20話 公式な要請
私はクロスロードのギルドを中心に冒険者活動を続けている。
クロスロードのギルドは私の様な半騎士の冒険者が意外と居る。
なんだかんだで冒険者としての仕事が絶えない交易都市であると同時に、小さな国境紛争も絶えない、騎士としての仕事も多い都市なのだそうだ。
数年前にも大きな合戦があったと。
その時、既存の軍勢が文字通り擦り減り、その補填の為に騎士に陞爵された冒険者、傭兵が多い。
そしてココに居る限り、普段は冒険者、合戦時には契約通り騎士として参じる事が簡単なので、ソレもクロスロードギルドが人気な理由だ。
そして、当然冒険者向けの装備、携帯食等の旅装備の店も多く、行商、隊商の行き来も多い分、大口の食糧等を扱う店も多い。
水だけでも樽を作る材料、加工と大量の職人が必要になり、入れるだけの樽も需要に見合う供給を維持する人数は膨大になるのだ。
自然とソレの護衛も多く・・・と雪だるま式に需要が高まるのがクロスロードである。
ソコを領有するペタン家は経済面でも自然と大きくなり、国境線の特殊性から軍事面も大きくなり、血筋に負けない帝国有数の大貴族だ。
だが、今は後継者が不足している。
優秀と誉れ高かった長兄、二男と相次いで失い、今は一人娘が公爵を継いでいる。
前公爵へ後添えの話、女公爵への婿入りの話も当然出ているが、派閥争いと国境線のきな臭さで停滞している状態である。
そこに帝室派閥の「裏の無い」新進気鋭の騎士が現れたのだ、帝室としてさっさと功績を上げてソコソコの階位の貴族にして婿入りさせれば血縁強化になる、と思うのは仕方ない事である。
私の預かり知らぬところで、色々と優遇されていた訳だ。
そんな中、クロスロードからそう遠くない、だがペタン領ではない隣領の規模の大きなダンジョンを勇者が攻略する事になった。
元冒険者が領主のペタン領のダンジョンはダンジョンの情報収集の依頼が当たり前にあり、どこも地図や内容の資料がまず作られているのに対して、他の領ではそこまで情報を重視していない。
「行けばわかる」と冒険者達もかなり気楽なモノ、
さらに企業秘密としてライバルに情報を渡さないというのもあるが。
勇者も、行けばわかる派。
事前情報は甘いままだが、現地の冒険者達が何人も未帰還になっている危険ダンジョンである。
なのでもう潰しておこう、という訳で勇者の投入である。
ソコに勇者たっての希望で我が騎士団の中から人員を派遣する事を求められた。
三人セットで動きたい私に対して、1人だけ派遣しろ、と。
まあ勇者が傲慢であるのはわかっている、言い出したら聞くまい、とも。
勇者の強さは確かに折り紙付きであり、正直なところ、眷属の二人どちらであっても大丈夫だろうという安心感はある。
強いて言えば私の魔力に依存しており、魔力供給が途切れる期間が長期になるとどうなるかの不安もある。
特にダンジョンは私の魔力漏れを遮断する為に使おうとした程、外界との魔力断絶が起きる。
あまり長くダンジョンに居続けるとどうなるかわからない。
しかし困った事に要請は本物の公式ルートだ。騎士になったという事はコレを断るには相当の理由が必要になる。
そんなものは無い、気に入らないから、など使えない。
そして皇室側は危険度の高いダンジョンを潰す勇者に協力した、とプラスを楽に稼ぐための「簡単な依頼」のつもりなのである。
仕方ない、ウダウダしたが、結局誰かが行かねばならないのだ。
どうしたものか、と元ダンジョンの主のクチナワに相談する。
「ダンジョンは魔界の魔力に満ちた空間、妾は元々ソコの住人、もし主殿の魔力供給が叶わぬ時、影響が大きく出るやもしれぬ」
転じてヒレンの方はこの世界の魔力で構成された存在。ダンジョンの方が異質であり、魔界の魔力を下手に取り込む危険は少ない、らしい。
妾は、かの者は嫌いだ、というのも理由の一つらしいが。
フルボッコを思い出す。
ヒレン本人の希望はどうか?と問うが、彼女は正直どっちでもいいらしい。
いや少しは、離れたくないとかそういうのは無いのか。
美味しい魔力が食べられない期間が長いのは困るなーといった感情が流れてくるので少し悲しいです。
ともかく、ヒレンを派遣する事は決まった。
彼女も今は共通語の読み書きまで問題なくこなせるようになったので、単独行動も出来る。
面倒な公式要請の書類仕事をクチナワに任せ、装備を整え直す。
普段鎧など着る事もなかったヒレンだが、公式な派遣なので、役人が同道する。やる気が無いと取られかねないとクチナワが指摘したので、仕方なく。
ほら、着なさい、子供じゃないんだから。
「お父様の子供ですよ?」
うん、そうだけど今言ったのはそうじゃないんだ。
ダンジョン内や野宿で鎧を外さない冒険者の鎧は体への負担が少ない様に作られる。
ソレでも慣れて無いと当然ストレスだが。
慣れて無いヒレンはストレスな側なので、嫌がるのもわかる。
わかるが任務だと言い聞かせて、渋々納得してもらった。
めちゃくちゃ渋々だ。
金棒は、一応頑丈さを第一に選ぶ。
ミスリルを混ぜた合金を勧められたが、たぶんソレは携帯食感覚で齧るので止めた。
断っている時点で涎出てたし。
ミスリルの鎧の修繕で使う修繕材をいくつか購入しておやつに持たせてやる。
おやつだから今食べない。
もう少し購入して持たせる。
そんな訳で公式な要請書を持たせ、ヒレンとは別行動になった。
早いとこ終わらせて戻ってきて欲しいところである。
力仕事ならクチナワはヒレンの足元に及ばない。
他の事ならクチナワは優秀過ぎる程だが。
正直なところ、常に一番近くに居たヒレンが居ないというのは想像出来ない。
常に守られていた自覚はあるので、奇襲などしてくる知性のある人型の魔物等は避けた方がイイだろう。
そもそも元々三人がセットだったのだ、連携から考え直さないとならない。
連携。私が何もしていない様に見えても連携。
という事で私が使う背嚢なども購入しておこう。
荷物持ちなら出来る。
重くない奴なら。
少しくらいなら。




