15分足らずで倒れた
やって来ましたは東地区中央公園。
「あはは! アハハハハハハ!!」
そこで少女は大暴れを始めた。
「ちょ」
「近づいたら駄目ッス。細切れになるッスよ!」
少女から伸びる細くしなやかな深紅の鋸歯が辺りの芝生を実に均一に刈りつくしていく。
その光景は圧巻と言わざるを得ないが、その表情は狂気そのものであった。
「大丈夫なんですか……」
「大丈夫、じきに倒れるッス」
「え」
真人さんの言葉通り、緋奈ちゃんは15分もしない内に倒れた。とはいえ、伸びた芝生の半分以上をこの子1人で刈ったのだから大したものだ。
「か、翔」
「ん?」
「翔! 早く血を寄越しなさいよ!」
なんだその言い草は。
「お姫様がお呼びッスよー」
そう言ってケラケラと笑いながら草刈り機を準備する真人さん。ここからは彼の番らしい。
「まひとにいちゃん、てつだうぜ!」
「まひとにい、いっしょにやる」
「コクとハクは危ないからここにいて欲しいッス。ここで翔君が死んじゃわないか見ていてくれると助かるッスね」
おい待て、どうして僕が生命の危機に直面する前提なんだ。
「早く、はぁやぁくぅ」
「ヒィッ」
「iE」が枯渇すると吸血衝動が増すんだろうか。僕の首筋に躙り寄ってくる様はまるでゾンビだ。
「分かった。分かったから!」
僕は観念して首筋をこの子に明け渡した。
「あはあ……翔の血……美味しそう……」
横目に見たその子は恍惚とした表情をしていた。よっぽど僕の血が好みなのか。
「いただきまぁす」
「痛ッ」
「ズュル、ジュズゥズュルルル」
「なんつー音を立ててるんだ、コクとハクが見てるんだぞ」
小さな子供2人に見守られながら勢いよく血を吸われるというのは、なんだか……不思議な感覚だ。僕はヤケにでもなっているんだろうか。恥じらいはなかった。只々、無というか……宇宙の深淵が見える――
「しんじぇねえちゃん、そろそろやばいんじゃねぇのか」
「かけるにいが死んじゃう」
幸いなことに、僕が宇宙の深淵を見ることはなかった。
「あら、私としたことが……我を忘れて吸い過ぎるところだったわ」
「我に返ってくれて良かったよ」
「君の血が美味しすぎるのが悪いんだわ」
「血が美味しすぎる」なんて難癖をつけられたのは初めてだ。凡そ世界で僕だけなんじゃなかろうか。
「多分この子は貧血になるから……どうしようかしら、OS1とか持ってる?」
「もってる」
「まひとにいちゃんがもってけって」
「それを翔に飲ませてあげて」
おかしい。俺は今日、血を吸われる以外に何もしていないというのになぜ瀕死の状態に追いやられているんだろうか――
「ちょっと……待て……」
「何よ」
「どこに……行く……」
「そこの丘の芝刈りに」
「やめろ」
この子だ。この子のせいだ。この子にこれ以上能力を使われるわけにはいかない。
俺が死ぬ!




