15話 冒険者万歳
冒険者になって色々な依頼を受ける。
なんて冒険者らしい活動だろう。
やはり郊外の魔物討伐は面白い。
素材収集もあるが、人型のゴブリン等の討伐依頼もある。
人型の魔物は大半が社交性があり、現代日本の出身だとわりと気後れする。
人型と言うより、どうしても人の姿と思ってしまう。
下手に言語の理解があるおかげで奴等の警告の叫びとか、断末魔を普通に理解してしまうから余計に。
しかも奴達は人を慰み者として犯すこともあるし
そもそも弱い者いじめの延長の様な拷問まがいな殺し方をしてくる。
毒も使って来る。
それなりの知性が備わっているから。
正直、魔獣と呼ばれる獣の方が「マシ」なのである。
困ったことに、奴達は雑食で、人の食糧を好んで食べる。
果樹園を荒らして果実を根こそぎ奪っていったり、食い荒らしたりする。
この時「食べきれない」モノを一口だけ齧って回ったり、かなり嫌がらせの様な事すらやってくる。
人の領域と魔物の領域、その境界付近で積極的に人の領域に踏み込んでくるのもコイツ達。
交易路の宿場の周辺の集落、開拓中の田園の集落等、人数の少ない集落を積極的に襲って来る事すらある。
なのでそれなりに戦える冒険者は積極的に狩るのを推奨されている。
主に領主の資金提供でギルドの依頼として出され、常に途切れる事はない依頼だ。
逆に初心者冒険者は簡単に返り討ちにあうので非推奨になっている任務だ。
ゴブリン等の知能ある人型魔物が雑魚ではない世界なのだ。
なのだが
ヒレンとクチナワにかかれば正直、どうでもいい通りがかりのついでで討伐するのに丁度イイ相手だったりする。
奴等の拠点は主に洞窟だったり、討伐しにくい場所だが、そもそも魔力に詳しいクチナワにとって、隠れる意識の無い彼等はわかりやすい恰好の獲物なのである。
個人的には討伐の証明に手を切り取って持ってこいとかそういうの、戦国時代かと突っ込みたくなる。
地味に嵩張るのもイケナイ。
だが討伐は被害を受ける当事者の、宿場の住民、開拓地の農家達に感謝される。
自然と素材収集の任務の繰り返しの中で彼等と仲良くなっていく、
感謝されるのは冒険者冥利に尽きると言う奴だ。
という訳で今もヒレンが感謝のサービスだと出された料理を平らげている。
大食いコンテストでもあれば優勝確実な量を普通にいつもの変化の乏しい顔でもぐもぐと食べている。
「お父様もどうぞ」
と分けてくれるが、先程分けてくれた分でお腹一杯だ。
亭主、食べっぷりをニコニコ黙って見てると出されたモノは皿まで食べるぞ、ヒレンは。
クチナワにいわせると
「魔法でさっさと発見して駆除する事に何の手間も無いんじゃがな?タダで宿も食事も出してくれて、クロスロードに戻れば報奨金までもらえるのじゃ。なんと美味しい話じゃろうかのう」である。
クロスロードに戻れば携帯する食料、水袋等の消耗品を購入するのだがそういう店は冒険者ギルドの周辺に集まっている。
武器防具は鍛冶屋や革細工の職人が集まっているエリアがあるのでその近くの方が品揃えも品質も良い。
ギルドの周囲は自分に合った武器がわからない初心者やとりあえず装備してるぞと威嚇する目的で、購入する人向けだ。
どちらかと言うと新人向け相談窓口だな。
防具は命を落とさない為に常に良いモノを着るのだが、ヒレンは壊れる前提だ。
というかメイド服のまま戦うのでメイド服の着替えというか、結局のところ鎧の値段とは段違いに安上がりである。
上級貴族のメイド制服なら当然高級な素材だが
ヒレンのは庶民のちょっとイイ服程度だ。
酒場等で人気の制服という奴だ。あとは色町か。
ワーク〇ンかド〇キかな?
そういう制服専門店でよく購入する冒険者。
クチナワも同じコスプレ衣装専門店で購入している。
なんだこのコスプレ冒険者。
というかこの辺、転生者が店の創始者に居たりしないかと思うラインナップだ。
一応名誉の為に言っておくが、実はこういう服のこだわりを持つ者、居ない訳ではない。
冒険者は命を簡単に落とす。
危険を仕事にするのが冒険者、といった世界だから。
なので防具を常に最高の状態にしておくのが冒険者の常識だが、ソレに合わない者も意外と多い。
都市の中での活動をメインにしているなら防具を着てる方が珍しい。
他に街道の馬車ではなく飛行船の護衛だったり、婦女子の護衛や、伝令や単純なお使い系だと軽装で帯剣だけ、の様な事の方が多い。
そして一部の貴族冒険者などは任務そのものを選んで命の危険を避けて受けるのが普通だ。
彼等は我々と同じ様なコスプレ衣装の店で購入する冒険者だ。
この世界の冒険者、なんだかんだで単純に貧乏人のセーフティネットな意味と、実力さえあれば一攫千金のチャンスも多い、需要の幅のある人気職だ。
おかげで兵士の応募が少ないらしい。
一攫千金やのし上がる機会の多いが危険と隣り合わせの冒険者が存在するので、食うに困る貧乏人が仕事を選ぶ時に兵士以外の選択肢があるのだ。
冒険者が拠点にしている宿もギルドの周囲に集まっており、その近辺で自然と屋台村の様相を呈するメインストリート周辺もまた冒険者なら外せないスポットだ。
朝昼夜の飯時には食べ歩きも多い。
そうでなくても冒険者は都市の外に出る事が多く野宿が定番なので都市の中ではこういう露店の食べ歩きで都市を満喫するのだ。
露店側も慣れたモノで、わりとサービスの押し売りをしてくる。
歩いてるだけでヒレンなどは両手に櫛肉を持ってる事も多い。
櫛ごと食べるからゴミも無くて衛生的。普通は食べないが。
そんな生活をしばらく繰り返しているとランクが上がると受付で告知された。
冒険者はランクがあり、下から石・青銅・鉄・鋼・銀・金・ミスリルと段階が決められている。
この材質でタグが作られ、城門等ではそのタグが身分証明だ。
特殊なのはミスリルで今は勇者の専用ランクだ。過去、歴史上では伝説になってるレベルで数名は居るらしい。
目指せるランクはゴールドが最高だ。
ただしコレは国レベルの災厄等での功績があって初めて昇級を協議されるレベルで、今現在数名しか存在しない。
シルバーが現実的だ。
そして、ダンジョンはアイアンで入れる。
ストーンは冒険者としての常識、読み書き、そういう見習いランクなので座学でさっさと上がるし、私の様な紹介状付きだとここは飛ばされる。
ブロンズはダンジョンに挑む程の戦闘力が無い冒険者が停滞している。都市型冒険者と呼ばれる下水清掃や工事の補助、商人の手伝い等で戦闘を最初から避ける冒険者がこのランクで活動する。
私の感覚ではアイアンからが冒険者という感覚だが
意外とブロンズの人達をイメージする都市部の住人は多い。
身近な人はイメージしやすいのだ。
何にせよ、コレでダンジョンに入れる。
それと前後してネム陛下から呼び出しが来た。
おそらくはネム陛下が何らかの後押しをしてランクが上がったのではないかと思うタイミングで。




