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〈第十二話〉 無駄だったみたい







ギシィ





「…来たんだね。」





扉を開けると同時に、ひらりちゃんが言った。

私は大人しく、首を上下に振る。



「く、来るにきまってるじゃん…!」

「そうだね。来ないのは論外ってやつ。」



ひらりちゃんの部屋はとっても静かだった。


今まで入ったのは、あおさんやふぶきくんで一階の部屋の人達ばっか。

だから、少し不思議な感覚だった。

といっても、私自身の部屋は二階だが。



「そ、それで……」



空気を切り開くように、話を始める。

すべてをもう一度。



「それで、ひらりちゃんは何処まで知ってるの……?」



ひらりちゃんは少し考えるそぶりを見せる。

数秒後、真顔で答えた。

全く感情のこもってない顔で。



「しおねえが今 一番欲しいものなら知ってるよ。」

「それって、どういう……?」

「みんなの能力。」



ぴしゃりと言われた。

その言葉に、背筋がぴんっと伸びる。



「知りたいんでしょ?」



どことなく嬉しそうな彼女が笑いかける。

私たちを照らす照明が、尚更その不気味さを増させる。



「…なんで、知ってるの?」

「そりゃ、もちろん 家族だから。」



家族……

ひらりちゃんも家族だって思うんだ。


独り言のように、思い出す。


そうだ。

ここのみんなはこういうやつなんだ。



「……って言っても信じてくれないよね。」

「じゃぁ、なんで……」

「それは……」



少しためてから、ひらりちゃんは口を開く。

すました顔で、当然のように言う。




「普通に盗み聞きしたから。」

「え!?」




思ってもなかった言葉に、私は茫然と口を開く。

それでも、ひらりちゃんは動揺せずにただ真顔でいた。



「え!?」

「普通に聞こえてたし。」

「え!?」

「普通に起きてたし。」

「えぇぇ!?」



しかし、言われてみるとどことなく納得する。

ここは普通の一軒家だ。そう。普通の。

防音なんかじゃないんだ。

そりゃ、聞こえてしまうだろう。


と頭でわかっても、やはり納得できない。



「嘘でしょ!?!?」

「嘘だったら、こんなにわからないよ。」

「本当に、どういうこと!?!?!?」

「しおねえ、うるさい。」

「ん…!?」



そのまま、彼女は遠慮なく私の口をふさぐ。

手加減してくれればいいのに、彼女の力は普通に強い。

遠慮ってものを知らないみたいだ。


数秒経ってから、彼女はようやく手を放してくれた。



「さてと。本題にいこっか。」



さっきのことはなかったかのように、ひらりちゃんは話を無理やり続ける。

片手には、彼女の手製の小さなノートがあった。



「まずね、能力ってのは先天的じゃない。」

「あっ、このまま進めるの!?」

「しおねえ、うるさい。」



また口を閉ざされそうになり、慌てて離れる。

私の意図に気づいたからか それ以上は近づかずいてこず、彼女は話を続ける。



「んと…そうそう。能力は後付けだから、暴走も普通にするの。」

「……あっ、体に見合った力じゃないから…ってこと?」

「そういうこと。ただ、しおねえの場合は普通に扱えてる。あおにいにも同じく。」



言われてみると、能力の暴走と考えると色々と合点がいく。

ふぶきくん自身は閉じ込めたつもりはなくても、暴走でそうなったのかもしれない。

それに、ずっと繰り返される記憶喪失もなにもかも、誰かの暴走のせいなのかもしれない。



「…ってなると、私、ふぶきくん、あおくんは犯人にはならないよね?」

「そうだね。みんなの能力も、洗脳、防御、複製だからね。ありえないよ。」



やっぱり、そうなんだ。


彼女の言葉と合わせて、妙な安心感があった。

ふぶきくんも、あおさんも、私も悪くない。

それが確定したのと同じだ。



「ただ、他の二人は難しかったね。ガードが強いってやつ。」

「まぁ、そんな気はしたけどねぇ……」

「でも、ひらりちゃんなら わかるんでしょ?」

「……もちろん。」



誇らしそうに彼女はノートをめくる。

その年相応の可愛さに、思い出してしまう。

ひらりちゃんだって、一応年下だ。

あんなに不気味でも中身はちゃんと「普通」の少女なんだ。



「多分だけど、あめねえは読心。」

「なんか 響きがかっこいいねぇ!!」

「中二病ってやつだね。」

「う、うるしゃいなぁぁ…」



正論パンチにどこか頭を抱えながらも、どうにか会話についていこうとする。


ひらりちゃんは今までにないほど情報をくれる。

一周回って、怖いまである。

嫌な予感しかしない。というか、いつでもそうだけど。



「ってなると、あめちゃんも犯人じゃないのかなぁ…でも、怪しいんだよなぁ……」

「まぁ、ただの盗み聞きだから。完璧にあってるとは限らないし。」

「それでも、よくここまで わかったよねぇ…!まるで、探偵さんみたい!」



私の言葉に、ひらりちゃんは目を丸く開いた。

今までに見たことないほどの大きさだった。





「…同じだったから。かな。」




少しの沈黙の末に、彼女は静かに呟いた。



「ひらりも、こんなとこから出たかった。ただそれだけってやつ。」

「な、なんで過去形……?」

「だって、お外を知ったからね。ひらりはここにいたほうが幸せなんだよ。」



ど、どういうこと……?


私はひらりちゃんの言葉に尚更 頭がこんがらがった。

彼女の不気味な圧もあいまって、自分のペースが崩れていく。



「それでも、閉じ込められるほうが絶対に不幸だよぉ……」



あわあわしながらも、思ったことを言った。


ひらりちゃんのペースに飲まれないように、いそいそと。

本当はかなたくんやあめちゃんみたいに、自分のペースに飲み込みたい。

もしくは ふぶきくんみたいに、誰のペースにでも対応できるようになりたい。

あとは あおさんみたいに、我がペースを貫きたい。


といっても、私にはそのどれもできないが。



「喧嘩売ってる?」

「そんなぁ、かなたくんじゃないんだからしないよ!!!」

「結構 似てたけどね。」



その時にはもう、その言葉に込められた皮肉はわかっていた。

まぁ。先に言ったのは私だったけど。


どこかいたずらっぽく笑う私を横に、ひらりちゃんも頬が少し歪んでいた。

ところが急に、彼女は口を一の字に変える。



「まぁ、外にいったら そんなことも言えなくなるよ。」



当然のように言われた。

まるで彼女は小さな子供に教えるように。

私を馬鹿にするように。



「で、でもね、私ここで過ごしてきて、ひらりちゃんのこと少しづつ分かってきたよ…!」



慌てて言葉を作り出す。

綺麗事だって知っている。

私はいつだってそうだ。


無言を貫くひらいちゃんに、私はそのまま言葉を続けようとした。



「だからね、きっと話し合えば仲良く……」


「殺したよ。」




急だった。

あまりにも、展開が急だった。



「え?」



私はまともに返事なんて出来ず、呆然と立ち尽くす。

彼女の言葉が、異国語みたいに感じた。



「どういう……」

「そのまんまの意味。ひらりは人殺し。」



ひらりちゃんは


「じょ、冗談はよくないよ……??」

「こんな嘘、つくわけないでしょ。」



嘘だ…嘘だぁ……

なんで、ひらりちゃんが……?


頭の中は、情報が氾濫している。

なにがなんだかよくわからない。

昨日から、いや、目覚めたときからずっとこれだ。



「じゃ、じゃぁ、なんでそんなことを……」

「簡単だよ。」



口元に指を当て、ひらりちゃんはいう。

その時、一瞬だけ見えた笑顔を私は忘れられない。

いつまでも。ずっと。




「あの子になりたかった。」




静かな部屋で、彼女はそう告げた。


もう夜なのに、蝉の声がまだ鳴り響いてる。

まるで、最期を迎えるように。



「だから、殺した。ただそれだけ。」



少女の瞳は落ち着いていて、澄んでいた。

あの瞳を、私は何度も見たことがある。

すると、彼女の葉のような瞳に射抜かれた。

心臓の鼓動と彼女の呼吸音だけが、耳に入る。






「羨ましかっただけなの。」







キミの懺悔が始まってしまった








更新がすごく遅れてしまいました

申し訳ございませんm(_ _)m


第三章は残り2話になっております!

次回はおそらく明日までには更新できると思います!!

ぜひ、読みに来てください!!!!

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