第四篇 治世二十二年
第四篇 治世二十二年
統一の年の刈入れの月、戴冠に続いて三家の最初の評定が王都の城丘で開かれた。王と二人の公が一つの広間に集まり、国のことを決める。これを評定と呼び、以後、年ごとに刈入れの月に開く習いとなった。王は広間に同じ高さの椅子を三脚置かせた。王の椅子だけを高くすることを、王は許さなかった。席次と発言の順はこの年に定めたとおりとし、以後は変えないことを最初の条とした。評定の記録はこの年から年ごとに書かれ、三家評定記と呼ばれる。
評定の初めの仕事は関所であった。1257年の芽吹きの月、三十八歳の王は関所と内税の撤廃を布告した。三国のあいだの川の関と街道の関所を三年のうちに閉じ、三国のあいだで荷に税を取らない、という布告である。関守は職を失い、関銭で立っていた町もあった。二人の公の領にも関で食う者が多く、評定ではこれをどう扱うかに二年を費やした。閉じる順は評定で決め、まず川の関を閉じ、次に街道の関所を閉じた。関守の多くは渡しの番と橋の番に移された。三年と定めた布告は六年かかり、1262年に三国のあいだの関所はすべて閉じた。王は四十三歳だった。関所が閉じてから数年のうちに、川を下る荷は倍になった、と伝は記す。平原の麦の値は下がった。王が若いころに舟手の帳で知ったことが、二十年あまりののちに一つの国の形になった。
三国の兵は統一の年に国へ帰り、王は三国の軍を一つにしなかった。二人の公はそれぞれ旧領の兵を持ち、王都には舟手と城丘の兵だけが置かれた。舟手は川の関が閉じたのち、渡しの番と川の見回りを負った。老将ゴットハルト・ブレムは1260年に退き、若い騎兵の将だったイザーク・レーンが王都の兵を率いた。舟手の頭マルコ・ティルは1262年まで舟手の頭を務め、最後の川の関を閉じる日に自ら帳を閉じた。
1258年、王は新しい銀貨を定めた。表に王の名、裏に剣と冠の国章を刻んだ銀貨で、三国の古い銭はこれと引き換えられた。1259年、リンデンに造幣所が置かれ、銀貨はここで打たれた。銀貨の裏の剣と冠は、この国の民が国の印として初めて手に取ったものである。
1261年、サルメア公ロデリクはサルメアの都に学府を開いた。王がかつて人質として学んだ宮廷の書庫が、その元である。王は王都の書庫の写しを学府に送った。古い法と三国の和約の写しがここにそろい、学府は以後、国の学の中心となった。学府の学士の初めの一人は王とロデリクを教えた学士の子であった。
1264年、リンドガル公ギュンテルは王都のオルデ川に大石橋を架け始めた。公が自ら図を引いた橋で、三つの弧からなり、真ん中の弧は旧三国のどこでもない場所とされた。七年かかって1271年に成り、結い橋と呼ばれた。三国を結った国の橋という意味である。王は五十二歳で、公と並んで橋を渡った。ギュンテルが死後に架橋公と呼ばれるのは、この橋による。
1268年、王は公定の秤を定めた。それまで秤は三国で重さの名も目盛りも違い、荷を一度売るたびに三度量り直すのが習いだったが、これを一つにした。
1270年、王女イルゼがサルメア公の嫡子ハインリヒに嫁いだ。三家のあいだの最初の縁組みである。王は娘を南へ送る日、南の言葉で娘に言葉をかけ、娘は南の言葉で答えた、と伝は記す。
1273年、オルデ川に大水があった。平原の麦畑が水に浸かり、川沿いの町が流された。王は王都の穀倉を開き、三国の別なく麦を配った。配る帳は王が自分で読み、川沿いの町の名を一つずつ呼んで量を決めた。即位の年に増やした三つの穀倉が、戦の冬に続いて二度目に国を養った。
王が手を付けなかった土地が二つある。一つは学術自治領ホーファティナルで、王は戦の三年目の冬にその特許状を取り寄せて確かめ、以後、手を付けなかった。もう一つはマハルーナで、王は統一の前も後もここに兵を送らず、使いも送らなかった。オレストリアン王国とは通商の条約を結び、戦をしなかった。
サルメア公ロデリクは1274年に没した。五十七歳だった。サルメア家は譲冠公の諡を贈った。リンドガル公ギュンテルは1276年に没した。六十八歳だった。リンドガル家は架橋公の諡を贈った。中洲の卓に着いた三人のうち、王だけが残った。
伝は治世の記事の終わりに、王の人となりを記す。王は中背で肩幅が広く、髪は四十を過ぎて早く白くなった。声は低く、大きくなかったが、兵の列の端まで届いたと言われる。朝は帳を読んでから人に会った。関の帳、穀倉の帳、評定の帳である。陣中では兵と同じものを食い、酒を好まなかった。南の言葉で冗談を言い、サルメア公とは南の言葉で話した。冠を常には被らず、中洲の日と戴冠の日と評定の日のほかに冠を被った王を見た者は少ない。王妃アデライドとのあいだに二男一女があり、次男は幼くして死んだ。王子コンラートは二十の歳から評定に同席させ、王女イルゼは南へ嫁がせた。
1276年の冬、王は病を得た。五十七歳だった。




