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【書籍化+コミカライズ進行中】人間嫌いのハイエルフ、父になる  作者: 小狐


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135/136

第135話 リーネ、みんなをおうちに呼ぶ

 カイルが落ち葉を勢いよくめくり、茶色い石を拾い上げた。


 「見つけた!」


 「たから!」


 リーネが駆け寄り、差し出された石を受け取る。

 見つけられてしまったのに、隠した本人もずいぶん嬉しそうだ。


 「次は鬼ごっこ! おれが鬼な!」


 もう別の遊びを思いついたカイルに、エステルがすぐ口を挟んだ。


 「ちょっと、勝手に決めないでよ!」


 「なんでだよ。おれが言ったんだぞ」


 「だからって、鬼まで決めなくてもいいでしょ」


 カイルが言い返そうとする横から、バルトも声をかける。


 「庭の外には行かないよ」


 「分かってるって!」


 リーネはカイルとエステルを交互に見ていた。


 「リーネはどうする?」


 隣からリタに声をかけられ、リーネも元気よく手を上げた。


 「リーネも、おに!」


 「えー! おれが鬼だって!」


 「リーネ、さき!」


 リーネは上げた手を下ろさず、カイルの前へ出た。



 「カイルが一人で決めちゃうからでしょ。リーネもやりたいんだって」


 「じゃあ、順番にしたら? リーネが先で、次はカイル」


 バルトの提案に、カイルは少し口を尖らせた。


 「じゃあ、先にリーネ! 次はおれだからな!」


 「うん!」


 リーネが元気よく返事をすると、カイルもようやく走り出す。

 ほかの三人も庭へ散り、リーネは一番近いリタを追いかけた。




 リーネは懸命に走っているが、先を行くリタとの距離はなかなか縮まらない。

 それでも向きを変え、今度はバルトの方へ駆けていく。

 バルトが逃げると、その後ろを走っていたエステルにも手を伸ばした。


 「リーネ、こっちだぞ!」


 カイルがリーネの目の前まで走ってきた。

 リーネはすかさず手を伸ばし、カイルの服に触れた。


 「つかまえた!」


 「うわっ! 今の、なし!」


 「自分から近づいたんでしょ」


 エステルが笑うと、カイルは悔しそうに言い返した。


 「……いいよ! 今度はおれが鬼だ!」


 今度はカイルがリタを追いかけ、リタも慌てて逃げ出した。

 リーネも声を上げて笑いながら、その後についていった。


 ……鬼になりたがっていたのは、カイルの方だろうに。


 その後も、庭では追いかける者が何度か入れ替わった。

 ひとしきり遊んだところで、私は声をかける。


 「リーネ。そろそろ帰るぞ」


 「まだあそぶ!」


 やはり、素直には帰らんか。


 「おれも、まだ遊ぶ!」


 カイルまで加わり、リタも残念そうにリーネのそばへ戻ってくる。

 私は庭を歩いて、リーネの前にしゃがんだ。


 「今日はもう帰る。また遊べばよい」


 「……まだ、あそぶの」


 さっきより小さな声で言い、リーネはリタの方を向く。


 「また一緒に遊ぼうよ。リーネが来たら、みんなも呼ぶから」


 リタの言葉に、リーネは少し黙った。

 リーネは四人の方を向いた。


 「みんな、リーネのおうち、くる!」


 「行く!」


 カイルは、どんな家かも聞かずに答えた。


 「わたしも! リーネのおうち、大きな木のおうちなんだよ」


 リタが三人へ話すと、エステルも近づいてくる。


 「リタ、行ったことあるの?」


 「あるよ。何回も!」


 「リーネと、あそぶ!」


 リーネまで胸を張っている。

 帰るのを嫌がっていたはずが、今度は自分の家で遊ぶ話を始めてしまった。

 ……私の返事は、まだ聞いていないだろう。


 「リーネ。お前が呼びたいのは分かった。だが、あの子らの親にも聞かねばならん」


 リーネは私を振り返り、そばへ戻ってきた。


 「みんな、くる?」


 「親がよいと言って、都合が合えばな」


 「ぼく、家で聞いてみる」


 バルトが答えると、カイルも勢いよく続けた。


 「おれも! じゃあ、今から行こう!」


 「まだ決まってないでしょ。先に聞くんだから」


 エステルに止められ、カイルは不満そうに私の方を見る。

 ……私を見ても、返事は変わらんぞ。


 子供たちの声を聞いていたダリオが、こちらへ来た。


 「三人の親には、私からも話してみます。いつも顔を合わせていますから」


 「ああ。頼む。来られるようなら、都合を知らせてくれ」


 「承知しました」



 リーネは私の袖を引いて顔を上げた。


 「りゅー、みんな、くるの!」


 「ああ。お前の家へ呼ぶ話だろう。返事を待つのだぞ」


 「うん!」


 ……もう来ると決まったつもりらしい。

 ダリオが三人にも家で聞いておくよう声をかけていると、リタがそのそばへ駆け寄った。


 「パパ、わたしもまたリーネのおうち、行っていい?」


 「もちろん。みんなで行く日は、これから相談して決めような」


 リタが喜んでリーネを呼ぶ。

 リーネは一瞬、リタとその父を見てから、私へ顔を向けた。

 何か言うのかと思って待ったが、また呼ばれるとリタのところへ走っていく。


 「また遊ぼうね!」


 「うん! おうち、きてね!」


 「今度はつかまらないからな!」


 カイルが言い、エステルが隣で笑う。

 バルトも手を振り、リーネは四人へ何度も振り返りながら私のところへ戻ってきた。


 「今日は世話になった」


 「こちらこそ、ありがとうございました。またぜひお越しください」


 ダリオの挨拶を受け、リーネの手を取ってフェルナー家を出る。

 クララと子供たちは、戸口からも手を振ってくれた。

 イレナとマルタ、ルヴェンも一緒に、来た時の道を街の外へ戻る。


 リーネは、私と手をつないで機嫌よく歩いている。

 家が見えなくなると、リーネが私を見上げた。


 「りゅー、みんな、いつくる?」


 「親の返事が来てからだ」


 リーネは少し考える。


 「……あした?」


 「明日とは言っておらん」


 「じゃあ、いつ?」


 「まだ決まっていない」


 リーネは繋いだ手を揺らし、また前を向いた。

 しばらくは足取りも軽く歩いていたが、次の角を曲がると、また私を呼ぶ。


 「りゅー、みんな、いつ?」


 「角を一つ曲がっても、返事は来んぞ」


 ……家へ着くまでに、あと何度聞かれるのだろうな。

読んでいただきありがとうございます。

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