表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/15

〈第十三話〉 全部 幻であっても

!注意!

少し暴力的・いじめ描写が入ります!!

苦手な方は気をつけて下さい!!!








その日も、あったかかった。

半袖で丁度いい春の日。学校が終わる直前だった。




キーンコーンカーンコーン






「はい。これにて、帰りの会を終わります。」

「終わりまーす!!」

「ほら、帰ろ!」



午後のチャイムと同時に、何人かの生徒が廊下へと駆け出していく。

それに続いて、他の子たちもどんどん帰路につく。


ひらりは一人取り残され、ランドセルの中を見つめる。



「……ない。」



そこには、あるはずの教科書がなくなっていた。

今日、先生に言われて持ち物をすべて入れたのに。おかしい。



「こーくん!!」



焦るひらりとは違い、白髪の少女がこちらへと駆け寄ってきた。



また、あのこかぁ…



嫌な予感が頭をよぎる。


彼女は、奏ちゃん。

何度もひらりの荷物を盗む、いわゆるいじめっ子だ。

転校初日から目をつけられ、早一年。

随分と可愛がられてきたものだ。


……せっかく、今日はなにもされなかったのに。


しかし、ひらりの予想と反し、少女は目の前を通り過ぎた。



「一緒にか〜えろ!」



彼女が向かったのは、黒髪の少年の方だった。

きだるげそうな青い瞳に、お揃いのよぼよぼなシャツ。


そう。こうだった。


ひらりの双子の兄であり、少女の親友。

クラスで一番人気のある子でもあった。

といっても、今じゃそんなのも関係ないけど。



「いいよ。」

「まじ!?ありがと〜!!」



こうの返事に少女は嬉しそうに飛び跳ねる。

その姿は、3年生として年相応だった。


こうが立ち上がり帰ろうとした瞬間、違う女の子グループがやってくる。

確か、少女の連れ巻きたちだ。



「あれ?こうくん、妹ちゃんは大丈夫なの?」



どうやら、ひらりのことを心配しているみたいだった。

いや。心配というよりかは、軽蔑の目を向けていた。



「一人で帰るでしょ〜。」

「そうそう。子供じゃないんだし。」



二人は適当にあしらい、そのまま帰路に着こうとする。


こうとは、生まれてからこの方ずっと一緒だった。

だから、何を考えていたのか全部わかっていた。

でも、ここに来てから、こうがわからなくなった。



「でもね、荷物なくしちゃったみたいだよ?」

「そうそう。教科書…とか!!」

「ふふっ。」



気色悪い笑い声が教室を蔓延る。

これだから、学校は嫌いだ。



「そんなこと、私には関係ないし。」

「……だね。」



そう言い残し、二人はさっさと出て行ってしまった。

ひらりはその後を、慌てて追う。

一人ぼっちで帰ると、また何があるかわからない。


もしかしたら、あの少女の連れ巻きに……


そう考えるだけで、面倒だ。






(今日こそ、一緒に帰りたいなぁ。)







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「……」




お家への一本道、二人の間には妙な沈黙が続いた。

といっても、最近はこれが定番。

なんなら少女たちに絡まれて、この時間帯よりも後に帰路についていたから久しぶりだ。



「……なんで、着いてきてんだよ。」



こうが先に沈黙を破ってきた。

鼓動が高鳴る。


しかし、自分の気持に相反して ひらりはぶっきらぼうに答える。



「だって、一人は嫌だから。」

「んなこと知らねぇよ。」



トンッ。


こうが小さな石ころを蹴りながら、道を進む。

ひらりたちが歩いている道路は車がよく通らず、人気も少ない。

少しはずれれば、小さな小川にもたどり着ける。



「ほんと、お前につかれるとか最悪。」

「でも、ひらりとこうは家族だから……」

「家族でも、限度ってもんがあんでしょ。プライバシーってやつ。」



ひらりは こうの背中を見つめるばかりだった。

昔は隣りにあった背中。

当たり前のようで、特別な時間。

あれが、唯一の安らぎだった。


でも、今その隣にいるのは……



「奏ちゃん。」



そうだ。

あの子のせいだ。



「あの子のせいで、こうは冷たいの…?」

「違うって、なんどもいっただろ。」

「でも、ここに来てからだよ。」



パッとこうが立ち止まる。

ひらりも それに合わせて一緒に立ち止まった。



「……」



数秒間、沈黙が続く。

と 思ったら




バンッ



という大きな打撃音が頭への強烈な痛みとともに鳴り響いた。



「違うったら、違うんだよ!!!」

「あっ、こう……!!」



こうはひらりの横を素通りし、そのまま一本道を走っていった。

無駄なことなのに。


一人、取り残されたひらりを夕焼けが照らす。

真っ赤な太陽が、あの考えを教えてくれたんだと思う。



「やっぱり、奏ちゃんのせいなんだ。」



コンクリートで出来た道路は、生ぬるい温かさを贈ってくる。

それが春の訪れであり、夏への始まりを教えてくれるようだった。







「…もし、私が奏ちゃんならこうはきっと……」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








気がつくと、ひらりは川にいた。






直前までの記憶がない。

でも、不思議と嬉しかった。



太陽はもうとっくに寝ており、辺りは真っ暗だった。

ところどころ飛ぶ、蛍たちだけが唯一の光。

そのくらい暗い。


周りには赤色の奏ちゃんが寝ていた。

本当に奏ちゃんは不思議な子だ。


手に握っていた石をおろし、床に寝転ぶ。



「やったぁ…ようやく、やったよぉぉ……」



その言葉は、きっと永遠にあの子には届かない。

ひらりは幸せに包まれて、眠いまぶたを閉じる。



「ようやく、あなたになれるんだねぇ……」








これからはずぅっと一緒だよ







こう


ーその話は、小さな妹の愛で出来ていた。


読んでくれてありがとうございます!

次の話が第三章 最後です!!恐らく明日更新です!!!

ぜひ 読みに来て下さい(●´ω`●)!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ