表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/55

46話 防衛準備

クロスロードに皇后陛下の親衛隊の船が戻って来た時、ペタン公は安堵した。


次々に入ってくる密偵からの情報はネイバリング王国の軍勢が膨れ上がっていく様子を示していた。


以前破壊した、迂回してくるであろう軍の拠点もまた放棄されず再利用されている様子だった。


ただでさえ少ないこちらの戦力を最低でも二手に分ける必要が出て来るという意味だ。


ネイバリング王国の軍勢の数を正確に把握し、注意深く配置せねば簡単に突破されてしまう。

ソレは避けねばならない。


そんな折にネム陛下とその軍師とも目されるマスカート子爵が戻って来た。これ程安堵する話が他にあろうか。


「この世界樹にもエルフを派遣させねばな」と中庭の巨木を見上げながら飛行船から降りたネム陛下が言う。


「エルフ共もこの木を守らねば面子が守れぬからの、無視は出来まい、多少は兵を寄越すだろう」と悪い顔をしている。


◇◇


「結局あの拠点も再建してるのか・・・悔しいが、上手い手だ」


マスカート子爵がソファーの上で胡坐をかいて頭を搔きながら言う。


「ソレに対応する事を求められるからのぅ、実際に動かすかはともかく。完全にあちらさんにサイコロを握られておるわ」とネム陛下が温めたミルクを飲みながら言う。


紅茶はそろそろ腹の子に悪い、と言って最近はもっぱらホットミルクである。


本当に戦力となる軍なのか適当な新兵なのか、ソコまで踏み込んだ情報が無ければ判断出来ず、頭数だけでも配置されれば対応せざるを得ない。こちらの兵は有限なのである。


兵の配置も問題だが、今彼女達の頭を悩ましているのは別の密偵が持って来た新兵器の話である。


「新型の魔道砲」


以前帝国の貴族達の切り札の船を遠距離から撃ちぬいた、給料百年分の大砲、ソレに匹敵する射程を誇る大砲をネイバリング王国も開発したという情報。


「どの時代でも新兵器なんてものは、片方の陣営が投入する頃には反対側の陣営でも試験するくらいまでにはモノにしてるもんだ」とマスカート卿が頭を抱えている。


コレが情報通りならこのクロスロード近辺で都市に届くであろう地点まで守らねばならない。防衛作戦の抜本的な見直しが必要になる。


そもそも防衛拠点として整備されていない場所を整備しなおす必要も出て来る。金も時間も配置する兵も有限である。


そして親衛隊の双胴飛行船が一方的に撃てる優位は失われている。


頭を抱える要素しかないのである。


「ダンジョンを解禁すべきか?」とマスカート卿が独り言を言う


ネム陛下が片方の眉を吊り上げてマスカート卿を見る。


「ウィル殿の力でダンジョンのボスを眷属化すれば、化け物の軍団であれば兵はいくらでも増やせるのだが」と地図を見ながら腕組みしたマスカート卿が一人呟く


多方面に展開出来る数の軍団はこのクロスロードには居ない、また周囲の貴族達から援軍を募っても他の軍団と訓練も無しに連携出来る軍団など、どこにも居ない。


「眷属の世代を超える維持か・・・公爵に婿入りさせるなら、一夫多妻は出来ぬ、無限の魔力と言ったか?アレを受け継ぐ子を産ませるまで愛人でも囲わせるしかなかろうが公爵家の入り婿が女癖が悪いとされるのはのぅ・・・伝えられるならば眷属もなんとか維持出来るだろうが、そもそも子に伝えられたとして腹からあの魔力を出されて母が耐えられるのか?」


ネム陛下も天井を見上げて考え込む。


「アーメルが影響を受けて魔物になるなど冗談にもならぬな」


帝国でも有数の謀略家二人がその頭を悩ませる当人は、自分の身を守るくらいは出来るようになれ、とネム陛下の命令を受けて、世界樹の下で武器の訓練をしていた。


「違います、御屋形様、そうではなくこう、横に振るのです、地面を打つと武器も痛みますし何より勢いが止まり大変危険です」とフジが巨大な戦斧を振りながら説明する


「うーん、私が習った剣術はこう縦に振り、止めてから再び振り上げる方法だったんだがなあ」と剣道の振り方を披露する。


「ソレは木剣くらいまでの軽い剣か、ワタシ達の様な力を持たねばむしろ勢いを殺すだけです」


「あー確かにそうかもしれない」数度振るだけで腕が痛い。


「振り切った時が一番危ないので剣についていく感覚で距離を取り直すと勢いをそのまま回避に使えますよ」とフジが戦斧で勢いをつけ、くるりと器用に回ってみせる


ヒレンが少し離れてシートを広げ、城で調達してきたランチセットを用意している。

ワカヒメもその隣で世界樹の枝を地面まで降ろし、その枝に腰掛けて終わるのを待っている。


筋肉も持たない木がなぜこうまで自由に動くのか、魔法は凄いな、とは思う。


クチナワが「その草木を支配する魔法、妾も使いたいのう」と羨ましがっている。

適正の問題でワカヒメ以外には使えない、ともクチナワは言うが。そもそも眷属の様なモノらしい。


ネメシスはシャムロック騎士団に正式に加入して、一緒に活動しているが、何しろ本体がドラゴンであり、帝都での襲撃でも刃物も通さぬ肌を披露していた様に、武器や防具の必要が無い彼女はヒレンと同じ様に訓練には参加していない。


一応フジが「自分が武器を使わずとも相手が使う武器の特性を知る事で対応が楽になりますよ」と誘ってはいるが。


私も自衛がそれなりに出来れば十分なんだがなあ・・・と思いつつもフジが楽しそうに教えてくれるので、悪い気はしない。


自衛は出来て損という事は無いのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ