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27話 凱旋

私達は凱旋した。


懐かしいクロスロードに戻った時、懐かしい門を見た時、ここが私の故郷だと思った。


前世の故郷でも感じた事は無かった感情。


当たり前過ぎただけかもしれない。だが今は間違いなく安堵を感じる。


冒険者になったからこそ感じる事が出来たのかもしれない。

いや、ヒレンを失いかけたからか。


ともかく


フジを新たに加えて4人になった我がシャムロック騎士団は凱旋した。


懐かしい門番もおかえりと言ってるが、普段の冒険の帰りとしか思ってない。

まだ誰も凱旋とは気付いて無い。


だが冒険者ギルドに戻った時、他の顔馴染みの冒険者達が椅子から立ち上がって歓声を上げた。

ヒレンは人気者だったのだ。

勇者が失敗したのも、取り残されたのも、私が救出に向かったのも、全部知っていたのだ。


気にしてくれていた顔馴染み達が共に喜んでくれる。なんと幸せな話だろうか。


美女が三人に増えて、ましてムチムチと背景に見えるようなフジが加入していることを見た男性冒険者は解散、解散。と言ってるが。

喜べよ。


「なんだ貴様も勇者と同じハーレムパーティかよ」とブーイング。


うん、私も正直ソレは思う。


フジは結局和服を着ている。胸回りを大きく緩めてしまえばその巨大なバストが楽だし帯で下を支えられるので楽だそうだ。


確かにハーレムだ。

だが不可抗力なんだ。


ともかく。凱旋だ。


顔馴染みの冒険者達と達成感のおすそ分けといった感じのハイタッチをしつつ窓口へ。


いつもならヒレンが途中で他の冒険者達のテーブルに寄り道始めるのだが、今日は私のすぐ後ろから離れない。

帰る途中の道中でもほとんど離れなかったな。

やはり不安に思うところがあるのだろう。


そのまま四人で窓口に。

取り残されたヒレンの救出の成功と、ダンジョンそのものの攻略の成功を報告する。


ダンジョンの攻略、勇者が事も無げにやるので、その価値を理解していなかったが、帝国中でも何年かに一回出来る程度のレベルであり、冒険者ランクはソレだけで1つ上がるというレベルの話だ。


さらに今回は勇者が撤退したダンジョン。


冒険者ギルドにひときわ大きな歓声が上がった。


◇◇


国の公式な依頼であるので、やはりギルドから城へ報告が上がり、私達に登城の沙汰が来た。


問題はここからだ。

ネム陛下やマスカート子爵、そしてペタン公。

勇者の魅了が効いているであろうこの貴族達に、どう切り出し、どう味方になってもらうか。


ダンジョンの攻略はあくまでそのための足掛かりなのである。


フジを加えて四人で相談する。


「問答無用で解毒してしまえば嫌でも理解しますよ」とヒレンが過激な事を言えば


「そうは言うても貴族に魔法を勝手にかけて良いもんかのぅ」とクチナワが難色を示す。


「御屋形様の方針にワタシは従いますわ。まず先方をワタシは知りませんし」とフジ。

お父様と呼んでヒレンを怒らせてから、結局、御屋形様呼びになったらしい。

武将か。


そのフジはダンジョンからクロスロードまでの道中で既に共通語で会話していた

さすが哺乳類。


とりあえず、最初に私が感じたアレ、魅了されている事を伝え、感情が操作されてる事を自覚させる事で道が開けるんじゃないか、と私の考えを伝えておく。


特に、マスカート子爵、彼女は私と同じ、転生者としての毒への抵抗があるハズなので、私と同じ程度だろうし、そうすれば後は彼女に任せてイイと思うし。


そんな行き当たりばったりで、陛下達と話し合ってみよう。


◇◇


通されたのは城の中庭、いつものお茶会だった。


謁見の間とか応接室みたいなのはあるハズだが、気心知れた仲間内の会話をしたいらしく、間者を警戒してるらしい。


ヒレンの救出、その後のダンジョンの攻略とその顛末、フジの紹介といった流れで報告をする。


ヒレンが勇者に命じられた殿(しんがり)というより捨て石を魔力が尽きるまで踏みとどまったと聞いたマスカートが考え込んだ。


意外と自分で勇者を許しすぎる違和感を感じてくれたかもな。


一通り報告した後、少しお腹が目立ってきたネム陛下が楽しそうにペタン公へ話しかける。


「婿入りで話が進みそうじゃな?」


何の話?


ペタン公の目が泳いでいる。


何でも、私を騎士爵から陞爵させて、公爵家に婿入りさせてしまおうという話が出ていると、ネム陛下が面白そうに語ってくれた。


その話の出所、陛下じゃ?


「皇帝の血族の公爵となると男爵程度では当然釣り合わない。もう少し上げなければならぬがな、相応の槍働きがあるならその階位以上の扱いは出来る」


と悪戯を企てているかの様に言う。


勇者という特別な存在が逃げ出したダンジョンを攻略した、これでこの他にダンジョンを攻略して、まぐれでは無いと証明すれば十分階位以上の扱いになる、と。


なんだか私の与り知らぬ所で話が勝手に進んでるけど、そういうのは当事者が・・・と思ったがそういえば貴族達だ、この人達、しかも皇后陛下。


自分の希望とかそういうのとは別次元の政略結婚が当たり前の考えなのか。


と驚くやら呆れるやら、お互い大変ですね、どう逃げますかねえ、と思いつつペタン公を見る。


目が合った、ペタン公が、はにかんで笑った。目を伏せて耳まで赤くなっている。


あれ?なんか可愛いなこの公爵。


元々くるくる巻いている髪をさらにくるくる指で巻きつつ下を向いて、ちらりとこちらを上目遣いに伺ってくる。


可愛いな。


陛下達が面白がって、今回の功績などを色々吹き込んでいたらしい。


政略結婚しか選択肢の無い中で比較的マシ、かつ若い将来有望株、とでも吹き込まれたのかもしれない。


公爵として常に貴族達の権謀術数の中で揉まれている中で、新しい若者として意識しちゃった感じか。


などとやってる間、マスカート子爵は眉間に皺を寄せ、考え込んでいる。


ネム陛下が気付いて真面目な顔になる。


どうした?と陛下の問いに、応えて


「ウィル殿、もうダンジョンを攻略するな。」


と今までに無い程、真面目な顔をしてマスカート卿が言った。




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