11話 ダンジョンの主
魔力そのものを好んで食べていたヒレンと違い、積極的に取り込もうとしない相手に、どうやってその魔力を塗り替えるか。
そもそも自分の魔力を感じる事から出来てないのだが。
ネム陛下から言わせると「巨大な滝の瀑布の横で一滴の水を感じる」様なモノらしく、ソレは無理とわかる。
魔力を操作出来れば色々出来そうな気はするんだが、現状まだまったくその手掛かりすら無い。
とにかく力を入れてイキんでみたり、大声を上げてみたり、漫画で見たポーズとってみたり。
色々やってると、蛇の方から興味を持ったのか近寄って来た。謎の踊り踊ってる様なものだし。
いや、近寄ってみると結構デカイな。
天井に近い高い位置からこちらを見下ろしているが、手が届かないと高をくくってるんだろうなあ。
勇者が例の剣戟を放った。
ほら、届くと思ってなかったから落ちて来た。
衝撃と振動だけで足場の石柱がいくつか崩れ・・・奥の方でさらに大きな石柱が崩れた。
ダンジョン自体が崩壊したりしないだろうな。
鎌首を擡げようとしたとこをヒレンが横からひっぱたく。返す刀で叩きつけた。ついでとばかりに素手で殴りつける。
あ、コレ止めないとトドメまで行きそう。
結局、巨大な蛇の魔物は物理的に叩きのめされて、今や息も絶え絶えである。
駄目元で蛇の頭に向けて手をかざして見る。
「お、魔力が手から出て蛇の頭に向いてるぞ」
勇者が希望を持たせる。
やっと見えた光明、出来てるかわからないままとりあえず魔力を出すイメージを浮かべてみる。
「あ、ダメだ、やっぱり表面流れてるだけだな」
現実を突きつけてくる。
ヒレンが横から蛇の口を物理的にこじ開け、こっちに出せばいいのでは?と言って来る。
今度はどうだ、とやはり見えないままイメージを浮かべて口に向けて手を向ける。
結果的にどうやらコレは当たりだった。
私の魔力が蛇の魔力の「内側」に入っていっているらしい。
コレでどうだ。とばかりに・・・見えない、感じられないので何をやってるか自分でもわからないが「それっぽい」ポーズをとっておく。
正直暇なので、思い付きで鑑定を試してみる。
こっちはまあ魔界出身の蛇だなあ程度か。魔法を使う事すら可能だとは分かった、結局物理でフルボッコだが。
魔法を使うのならそれなりの知能はあるのかもしれない。
古代魔法語で話しかけてみる。
「私の言ってる事がわかるか?勝負はついた、降参してくれるとこちらも助かるのだが、どうだ?」
言語の理解とやらは、相手の言語をこちらが自動的に使える訳ではなく、相手が言語を発してくれないと理解出来ない、というのはわかっている。
そもそも言語を使わない種族には「通じない」のだ。
「降参する、ええ、降参ですじゃ。妾はただ安穏と生きていただけなのに・・」
ですよねー。完全に侵略者です、ごめんなさい。
◇◇
その後、色々と話を聞きだした。
魔界からの魔力は単純に濃度の差で染み出す様にして供給されている事。
魔界の魔力とこの世界の魔力は質がまったく別物なので違うモノと考える方が良い事
ダンジョンの奥程魔力が濃く、浅い場所程薄くなるので「息苦しい」のでボスは奥に潜む事。
自身の持つ魔力を自分でコントロールする方法は?と一応聞いてみる。
「一度他の者の魔力を身をもって受けると自分の魔力との反発で違いが感じられるようになるのでは?」
聞いてみるモノだな。
「妾の魔力、綺麗じゃろう?肌を晒すのは恥ずかしゅうての、こうして魔力を纏っておるのじゃ」
つまり、魔力を見る事が出来る人が言う「見通せない程の濃度の魔力」を意図的に服を着る様に作っている、と。
見えないけど。私から見るとすっぽんぽん。
そしてとぐろを巻く様に私の周囲をぐるりと回りこむ。
あ、なんか直接当たって無いのに「何かある」と感じるぞコレ。
少し押し返そうとする「自分の方も何かある」と抵抗を感じるぞコレじゃないか?
もうビックリだし新しい発見だし、テンション上がる。
色々試してみると面白い様に変化を体で感じられる。
コレが魔力を操作するという事か。
わかってしまうと、もう感覚的にわかる。
こんなに簡単な事だったのか。と思うが、結局はきっかけが無ければまったく分からない。
この世界の住人も生来の魔力が高くても大半の人がソレにすら気づけないままだというのも納得だ。
古代魔法言語がわからない親衛隊の二人に通訳してやる。
「にゃ、次はアタシアタシ!」とタリアが手を上げれば
「是非、次は私にもお願いします。どうしても魔法を使いたいので・・」とクリスもそっと手を上げる。
ヒレンは・・・興味無さそうにしているが、
めっちゃ気になってすぐにでも輪に入りたいのが「伝わってくる」
眷属だもんな。うん。
そういえば、ダンジョンから出られないというけど、眷属化した場合、まったく別種の魔法生物になるという事で
その封印が無効化されないのだろうか。
思い付きだが、聞いてみる。
「妾の眷属はこのダンジョンから出る事は可能だったからのぅ、存外、行けるかもしれぬのぅ」
何でも、時々眷属をダンジョンから外に出して、世の中を見ていたらしい。
「暇つぶしじゃ、ただ、眷属が死ぬ事があるとソレまで共有してしもうて寿命が縮むのが問題でのう」
モノは試しという方向で納得してもらい、自分の意思で操作できるようになった魔力をどんどん注ぎ込む。
見るのはどうにもわからないが、感じる事は出来る様になった。
完全に漏らさないという訳にはいかないが少なくとも「ダダ洩れ」は収まった。
蓋の隙間から噴き出す、といった感覚で漏れては居るが。
正直、こんな簡単な事でイイのか、とは思う。
自転車に初めて乗った日を思い出す。
乗れてしまえば簡単な事、という感じ。まだ意識が必要だが。歩く、走る、の様に「ソレを」意識せずとも出来る様になりそうな気がする。




