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瑞華国白家奇譚〜理系令嬢は恋より発明がしたいのに、王弟殿下に執着されています〜  作者: ぶるどっく
第二章 知恵の芽吹きと絡繰の塔

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第二十話



「……意味が分からぬ」


 皇帝の執務室。

 白家より戻って来た一報が届くか、届かない内に慌ただしく現れた彰玄。


「それは、俺も同じだ」


 厳重に人払いをした上で、白家の教育だけでなく泰山の言葉の数々を皇帝である姉の黎陽へと報告した彰玄。


「建国時より記録を続ける一族、白家。

 その白家と王家が交わした約束、だと?

 ……父上から、そのような話は聞いておらぬ」


「……姉上も、か……。

 だが、白家当主は偽りを言っている風では無かった。」


「……偽りを言うならば、もっと価値が分かりやすいものを言うだろう。

 それに、わざわざ一族の価値を証明するように、お前に土産を渡すはずが無い。」


 黎陽は執務机の上に広げたままの、白家が献上するという目録一覧へ視線を落とす。


「まるで……余を、いや王家を試しているかのような……。

 余程、明葵嬢の毒殺未遂諸々に腹を据えかねているということか?

 ……それとも、明葵嬢の身を守るための策の一つか……」


 ……頭が痛い。

 豚叔父の一件もあるというのに、不確定要素な白家の存在が此処に来て増してくるなど……予想もしていなかった。


「……元々、白家は霊山の管理をしている一族では無かった。

 それが、何時の頃からか霊山の管理を任されるようになった。」


 白家から戻って来る道中に考えていた可能性を彰玄は口にする。


 嘗て、権力争いに敗れて霊山の管理人という名誉職を押し付けられ、都落ちした斜陽の一族。

 奇人変人揃いの一族だと揶揄される彼ら、白家。


「彰玄……其処が、起点だと言いたいのか?」


「……勘だ。

 だが、建国時より国内のあらゆる事象に対する記録を任された一族が、権力に手を伸ばす。」


 あの白一族の在り方を見た今ならば、権力に手を伸ばすなど違和感しかない。


「今尚、途切れることなく記録を綴る一族がくだらぬ野心を持つ可能性は低い。」


「ならば、何故……権力争いや都落ちしたなどと言われるようになったのか?」


 ――其処に決定的な王家と白家の認識の違いがある。


「霊山の管理を任されるようになった前後の白家と王家の関係の変化。」


「記録を綴る一族が、霊山の管理にまで手を伸ばさなければならない"何か"が霊山に起こった。」


 まるで互いに意見を述べ合い、頭の中を整理するように彰玄と黎陽は言葉を交わし合う。


「もしくは、白家を閑職に追いやったと見せかける必要が有った……いや、違うな。

 白家は霊山に対する認識が、王家とはずれている……その方が、しっくりと来る。」


「そして……それを期に王家と白家の関係は途切れ、今に至った。」


「「………………」」


 室内を無言が包み込む。


「……目下の目標は、白家が霊山の管理を任された前後の史料を読み返す必要がある。」


「白家当主が口にした疫病云々の可能性とやらについて、白 明葵に尋ねる必要もあるな。」


 やることは山積み。

 不確定要素も山の如し。


「成さねばならぬことは多い、が……誠に疫病が流行ると言うならば、物資を得たこと。

 そして、先手を打てるやもしれぬ状況は悲観する必要はない。」


 黎陽の艷やかな赤い唇が弧を描く。


「彰玄。

 お前は明葵嬢から疫病の真偽について情報を得よ。

 白家との約束云々に関しては、此方で信のおける者に秘密裏に調べさせる。

 ……お前が目眩ましになるように、暫くは派手に動き回って貰うぞ」


「引き受けよう」


 悪人めいた笑みを浮かべ合う黎陽と彰玄。


「……あの、彰玄様」


 そんな二人におずおずと声をかけた者がいた。


「何だ、凛」


 彰玄と黎陽の視線が凛を捉える。


「……恐れながら」


 何とも複雑そうな微妙な表情を浮かべた凛が、ため息混じりに呟く。


「……白家に徐算官長を忘れて来ています」


「………………あ」


 凛の一言に、珍しく虚を突かれたような表情を彰玄は浮かべるのだった。


 


 彰玄達が皇帝の執務室で、景文の存在を思い出した頃……


「魚師よぉぉぉぉ……!!

 どうか!どうかっっ!!

 儂にも叡智をお授け下されぇぇぇぇっっ!!!」


「ちょっ?!

 いい加減離しなよっっ!!

 僕は子供たちの授業以外にも仕事が有るんだからっ!」


「嫌じゃ、嫌じゃぁぁぁぁぁ!!

 叡智を授けてくれるまで離さないもん!

 もう離さないって決めたもんぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


 白家の金庫番としての仕事に移動しようとする玲の足にへばり付いて離れない景文の姿が白家にあった。


「ちょっ?!ご当主様ぁぁぁぁぁ!!」


「父上……あの妖怪じみた御仁はどうなさいますか?」


 あまりのしつこさに涙混じりの玲の助けを求める叫びが響き、菖雲が困ったように泰山に声をかける。


「……取り敢えず……簡易的な算術書を渡してお帰り願うか?

 それでも駄目ならば……夕餉を一人分増やすしか有るまい」


 その間に、王弟殿下へと妖怪の回収ではなく、景文の回収を依頼する早馬を立てようと泰山は遠い目をするのだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


明葵の発明と瑞華国の行く末、そして彰玄との関係が「続きも読みたい!」「面白い!」と思っていただけましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆評価で応援していただけると嬉しいです!


皆さまの応援を励みに、明葵たちの物語を最後まで描いていきます!!

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