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35話 世界樹の子供達

アーメル=ペタンは執務室で暗澹たる思いだった。


ネイバリング王国との紛争、その再発が現実のものとして対処しなくてはならなくなった。


膨大な予算の承認の書類、戦略物質の購入予定の承認、冒険者ギルドへの協力の調節。

書類の山が執務室の机に積み上げられていく。


アーメルがペタン公爵位を継いでからは平和だっただけに、陰鬱な思いであった。


兄達が文字通り命を懸けて撃退した前回の王国貴族連合軍、そこまでの規模は無いだろうとマスカート卿もネム陛下も同一見解だったが、だからと言って戦争は敵も味方も被害が出るモノであり、


被害とは誰かの親であり子であり恋人であり妻や夫であるのだから。


父、シャルルが焼き尽くした都市の住民の被害は計り知れない。


ソレは解っているが、ソレによって救われたのも事実なのである。


◇◇


ネム陛下がお腹を撫でながら書類の束をテーブルに投げる。


シャムロック騎士団として呼び出しを受けペタン公の執務室で陛下と対面している。

まず私が目を通し、眷属達に回して良いか確認をとる、


「どうせ相談するのであろう?今目を通した方が早かろう」と陛下が笑う。


「その報告書にある通り、()()()()()()()が見つかった」


世界樹の子供達とは帝国中央部にあるエルフの里に存在する世界樹(ユグドラシル)の若木である。


ユグドラシルとしての成木は世界に一本のみだが、世界中にはその(たね)でも発芽したのか、同じ種類の木が時々現れる。

世界樹と呼ばれる規模の大木程ではないが、それなりに大木になり、また伝説にあるような治癒効果等は本家に近い効果が確認されている。


手に入れるには気難しいエルフの許可が必要になるユグドラシル本体より「手軽」に手に入る葉や枝の産地として重宝される存在である。


この世界、治癒魔法も存在しているが、地水火風の属性魔法よりさらに希少な存在であり、水魔法がそれなりの治癒効果を持つ以外では、魔法による治癒の希少価値が高い。


その為に、薬草等の自然に存在する薬などの価値も維持されており、

また錬金術等で作られるポーションと呼ばれる即効性のある治癒薬など、様々な薬が日夜研究されている。


ソコでいくらでも需要がある世界樹の葉などの素材は武器防具に並ぶ貴重な戦略物質である。


「で、其方もいい加減、マトモな功績を上げろ、という訳で行ってこい」


各地に配置している情報網から上がった情報であるが、何しろ密偵である。


そのまま発表など出来る訳もなく


「半騎士の冒険者が発見」という形にしようとお膳立てされた訳だ。


バレたら反感しか無い出来レースだよなコレ。


◇◇


発見された世界樹の子供達までの道中、クチナワも回復魔法を使うと聞いて驚く。


「最初の頃に言ったと思うのじゃがなあ・・・主様は自前でなんでも再生してしまうからのう」とため息をつくクチナワ


なんだかんだで眷属の再生を私の魔力で行う為に「回復」そのものが不要なんだよなこの騎士団。


今回は正式な騎士団の任務としての行動なので騎士団として登録していないネメシスは最初から同行はしていない。


今頃は新たに登録した冒険者ギルドでの任務をこなしているハズだ。


人型のままでも竜人としてパワーもあり、体も頑丈、さらに自前で空を飛べ強力なブレスまで持つ彼女は討伐系などお手の物だ。すぐランクも上がって行くだろう。


そんなこんなで街道から外れ、鬱蒼とした森の中に樹齢千年はありそうな一際大きな大木を見つける。

教えてもらった特徴通り、世界樹の子供達だ。


地図に正確な位置を書き込み、葉や適当な枝、根の一部等を袋に入れていく。


念のため、鑑定も使っておくか、と思ったところで気付く。


こいつ、転生者だ。


鑑定の結果は転生者であり名前がある。


「なあ、クチナワ、こいつ転生者だぞ」


「主様、何を言って・・・・え?あれ?本当じゃ・・」とクチナワが大木を見上げて口をぽかんと開けている。

なんでも限りなく薄まっているが魂が木ではなく人のソレなのだそうだ。


ヒレンはいくつか集めた葉をもしゃもしゃ食べながら

「魔力をかなり蓄えているので美味しいですけどね」美味しいか美味しくないかだな、いつも。


あと勝手に提出用の葉を食べるんじゃない。


フジは大木を見上げながら「言われてみれば・・・うーん?」と悩んでいる。

クチナワ程の魔力が無ければ見分けがつかないのだろう。


クチナワが「で、どうするのじゃ?主様。主様の魔力でネメシス殿の様に人の形を取り戻せるかもしれぬがのう?」と聞いてくる。


言われて見ればそうだ、ソレが出来そうだ。


勝手にやってイイのか少しだけ悩む。


ダンジョンしか言われてないし気にしなくてもイイか。

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