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39話 皇帝レンブナント=テンマ

飛行船は予定通り昼前の帝都に到着した。


係留作業等が終わり、タラップを接続し、一番最初に皇后陛下が降りていく。


降りた先に数名、明らかに偉そうな人達が待ち構えているのを上から見下ろしつつ我々の順番を待つ。


と、一際目立つ男性が周囲の男達と何かを言い合いながら城から出て来た。


「だからその件は決済済みであろうが、そもそもお主の主張だと予算が・・・お、ちょっと待て。」


なんとなく、アレが皇帝陛下な気がするが、かなり若いな。などと思っていると腕時計を示しながら追いすがって来ていた男を静止する。


この世界、精密機械である腕時計も存在している。高価過ぎて(ぜん)ペタン公シャルルが愛用しているドワーフ族の貴族から贈られたモノしか見た事ない、魔法を併用した工芸品の粋だ、おそらく過去の転生者による技術なんだろう。


あの手の魔法併用のモノは私が使おうとすると魔力が大きすぎて一発で破壊されるらしく、触らせてもらえないんだよな。


「3・・・2・・・1・・・よし、たった今から休憩だ。一切仕事の話持ってくるなよ?」

「ちょ・・・そんな。陛下?へいかー」

泣きそうな声で追いすがる男達を無視して今降りた皇后陛下の方に走っていく。


「おー、ネム、大丈夫か?悪阻が酷いと聞いたぞ、立っていて大丈夫なのか?座った方が良いのでは?ああ、おいソコの、ネムを木陰に」


皇后陛下の前後左右をせわしなくウロウロして周囲の者に矢継ぎ早に指示している。


「愚か者、慌てずとも逃げはせんわ。まったく、陛下は御変わりなく、いや、今はレンで良いのだったか」


「うむ、うむ、レンだ、何しろ休憩時間だからな」と、背後の男に腕時計を示しながらドヤっている。


さらに皇后陛下の傍仕えからストールを受け取りネム陛下に羽織らせている。

そっと肩にかけた手をネム陛下も手を重ね、口づけなどしている。


横に立っていたヒレンが触発されたのか急に私の肩にストールをかけてくれた。しかし多分、ポジション逆だと思う。


どちらにせよ、皇室の二人の仲は、良好なのは間違いなさそうだ。


皇后陛下の次に偉いので二番目に降りるハズだったマスカート卿が私の横で

「だから並んで降りたくねーのよなあ」とボヤいている。


下でネム陛下の周りをウロチョロしていた皇帝陛下がこちらを見上げ、マスカート卿を見つけたらしく

「早く降りてこい子爵、ネムをいつまで外に立たせる気だ」と手を振っている。

「ネムが貴様等を紹介しなきゃならんだろ」と


「変なとこ、手順に厳格なんだよなあ、急ごうか。」と頭を掻きながらも足早に降りるマスカート卿に連れられて我々もあたふたと降りる。


あくまで休憩時間中の私的な紹介で話を進めてしまいたいのだろう。

もしかしたらネム陛下と既に打ち合わせ済みなのかもしれない。


◇◇


皇帝、レンブナント=テンマの前に立つ。


大陸最大の帝国の皇帝、立つだけで気圧される。覇気に満ちているとはこの事か。

エルフの血を引く男は若いとは思ったがネム陛下より多少は年上のハズだが見た目ではそこまでの差は無い様に見える。


本来こんな場で対面出来る存在ではないハズだ。


形式上ネム陛下が紹介するまで軽く頭を下げたまま待つ。


ネメシスがさらに平伏しちゃってるのはスルーしておこう。


「以前から伝えておるウィルシール=シャムロック殿と愉快な仲間達である」


随分と端折ったな。


皇帝陛下にはツボったらしく、盛大に笑って・・・むせた。


「ご紹介に預かりましたウィルシールです、皇帝陛下にはご機嫌麗しく恐悦至極で」

と挨拶しかけたところを、むせながら涙目の皇帝陛下が手で制す。


「時が勿体ない。休憩時間の間に個人的に、あくまで個人的にその方達の魔法を見てみたい。着いて来い」と歩き始める。


と、突然振り向いてネム陛下を抱き上げた

突然の思い付きの様な行動に驚く周囲の者達。


きゃあと素で悲鳴を上げたネム陛下だが皇帝につられて笑う、共に笑い皇帝も愛妻を抱き上げたまま再び歩き始めた。

共の者達も思わず顔を見合わせ笑みがこぼれる。


対抗して私を抱き上げようとしたヒレンを制してその後ろを歩いて付いていく。


クロスロードの城より広大な中庭にある庭園に入る。


クロスロードの城の中庭は有事の際には兵の駐屯、物資の集積の為の広場も兼ねていたがここは流石に首都、完全に庭園として客の目を楽しませるのを目的に整備されている。


その中央付近にある木の前に来た。


事前に到着したらすぐ始められるように準備しておけ、とは言われていた、ここまでノンストップで始める事になるとは思っていなかったが。


「よし、この木で良い、始めてくれ」と皇帝陛下が振り向いた。


◇◇


間抜けな顔で大きく口を開けて巨木を見上げている皇帝を、ネム陛下が指さして爆笑している。


皇帝を指さして笑える存在が居るという事が驚きだ。


背後にぞろぞろと付いてきていた皇帝陛下の側近達も皆口を開けたままだ。


クロスロードと同じ、いやもっと大きいか。

ちょっと張り切って魔力を出しすぎたかもしれない。


大陸最大の国家、その中心、その難攻不落の防御力と見た目の美しさを兼ね備えた巨大な城の庭園を覆い隠す様に巨大な世界樹の子供達が出現した。



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