6話 ペタン領
この国はこの大陸でも最大の国で、初代皇帝がほぼ大陸統一をなしかけたレベルで大帝国だ。
ソレが四百年程前。そこから中興の祖とか失地帝とか様々な皇帝を経て今の皇帝に至るそうだ。
そんな帝国皇帝を支える親族等が率いるのが公爵家、
そのうちの一つ、国境に面する領地を持ち、戦闘力で武威を示す公爵家がペタン家。
具体的な事ははぐらかされて聞いてないが、前ペタン公は問題を起こし、隠居を命じられ、今のペタン公はまだ若い娘だそうで、その現ペタン公とネム嬢が元冒険者として共に冒険し、親交があるそうだ。
相当後ろの方だろうが、帝国の皇位継承権ありそうな公爵が元冒険者とか、さすが異世界。
ネム嬢の目的地がそのペタン領。
そんな公爵の領なので冒険者ギルドも領主との関係も良好、都に次ぐ規模で大きなモノらしい。
それとダンジョン。
なんでもこのペタン領、結構大きなダンジョンが存在し、そこを探索する冒険者も多いそうだ。
ダンジョンだ、絶対行く。
まずはこのダダ洩れ魔力をどうにかしなくては、だが。
そんな感じで馬車は公領の中心都市に入る。
交易路の重要な交差点になる都市で名をクロスロードと言う。
交差点まんまじゃん、とは思っても口には出さまい。
◇◇
大きな城壁にある門の前にかなりの列が出来ているのが見える。
都市に入るための身分確認、手続きの順番待ちだそうだ。
馬車も並んでいるが先触れが走ったらしく、我々の馬車はかなり盛大に順番を飛ばしている。
で、城壁にある大きな門を入ってトンネルの様になってる城壁の通路を通って都市内に入る。
いや、あれだけ外に並んでいたのを全部順番飛ばしたぞ?
現公爵の元仲間だったと言ってそんな順番飛ばせるもんか?
というか私が居るぞ?
身分証明無い人間が同乗してこの順番飛ばしである。管理体制大丈夫か?
などと思っているうちに都市の大通りを進む。
武装した兵士も見える、治安維持の歩哨か。
そして同じ様に武装しているが彼等より明らかに軽装で武装がバラバラなのは冒険者か。
何人かが明らかに異質なものを見る目をこちらに向けている気がするが、ダダ洩れ魔力って馬車の外からでも見えるモノなのかはあえて気にしないでおこう。
露店なども見え、活気にあふれている様子が見える。
見上げると城壁だけじゃなく大通り沿いの大きな建物の屋上にもバリスタか何かの武装の様な物が設置されている。空を飛ぶ魔物とかの対策なのか、他の都市を知らないが戦争を意識した都市なんだろう。
ただの交易都市ではない、といったところか。
よく見ると城壁や建物の一部に石の色が違う場所がある、崩壊して修繕したといった感じで、戦争の爪痕と言う奴か。
で、私はどこまでこの馬車に乗っていていいんだろう、正直不安が大きくなってきたんですが?
このままではお城まで行くことになるのでは?
そりゃ国家の軍事機密を見たとか言ってたけどさ、まだかろうじてただの冒険者仲間の商人とか建前あると思う。
なんで堂々とお城までスルーパスで行っちゃってるの?
建前どこいった?
そして、やはり都市中央のお城までノンストップ。
到着したお城の城門の正門を開け、中央を通ってノンストップ。
こういう時、客人は端に専用の門があったりするんじゃ?
正門を通る時点で嫌な予感しかない。
門を超えた広場に出迎えである。
嫌な予感的中である。
かなりの人数の兵士、一段高くなった場所に居る白いドレスの女性とその横に立つ大柄な男性、アレが公爵本人と前公爵だろう。
馬車はその二人の前で止まる。
扉を開けて降りて行くネム嬢に全員恭しく傅く。
降りるタイミング逃したんですが?コレ、今降りて行ったらどんな視線で見られるかわからない。
と馬車の中で空気になっていると、降りたネム嬢によく通る声で挨拶しているのが届く。
「行幸を賜り、恐悦至極にございます、皇后陛下」
ご本人とは思わなかったけどそれに類するよねーとは覚悟していたが、まさかの御本人。
帝国で二番目に偉い人に普通に馬車の中で並んでた訳だ。
偽名?のお忍びだからノーカン。って訳にもいかないと思う。
というか魔法の講義受けたし属性を見てもらったりしてたんですが?
ご飯も普通に一緒に食べてたよね?
コレは護衛も一緒だからノーカンか。
冷や汗が流れ、馬車の中の温度がサウナの様に感じる。
と、その偉い人がこちらを振り向き
「アーメル公、先触れにて紹介したウィル殿ぞ」
と私に手招きする。
私を家名でなく名前の方で呼ぶのは貴族として遇さずってとこか。
さすがにもう空気になり続けるのは不可能だし、ここで「断る」のは普通に命がヤバくなりそう。
挙動不審なのは分かってるが、仕方ない。
自分でもどうかと思うがギクシャクと馬車から降りる、
頭を掻きながら。
照れというか愛想笑いしつつ。
我ながら礼儀も何もない。
似非貴族仕草はどこ行った。
ヒレンがソレに続く、こちらも礼をするでもなく横に立った。
そういえば服を着替えるくらいの時間はあっても良かったのでは?
「ここは間者も多い、少しでも早く隔離したくての」
と見透かされたような声がネム嬢・・皇后陛下から上がる。
隔離とか、なかなかに酷い。
そして現公爵、前公爵の親子はというと
「これは・・・なんとも」
と大柄な、いかにも武人といった姿の男が驚きを隠せないといった風でこちらを見ている。
歳の頃は前世の私くらいか。
娘の現公爵はもっとひどく、真っ青な顔を引き攣らせた笑みで固まっている。声を出せた分だけ前公爵の方を褒めるレベルかもしれない。こちらは皇后陛下と同じ年代だそうだが彼女の外見は歳相応に見える。
ネム嬢、いや皇后陛下の外見が特例なだけだろう。
というか私、どんだけ化け物扱いされてるのだろう。
さすがに傷付くぞ?




