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12話 クチナワ

魔力を操作出来る様になってからは早かった。


いくらでも出せる魔力を延々とダンジョンのボスに注ぎ込む。


半日はかかったが、ソレだけだ。半日程で巨大な白蛇は、一人の人間に変化した。


白い鱗の名残だろう、綺麗な白い長髪。

やはり大蛇の名残か、真っ赤な瞳、瞳の上の眉が丸い、アレだ、麿眉。

口を開いた時に見える八重歯。人と同じ様な肉厚の舌なのに先がわかれた舌。


歳の頃はやはり30か少し下か。


勇者、あからさまに「ババアか」とか呟かないであげて。

多分、悪いのは私の中の人の感覚。


「待て待て、なんで妾、裸なのじゃ?」


ああ、確かに服着てないね。そういえばヒレンもだったけど、肉体が変化するだけなので服とかはついて来ないんだな。


「いや、お主、普通、妙齢の女性の裸を見たらもう少しこう、あるじゃろ?ドギマギとか、こう。ほれ、反応というモノが」

反応に期待してたのか。


そういえば、ヒレンの時もだが、確かに女性の裸、しかも二人とも他で見ない様なレベルの美女を前にして冷静だ。

あれ?なんか反応が我ながら薄いな。私はノンケだ。


違和感に気付いたが、コレは今は理由まではわからない。


ともかく、ヒレンが持っていた着替えを着せる。

胸が明らかにサイズ合ってなくて収まっていないが

あいた。


丈は余ってるし。

ヒレンが振り上げた拳をちょっと考えて下した。

許された。


◇◇


「妾は魔法にはそれなりの知見を持つつもりじゃ。主様に貢献してみせようぞ」


ダンジョンの中の魔力ではなく、私の魔力を馴染ませているのでもう、ダンジョンから出ても問題は無いハズだが、とりあえず出てみよう、とダンジョンを逆に進む。


道中、このダンジョンの他の魔物達の事を聞いてみる。


「このダンジョンはこの世界へ来た者を捉える網の様なもので、網の目の隙間から出入り出来る小物達は出入り出来るのぅ、もっとも妾の身内という訳でもない」


そして魔界の知識そのものは残っているらしいが、ソレを活かす前提知識がこの世界に通用するかどうかはまた別の話、との事。


魔界の記憶も古い時代の記憶だからはたして今も同じかはわからぬ、とも


言うなれば私の様な転生者に近いかもしれない。中途半端な知識があってもソレの前提を知らねば活かせない状態か。

電子レンジを知ってても具体的な構造、さらには電気が必要とか、前提が多いモノは()()()()()者に説明されても()()()()者には理解出来ない。


話をしている間にダンジョンの入口まで来た。


外の光を浴びて、

「コレが世界なのじゃな。明るいのう」

とウルウルした瞳で感動しているが、ソコで気付く。


名前。この大蛇の名前は何というのだ?


「主様、他人に興味がないというか、普通は名前とか気になるモノじゃろうに」

言われてみると、名前とか気にしてなかったかもしれない。


「ソレだけの強大な魔力があふれていたのじゃからして、魔力に呑まれて感受性や感情の起伏が弱くなっておるやもしれぬのう。魔力を自由に操作できるようになるのを急ぐべきやもしれませぬのう」


操作出来る様になったと言っても、未だ滾々と湧き出ているらしい


魔力酔いとでもいう症状で他人への興味というか感情の変化までしにくくなっているのなら、確かに魔力のダダ洩れを止めれば、その症状は改善されるハズ。

そうか、感情の起伏が起きにくくなって裸にも動じなくなってたのか。

いやソレはアリなのか?いやしかし、勿体ないような気もする。

私は修行僧ではないのだから。


ともかく、この元大蛇の美女の名前だ。

蛇で有名なのは知恵の実を食べさせた蛇だが、アイツは赤蛇とかただの無名の蛇だからなあ。

ウロボロスとかオロチ、その辺も何かイメージ違うしなあ

うわばみ・・・も酒のイメージが大きすぎる。


別名と言えばクチナワもあったな、古事記とかの時代の言葉。


うん、クチナワがイイか、麿眉だし。


たった今からクチナワだ。

「クチナワ、妾はクチナワ。良き名じゃ」


自らも声に出し再確認し、優雅に一礼するクチナワ。


それを見た勇者が小さく呟く。

「二人もズルい」


その時はそもそも何がズルいのかとか気にもしなかったが。

この時既に、歯車がズレ始めていたのだった。


ともかく、ダンジョンボスも眷属に出来るし、元々の知性のある魔物は会話で説得できる事もわかった。

最初のダンジョン攻略、また眷属に関する実験は成功した、と言える。


そして魔法の知識に詳しいクチナワの眷属化。知識の共有もあって自然と魔力への理解が進んだ上に、魔力を自分で感じる事が出来たのも大きい。ダダ洩れ対策も出来たと言える。


ついに、やっと、この世界で満足に活動が出来る様になった。


私の異世界生活はここからだ。


◇◇


クロスロードに凱旋した。

内容から見ても帰ったというより凱旋でイイと思う。


一目見てもわかる魔力操作の成果、漏れが常識的な範囲に収まっている魔力と、あらたに増えたクチナワ。


副産物だが、親衛隊のうち、クリスは念願だった魔力操作の入門くらいは出来る様になっている。

タリアは、まあアレだ。誰でもは魔法使いになれる訳ではない、というやつだな。


クチナワのやり方はある程度の魔力を元々持っている者にしか効果は無いだろうが、

ある程度持っている者には確かに効果的だ、とはマスカート卿の談。


ある程度の魔力があると密度もそれなりなので、確かに感覚を掴めなくとも反発くらいは感じ取れるだろう、と


そして新たな問題も出て来た。


無限に滾々と湧きだす魔力である。

蓋をしても内部で圧力が増して、そのうち爆発するのではないか?という問題が


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