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43話 面子

「世界樹の連中の顔を立ててやったと思っておったのじゃがな」とネム陛下が忌々しげに言う。


◇◇


襲撃の翌日、頭を射抜かれた私は昼頃にやっと意識を取り戻した。


頭を射抜かれても半日昏倒する程度で回復出来るのって凄い話だが。


ヒレンが泣きながら頭を撫で、てるうちに胸や腹の方まで伸びて来る手をクチナワがつねり上げていた。


ネメシスが土下座して謝ってくるが、命を取るのは避け、拘束だけで済ませたい感覚、法治国家な日本人なら当然の感覚だし、おそらく自分も同じことをしていただろう。


同郷のネメシスの心が少しでも軽くなればと思い伝えておいたが、責任はまだ感じているようだ。


フジは警護と昨夜の事を色々話合っている。ワカヒメも木に居た暗殺者がどこに居たか等を把握しているという事で色々と説明している。


彼女の共通語をマスカート卿が共通語に通訳しているが。


そして意識を取り戻したと聞き及んだネム陛下が会談をすっぽかしてやって来たのが先程。


「宮廷魔術師殿が必死に魔法を駆使して調べてくれたわ」と可笑しそうに笑う。


普段偉そうにふんぞり返っていた彼の頭上に暗殺者達は潜んでいたのだ。ソレに気付かなかった失態を挽回するために、術者も危険な魔法すら使い情報を引き出したらしい。


その結果、世界樹を管理するエルフの一族、その高位の者の一人が主犯と判明した。

世界樹ならその子供達であっても、自らの管理下だと信じていた彼に、他の大陸から来て世界樹を弄んだ者は許せる存在ではなかった。


「彼等にとって世界樹は宗教的に神であり、母親の様な存在であるからな。ソレを自然の摂理とは違う状況で左右する、ソレは冒涜だ、という感覚は理解してやらねばな」


ごもっともである。


「何にせよ、この城を襲撃した事実は揺るがない、責任は取らせる。

もっとも、おそらくは既に責任はとっておるだろうがな」とネム陛下がつまらなさそうに言う。


ネム陛下は既に自害して一族に累が及ばない様にしているハズだ、と見ている。


後日ソレは読み通りと判明するが。


だが、ネム陛下はソレで終わりにする気は無いらしい。

長老どもには届かぬが、多少は風通し良く、剪定してやらねばな。と悪い顔をしている。


「だが、ひとまずはここから離れるとしよう、しでかした事が大きい故、他の者も何か仕掛けてこぬとも限らん。余もここに長く居ると居心地が良すぎて落ち着いてしまいかねんしな」と笑う。


船の用意をしておけ、いか程の時間で飛び立てるか?と側近にいくつか確認と指示を出しながら慌ただしく部屋から出て行くネム陛下だが、ふと振り向く


「其方の陞爵は決まったぞ、まずは男爵だ。書類だけで式典も無い陞爵じゃ、領地も無いがまあ気にするな」


◇◇


大陸最大の国家、テンマ帝国の現皇帝、レンブナント=テンマが妻の手をとり、その前に膝をつき、学校へ登校する前の玄関先の母親の様に、持ち物、船に積み込んだお土産など忘れ物は無い旨の確認をしている。


「ペタン領は戦火に巻き込まれるのは確実だからな?敵の数をよく見て見極めろよ?無理に残るなよ?危ないと判断したらすぐ飛べよ?」


愛妻が身重の体で、またきな臭い国境の都市に戻るのだ、心配するなと言うのが無理なのはわかる。


「余の優秀さはよく知っておるであろう?」と悪戯っ子の様な表情をし、自らよりずっと背の高い夫の頭を撫でている。


「情報ではそこまで多くの軍の動く話は無い、以前話した迂回してくる軍勢もそう多くは無いだろう。心配する事はない。安心して居れば良い」


どちらが皇帝かわからない。いや、そう虚勢を張っているのかもしれない。


自らの地位を紛争への防壁に使おうというのだ、虚勢でも張らねば、その身を心配する旦那が納得しないだろう。


親衛隊の飛行船が離陸の準備が完了したらしく、汽笛を鳴らす。


「では、行って参る、後はよしなに頼みます」と皇后陛下が頭を下げる。


「初代の名を中央に継ぐ余の居城で其方の客人に狼藉を働かれたのだ、後の始末は任せておけ」と皇帝が妻をそっと抱きながら怒気を含んだ声で言う


マスカート卿が「ノブナガの名を引き継いでんだよ」と横に立つ私にこそっと囁く


ノ・ブナ・ガ


レン・ブナ・ント


あー、ソコ切り取るんだ・・・・






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