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19話 政治

襲撃事件から数日が過ぎた。


あれから一介の冒険者である私にはわからない貴族の世界の方で色々あったらしい。


特に撃墜された飛行船、アレが証拠満載状態らしく、そこから色々と


「帝都の風通しも良くなったわい」とネム陛下が扇子をひらひらとさせながら笑う。


今回は皇帝陛下その人が激怒し、ネム陛下が想定していた以上の貴族達へ処刑や取り潰しが断行されたらしい。

皇后陛下は、皇帝陛下の逆鱗だからなあ。とはマスカート卿


没収した広大な領地を帝室直轄で管理する代官や役人の不足が起きている上に、深刻な貴族不足になった。

路頭に迷った家人を雇うにも反逆、不敬の者に連なる者を雇うのは難しいのである。


ただ、今回は陞爵させる程の功績が不足している。

飛行船撃墜したのも親衛隊という皇后陛下直属だし、舞台になった城は公爵家で、元々最上位。

前公爵を隠居から戻す話も出たくらい陞爵させる枠を探している状態らしい。


城内の暗殺者排除に功績があったマスカート子爵は、陞爵こそ無かったが今回処罰され没収された貴族の領地を賜った。今までは子爵と言えど、領地を持たない貴族だったので。


帝都に近く交通の要衝らしく経営を任せられる代官に頭を悩ませている。


「下手にイイ土地だと税金とかの献上金の評価額が高けぇのよ」とはマスカート子爵の本音だろう。


そして、一介の冒険者に過ぎなかった私だが、功績随一との評価で騎士階級への陞爵となった。


ナイトである。


国から給金が出るし、国に従騎士階級への認定申請を出し、通れば公式に配下も持てる。


本来、眷属二人の功績もあるハズだが、コレは私の配下として、まとめて私の功績に繰り上げられた。

報奨金は個別に出ているが。


さっそく眷属の二人を従騎士階級へ申請出そうと思ったが

従騎士への給与は私の騎士給与から、と知って申請書を持ち帰った。うん元々大した金額じゃないので無理だ。申請してしまうと給与は払わないと不払いの罪になってしまうし。


基本的に騎士階級は誰か上の階級の貴族の配下に収まるものだが、私の様に冒険者をしつつ、呼び出し対応で過ごす騎士も多いらしい。こういう名目だけの騎士は従騎士を持たない。


誰かの配下に付き、そこの領地を分け与えられる領地持ちが従騎士を持つもの。

領地持ちになると経営に様々な人手がいるからね。


マスカート子爵の庇護下に入らないかと誘われたが、冒険者をやるのが今一番やりたい事だと伝えると、

「だよねー。わかる」

と納得してくれている。


ネム陛下も、このままペタン領で、出産までここに留まることになったと発表があった。

親衛隊も堂々と駐留させ、コレを駐留させる事自体が目的とはマスカート子爵談。国境線がきな臭いらしい。


我が騎士団はまだ三人の小さな騎士団だが、団旗は三つ葉のクローバー(シャムロック)にした。


そして認定証とかの書類を見て気付いたが、この帝国、国旗が織田木瓜だ。

織田家の家紋だ。


マスカート卿に聞くとニヤリと笑った。


我々の世界の本能寺の変の後、初代皇帝ノブナガがこの世界に現れた。

彼は地方の弱小貴族、テンマ家の六代目と名乗り、当時の小国の王を追放し成り代わり、その後、破竹の進撃を開始した。と。


テンマ家の六代目?


第六テンマ王?


マスカート卿が笑う。

「そう、彼は本物だ。」


「ノブナガの率いるテンマ軍は『誰でも魔法を使える』という当時のチート軍団だったと歴史にはある。

ただ、その魔法の内容がどうにも残されていない」


修行を何年も続けてきた魔法使いも剣士も皆、テンマ軍の一般的な兵士の魔法が打ち破ったというチート魔法。


「鉄砲だ」とマスカート卿。


たかが四百年前の話、この世界は当時のエルフ等は代替わりも無く生きている世界だ。


当時の皇帝の配下だった将達がそのまま生きていて、なぜこれほど重要な技術が断絶するか?と


マスカート卿はこの世界に来て早々に疑問に思い、美少女冒険者時代には既に初代皇帝を調べていた。


そして初代皇帝がエルフである事、帝国の片隅にあるエルフの貴族の領の隠れ里にソレらしいエルフがまだ生きていることを突き止める。

美少女の看板をフル活用してラノベ一冊くらいの冒険をしたマスカート卿はそのエルフの隠れ里を訪ねた。


そして本物だと確信した。



戦国時代の信長は本能寺で燃え尽きた。

幾度となく裏切られ、殺し、殺される時代を生き、最後まで裏切られ、疲れた信長は、望みを聞かれ


「長生きがしたいのう」


と呟いたのだった。


新たな名を、と問われて「偶然同じ名になる事くらいあるじゃろう」と半ば強引にノブナガを名乗り、第六天魔王と名乗ったつもりがテンマ家の六代目となったりしつつ、火縄銃の再現にほぼ成功し、その力で大陸統一の目前まで行った。


そこまで行った時、ソレが起こった。

彼曰く「またここでも本能寺が燃えた」


神か神の使途か、存在が現れ、文字通り「鉄砲を取り上げた」

軍団に行渡らせた鉄砲が()()()


ただ消えただけだ。記憶等が変わった訳でもない。

だが、だからこそ()()()()()()()という事実が重くなった。


本能寺と違い、誰も死ななかった。だが「取り上げられた」


鉄砲こそがこの快進撃の原動力と知っている者は皆、

誰も、もはや統一戦争を続ける気力も無くなった。


また作れば作れるだろう、行渡らせられるだろうが、次にまた取り上げられる時、本当にただ取り上げられるだけなのか?を試す者は居なかった。


彼はその後、付き従っていたエルフ族の配下の諸将の一人の混血の若者に帝位を譲り、この地に隠遁した。


そのため、帝室に「長生き」の遺伝はされていないが、エルフの血が混じっているので自前で長生きな皇帝は居る。

そして初代の血統ではない事実は最上級の秘匿事項になり、初代の死亡理由は不明のまま歴史に埋もれた。


死亡していないのだから、それはそう。


エルフの血は世代交代のたびに薄くなり、昨今の皇帝は人間とほぼ変わらない寿命になっている。


と、いうか信長本人はエルフになろうと思っておらず、「長生き」の為にエルフに転生させられた、というのが正解に近いと思われる。


◇◇


この世界、蒸気機関も無い。産業革命も起きていない。


その辺を転生者が持ち込まないハズが無いのに、ないのは、ソレを持ち込んだ転生者が()()()()()()()可能性が高い。と、真面目な顔をしてマスカート卿が言う。


痕跡はあった。作ろうとした実験の歴史も見たそうだ。


その転生者がどうなったか、が歴史として辿れない。その意味を考えると

信長が「長生き」を望んでいなかったら信長も「取り上げられた」可能性が高い、と。


やり過ぎは出来ない、というのがマスカート卿の考えである。


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