3話 襲撃
巨大ゴキブリがなぜ美女に?
そもそも眷属とは何だ?
などと考えてる間にその全裸美女がこちらを向く。
「あなたがお母さま?」
と首をかしげながら声をかけてくる
いやそれはおかしい。
母親ではない、父親ならギリ、いや見た目からして明らかに女の方が年上だし。むしろソッチがお母さんだ。
だが
眷属だと知ってしまっている。
どうして眷属になるのか、どうしてあの巨大Gが美女になったのか、ソレはわからないが、とりあえず眷属であるというのは鑑定で明らかだ。
何だか思ってる事の表面的な、多分強く感じた感情は伝わってくるし感覚共有とかはあるなコレ。
「親かどうかは知らないがどうやらお前の主ではあるらしい」と答える。
相手に合わせて古代魔法語で。
やはり通訳の線は固い、通訳で食っていける。
とりあえず、男達の死体から武器や財布でも回収出来れば今後なんとかなるのだろうとは思いつつ、正直触りたくない。
などと思った時、高い声と金属をうち合わせる音、いわゆる戦闘音が聞こえて来る。
結構近い。
見に行くか?
どうしようか悩む、今はまだ何もわかっていないし、そもそもこの世界の戦闘がどういう物かもわかっていない。
いや足元のコレも戦闘ではあるがコレはノーカンだろう。
そして自分の魔法は発動方法すらわかっていない。
自分に何が出来るか?と問われても今は何も出来る気がしない。清々しいまでに何も出来る気がしない。
魔法の発動がわからないままだと中身の現代日本のおっさんのままだ。
何を出来るというのだ。
口先だけでも何とか出来る人は居るだろうが、それが出来るのなら氷河期でも、勝ち組ってやつになってるだろ。
私は負けとまでは言わずとも勝ちでもない。
と悩んでいる間も戦闘音は続く。
正直、このまま黙って隠れていれば戦闘は終わるだろう。
だが
今度は私がソレに耐えられるのか?と疑問が湧く。
戦闘が終わるという事は敗者と勝者が出来る。
静かになった時「自分が何もしないまま、何かが出来た場所で」結果を受け入れられるのか?と。
敗者に後から感情移入した時、後悔に耐えられる気がしない。
とりあえず、何が戦っているのか、この世界の戦いがどういった物なのか、
この山賊たちではなく。他の戦いを見よう、見学だと自分に言い訳をしつつ覗きに行く事に。
ついさっきまで生きていた山賊達の死体から離れたかったのもある。
なんだかんだで中身は現代日本の日本人だ。
死体は忌避したいのだ。
意外と近くに街道があった。
それなりに堅牢そうな馬車を守るグループとその襲撃者という感じか。
少し小高い位置からソレを見下ろせるイイ場所に出た、ソコから道を挟んで反対側から襲撃者が襲撃したようだ。
元Gの美女が無表情のまま来たのに合わせ、ただ見ているだけよりどちらかに加勢、介入する事を考え始める。
この眷属の美女が戦ってくれる、という他力本願が前提だが。
あ、堂々としてて違和感無かったが一糸纏わぬままだ。
どうしよう、と悩み始めた頃、戦闘に動きがあった。
馬車の扉が開き、ピンク色フリフリレースな子供がこちら側に降りて来た。
護衛であろう周囲の人間が慌てているのでこの子供が襲撃目標という奴だろう。
その子供と目が合う。少しは離れた木陰から覗いているのに間違いなくこちらに気付いている。
むしろあの子供は襲撃者よりこちらに注意を向けている様子だ。
襲撃側は先ほど裂かれた山賊風と同じ様子、防衛側はカラフルな子供と小奇麗な服装が数名だ。
味方すれば謝礼も望めそうなのは防衛側だろう。
位置的に山賊風に味方すれば丁度挟み込める位置だが
・・・というか先ほどの山賊風グループ、そのためにあそこに来たのか。とハタと気づく。
確かにボーナスとか言っていた、主目的は別にある言い方だ。
どうせならこの世界の事も聞きたいしマトもな人間とツテが出来るのは逃したくない。目先の謝礼等も含めて美味しい話だが、見守り過ぎてはタイミングを逃しかねない。
というか子供だけはこちらに気付いている。出て行かないと逆に「出ていけない後ろめたい理由がある」となりかねない。いや服装や武装の面の不安はあるのでまあ、その通りだが。
よし、行こう。
手ぶらだがな。
しかしまあ何か羽織るくらいはしていないと流石に異常者すぎる、と、血だらけではあるが私の上着を羽織らせる。
私はシャツ一枚だ。どちらも血染め。
「着いて来い」と元Gの全裸眷属美女に言いつつ立ち上がる。
頼りはこの全裸だ。他力本願、いい言葉だ。
「どうしました?」と護衛風の者より我々血染めの二人に共通語による誰何。
「敵ではない、先程この上であっちの連中の仲間と思しき集団に襲撃され、返り討ちにした、こちらで戦闘音を聞きつけ、駆けつけた」と同じく共通語で答える。
「逃げ損ねた貴方の仲間は他に居ますか?」と惨劇を想像させるこちらの血染めの服を見て聞いてくる。
「いや、仲間は居ない。連中は返り討ちにした」
護衛の人間だろう、一人こちらに来た。ソコで留め置き座らされる。
自分達の護衛対象に迂闊に近寄らせる訳にもいかないといったところか。
「災難でしたね、もう大丈夫」とその若い護衛が声をかけてくる。
肩あたりで切りそろえられた白っぽい銀髪、目をひく大きな耳が頭にある、獣人だ。猫獣人だ。尻尾もある。
ファンタジー世界の定番、テンションも上がる。
「追いかけてくる連中が居ても我々が対処するので安心してください、荷物は後でとりにいけます」
と言いつつこちらの怪我の程度、体を手早くチェックしている。
いや、だから返り討ちにしたと何度も言ってんだけど?
まったく信じていないのはこちらが出て来た森の方向に向いている耳でわかる、
獣人は警戒してる先が視覚的にわかるな。
馬車の方を見ると戦ってる護衛の中に一際目立つ、2メートルはありそうな大柄な女性が目に止まる、紫色に見える長髪。目立つ角が何本もある。こちらも何かの獣人だろう。
長い髪をなびかせて私の身長はあるだろう長剣を軽々と振り回している、襲撃者は数こそ多いがアレでは迂闊に近寄れず、この硬直を生み出している。
こちらに猫獣人が来ているので、手薄になっているのだが、相手をまったく近寄らせない。
と思ってる間にまた一人襲撃者が倒れた。
明らかに実力差がある強さだ。
そしてピンクの子供は襲撃者でも護衛でもなくこちらを見ている。
まあ敵かただの巻き込まれた旅人か判断出来ないだろうし。
そして何かに納得したのか、こちらを見ていた子供は襲撃者へと振り向き、
「もう十分だわ」と言いつつ耳元を触り、イヤリングを襲撃者の方に投げる。
と思ったらイヤリングが落ちた場所に光とともに馬車より大きな芋虫が現れる。
頭に巨大な牙が並んだ大きな口を持つ芋虫だが。
召喚魔法って奴か?一瞬魔法陣が見えた様な気がする。
正直質量保存とかの法則無視の大きさに驚いたがこっちはコレに憧れていたのだ。コレが見れただけでここに来たかいがあるという物。
年甲斐もなくテンションが上がる。いや転生したので年齢相応と言おう。
遠慮なくテンションぶち上げる。
思わず手を握り締めるくらいテンション上がる。
ソレに気付いた護衛の獣人が得意げに
「驚くがイイにゃ」
と呟いたのが聞こえる。
その語尾が素なのですね。大好物です。
その後はもう一方的という奴だ。
木々の間に隠れて弓を撃ってた連中が絶叫をあげつつ木々と共に空中に放り投げられてるのを見つつ思う。
コレ、出て行かずあのまま隠れてたらあの中の一人になってたんだろうな。




