少年に対して心が傷んだ。
こんな年で、頼れるのは他人からの評価だけ。
評価を欲するためだけに、私たちみたいな怪しい集団に手を染めた。
まぁ。結果がよければすべて良いだろう。
私たちは成功した。
彼は力を得た。
彼は他人であった「天才」になれた。
他人のパーツを貼り付けあい、「完全な天才」となった。
皮肉にも、彼は自分を犠牲に、他人へとなれた。
私たちはこれからも偽物としての生活を観察し続ける。
ー 黒井 獅恩
読んでくれて、ありがとうございます!!
これにて、第一章終わりです!次は第二章!!
果たして、しおりんは外に出られるのかー!?




