29話 功績
フジを加えて四人になった三つ葉のクローバー騎士団
四人である。三つ葉なのに。
「お父様は別枠なのでソレで良いのです」
「まあ戦闘要員でも無いしのぅ、丁度良いじゃろ」
「ワタシ達が葉、御屋形様は茎でございますよ」
戦闘要員として、私は相変わらず魔法を使えない。
魔力だけで、しかも抑えきれずある程度は漏れたままなので、クチナワなどに言わせると
「魔力を探知出来る者に対しては隠れるだけ無駄じゃなあ」
程度には目立っているらしい。
だが最初の頃と違い、「常識的範囲で魔力が大きい人」程度の漏れらしいので、妥協点としては悪くない。
自分でも魔力を探知出来る様になりたいものだが、結局のところ
「ジェットエンジンの前でオルゴール聞きたいと言ってる様なもんじゃないかな」とは元日本人で魔法が使えるマスカート卿。
ともかくネム陛下から直々に指令が下った。
「余が子を産む前に陞爵に足る実績を上げよ」と
帝国皇室の子が産まれるとなるとお祝いでありそのタイミングでの陞爵は反対も出にくいので押し通しやすいと。
ただしダンジョンは駄目だ。との厳命。
さて、どうしたものか。
政略結婚はともかく、単純に社畜が理想と教育されてきた元氷河期世代、お上の命令には従わないと落ち着かない。
と、悩んでいるとそのネム陛下からの助け船が出た。
「余の実家の開発した魔道砲のテストの協力を以て、実績の一助とせよ」
魔道砲は先のペタン城襲撃事件で使われた切り札の大砲だ。
何人もの魔法使いが魔力を込め、ビームを撃ち出す大砲だが、何しろ射程が短い。さらに魔法使いが個別に魔法使った方が有益だとまで言われる代物だったが、ついに射程が伸び、郊外、外苑の森の先から城まで届くまでになった奴だ。
魔法使いが個人で届く距離以上の遠方から撃てる、実用的な兵器になった。
という訳で協力方法だが、十人の魔法使いが込める魔力を私一人でやってみろ。と
十人分を一人で、しかも何発分も無限に装填出来るなら、そりゃあ凄い。
という訳で大型飛行船から城の中庭に降ろされた大砲の前に居る訳だが
うまくいけば城の城壁に据える大砲を無限に撃てるようになる、と期待を込めた視線を集めつつ、説明の通り魔力を込める作業、指定された魔力充填口に魔力を流し込むイメージで慎重に流し込む。
爆発した。
急に膨らんだ様に感じた直後、発砲時にも鳴らない様な爆発音と共に大砲が弾けた。
火にくべた栗が弾けるように、大砲が弾け、空高く舞い上がった。
首だけで潤滑油が切れたような動きで振り向いて御天覧中のネム陛下達の方を振り向く。
マスカート卿は腹を抱えて爆笑。
ペタン公はおろおろと陛下と私の居る砲台を交互に見ている。
ネム陛下は足を組んで椅子に座り頬杖ついたままよく通る声で私に言った。
「その大砲、其方の騎士給与百年分じゃぞ」
空高く舞っていた百年分の給料が重々しい音を立てて中庭に落下した。
◇◇
「陛下が、最初に飛行船の動力触らせなくて良かったと仰っておりましたよ」
と親衛隊のクリスが私に言う。
「大型飛行船の動力を一人で回せるとソレだけで秘密兵器になる、とか言ってたもんねえ」
とタリアが楽しそうに言う。
給料百年分を請求されなくて良かったとフジとクチナワがシミジミと話している。
ヒレンは以前ならこういう時は他のテーブルで餌付けされてるものだったが今は私の隣で大人しく座っている。髪に混じってる触覚がこっちを向いている。
私は微調節がまったく出来ない魔力操作をどうにかマシにしようと蝋燭の火を吹き消さない様に魔力を操作する訓練を繰り返して、火を吹き消してしまっている。
「魔力だけで火を消せるのって逆に凄くない?」とタリアが言っている。
この親衛隊二人、勇者と接触がある為に帝都に戻さない方が良いとなって、護衛の継続兼、私の手伝いとしてクロスロードに留め置かれている。
特にクリスが勇者への恋慕が強いと判断され、対策がとれるまでは下手に接触させると、退職してでも勇者の元に走りかねないと危惧されている。
魔力操作を覚え、魔法を使える段階になっており、失うのは惜しいと見なされている有望株だ。
ともかく、今はただ冒険者ギルドでダべってる訳ではなく、公爵からの依頼を受けて手続きの時間待ちである。
魔力充填での功績ロンダリングが、私の操作加減が甘い事で失敗するので、代替として大型魔獣の討伐の依頼を受けたのだ。
クロスロードから離れた隣国の国境に近い山岳地帯にドラゴンが飛来し、縄張りにしたのである。
大人数での討伐は単純に隣国に対して色々と面倒くさいので少数精鋭での迅速な討伐が望ましい、という事で私に白羽の矢が立った。ドラゴンなら功績として多少はプラスに出来る、というのもある。
まがりなりにもドラゴンだが、ネム陛下もマスカート卿も過去に討伐した事がある、という程度の存在で、残念だがダンジョンのボスの討伐の方が功績としては高い代物らしい。
この世界では所詮トカゲの親玉だ。
ただし、一般的な領民や駆け出し冒険者などには絶望的な強さなので討伐自体には意味があるので、依頼としてこなしておこうという奴だ。
「あ、でもでもドラゴンの中には魔法も使えて数千年生きてる個体も居ますから、そういうのはもう伝説のレベルですし、勇者様にしか討伐出来ないでしょうねえ」
とクリスが頑丈なフラグを建てた。




